コンフリクト #39
今回は、組織の中で必然的に起こるコンフリクトの問題について、考えてみたいと思います。
1.部分最適と全体最適
組織は2人以上の複数の人が分業することで始まります。分業はまず複雑な一連の仕事を部分部分に分けますが、このように部分に分けると仕事を単純化することができます。仕事を単純化すると専門化することができ、それが分業の一つのメリットとなります。
人は分業して専門化すると、その分業された区分同士で「対立」を始めます。「部分最適」という現象がそれをもたらします。
「部分最適」とは、企業組織の中で、それぞれの要素や部署の機能の最適化を図ることをいいます。「部分最適」は「セクショナリズム」という表現でネガティブに捉えられる傾向にあります。
第2次世界大戦中の大日本帝国海軍では、「全力をもって陸軍と戦え。余力をもって敵と戦え」が合言葉だったと伝えられています。
集団への帰属意識の高まりは、人々の欲求を満たします。「対立」することで連帯感が生まれます。実は「対立」は人の満足の源泉となっています。つまり、集団の「対立」は人々の欲求に繋がっています。
心理学ではこれを「異化(他との違いを認識)」および「同化(異化により帰属意識が高まる)」といいます。
ただし、「自分の部門だけが良ければよい」と「部分最適」の心理に陥ると組織は機能しなくなります。この場合、組織間の調整という役割が必要となります。この点に組織は多大なエネルギーを使っています。
「全体最適」とは、組織全体の最適を図ることを意味します。このプロセスでは、企業の各部署や全ての従業員が歩調をあわせて同じ方向に最適化されていく必要があります。
「全体最適化」を図れば、業務の流れが社内組織全体として管理されるため、全体的なコスト削減や機会喪失などの問題を減らすことが可能となります。
2.コンフリクトとは
「部分最適」をもたらす「対立」を「コンフリクト(対立、軋轢)」といいます。
「コンフリクト(対立、軋轢)」は、複数の個人または組織間で発生する対立的・敵対的な関係のことを指します。
相対する意見、態度、要求などが存在し、互いに譲らないことで緊張状態が生じます。コンフリクトは、表面化したものだけでなく、潜在的なものもあります。
コンフリクトは、企業のみならず、あらゆる組織、人間関係において必ず発生するものであり、不回避的なものといえます。
コンフリクトは通常、そのマイナス面に目が向きがちですが、マネジメント次第では、アイディアの創造や本質的な問題の発見などにつながり、組織の成果を高めるドライバーとなりうるものです。
3.構造的なコンフリクト
コンフリクトが発生する要因には、「不完全なコミュニケーション」「利害関係の対立や競合」「未熟な組織関係」などがあります。
コンフリクトには、その組織がおかれた環境が曖昧で部門の目標がまとまりを欠いているときに発生する「水平的コンフリクト」と、組織の階層が有効に機能していないときに発生する「垂直的コンフリクト」があります。
4.コンフリクトの機能
既に述べた通りすべてのコンフリクトが組織にとってマイナスとなるわけではありません。
コンフリクトは管理の仕方によっては、組織業績にとってプラスに働かせることもできます。コンフリクトを適切に管理できれば、組織の効率や生産性を高めることも可能になります。
多少のコンフリクトは、組織に適度な緊張感を生じさせ、組織メンバーの行動を活性化させることができます。
コンフリクトの存在は、より良いアイディアにつながることもあります。コンフリクトの存在する組織には多様性があるため、組織は創造的になり組織変革に繋げることも可能になります。
コンフリクトを表面化させず抑えつけることは、現状維持へ繋がりますので、コンフリクトの表面化やそれに伴う攻撃行動は、組織に対して変化への対応を促し、組織変革を促進することにも繋がります。
5.個人間コンフリクトと集団間コンフリクト
個人間コンフリクトは、資源の希少性や価値観の違い、また個人的な特性などから発生します。
また、ホイッスルブロワー(内部告発者、警告を発する人)は組織にとって単なる不満分子と受け取られがちですが、組織変革に貢献する場合もあります。
集団間コンフリクトは、組織であるがゆえに不回避的に発生します。例えば、営業と製造、ラインとスタッフ、フォーマル組織とインフォーマル組織など、組織における利害関係の対立は常に発生しています。
また、官僚制化することでコンフリクトを抑制することができますが、官僚制化が過度に進行すると融通が利かなくなり、かえって対立が激しくなってしまうこともあります。
6.コンフリクト・マネジメント
ハーバード大学ビジネススクールのジェームズ・ウェアとルイス・バーンズは、個人間のコンフリクトに対処するには、まず状況をよく理解し、状況そのものを変えるか、当事者の態度や対応を変える必要があるとしています。
その具体的方法としては、交渉、制御、(建設的)対峙を挙げています。
また、コンフリクトを理解するための視点として、現象面から本質的問題の把握までを以下の4点にまとめています。
集団間コンフリクトの解消のためには、以下のような方法が効果的だと言われています。
①コンフリクト解消のための専門機関を設定する。
②上位者が裁定する。
③あらゆる場面でのコミュニケーションを増大させ、第三者的コンサルタントなど仲介者を介在させたり、人事交流を図り、互いの理解を促進する。
④ホイッスルブロワーを排除せず、将来的な問題解決のためにも、その役割や波及効果を評価する。
また、シュミットは、自らの利益にこだわる自己主張性と、他者の利害に関心を払う協力性の二次元でコンフリクト対応モデルを示しました。
7.まとめ
コンフリクトは、特に組織においては、不回避的に発生するものです。それが「部分最適」をもたらすと、組織が停滞してしまいます。
一方で、コンフリクトをうまくマネジメントすると、多様性や異なる意見のぶつかり合いから、イノベーションが生まれる可能性があります。
コンフリクトをしっかりマネジメントして、新たな価値を創造し、「全体最適」を目指していきたいものです。
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