poetry reading 【RE/START】
作品について
この作品は、創作ユニットTAGU-【たぐ・う】の結成二周年として企画した作品です。
総勢14名という沢山の方々にご協力いただいて実現しました。
2021年9月中旬に台本が完パケし、そこから収録と編集を行い、11月1日からYouTubeチャンネルへ投稿を開始。
投稿がスタートしてからも編集作業を行っていたという自転車操業ギリギリっぷりでした。(編集終わったら投稿して、また次の編集をして投稿して…の連続💦)
緊急事態宣言が開けてどうか…という時期にこれだけの人数の収録を行えたことはとても有難く、ご協力いただいた皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
当時は私や読み手の実体験を元に「その人の日常のモノローグ」を切り抜いた、そんな身近な作品になれたらと思いながら取り組みました。
自分の体験と照らし合わせてみて、想像してみて、体感して、声に出して。
そのひとつひとつの言葉が、その人自身の声に乗ってあなたに伝わりますように。
【2023年5月27日 都城で振り返って】
はじめに【原文まま】
創作ユニットTAGU-【たぐ・う】
二周年企画 ポエトリーリーディング「リ/スタート」
生きている日々を過ごすことは、大なり小なり「はじまり(スタート)」と「おわり(エンド)」の繰り返しだと思います。
そして、「終わりが来たら、始まる」。
そんな日常を切り抜いて、リレー形式でつなぐ朗読を企画しました。
「スタート」と「リスタート」でワンセット。
繋がっていないように見えて、実は繋がっているペアの詩です。
ポエトリーリーディングとは「詩人が自作の詩を読み上げること」。
今回は『読み手が自分の体験を語る』ことに注目したいと思い、この言葉を選びました。
自由に想いを紡いでください。
たくさん想像して、たくさん遊んで、照らし合わせて、溶け込んで。
体験した言葉をください。
※各パートへの「➤ 一言」も台本から引用しています。
01. ありがとう|スタート【START】
ありがとう 大切な言葉
ありがとう 大好きな言葉
人の言葉に惑わされて 自分の気持ちにウソをついて
くじけて、すさんで、うらやんで、あらがって
私がどこかへ行っちゃう時も
「ありがとう」それだけで
ここがあたたかくなる
涙が溢れる
「ありがとう」
大好きな人たちへ
これからもよろしくね。
02. KAKKOII !|スタート【START】
(ピアノの音)いつの間にか始まって終わっていたピアノ。
(ドラムの音)中学の新入生歓迎会で見た吹奏楽の演奏。
「かっこいい!」
そのリズムが、私の鼓動と重なった瞬間。
サイコーに気持ちよくて。
でも、練習が地味。
(ぎこちないビートルズの「let it be」のコードが聞こえる)
憧れの先輩から教わったビートルズ。
でも、その〝有名〟と言われている曲を聞いたことがなくて、
よく分からなかった。
初めて触れた〝コード〟
指が攣りそうになりながら抑えた〝コード〟
好きな〝コード〟…の繋がり
(ぎこちない音階が段々とスムーズに流れていく。でもその曲は「let it be」ではなく、誰も聞いたことのないメロディ)
頭の中に流れる音も、身体を通って感じる音も、口ずさんだ音から生まれるメロディも。
どれも、カッコイイ!
カッコイイことしたい。
(なんでって? だって、カッコイイんだよ?!)
全身でリズムを刻んで、どんな指の動きをしているか分からないのに、色んな音が鳴る。
「チョーキング」
「アルペジオ」
これを弾きこなせたら、めちゃくちゃかっこよくない?!
練習が練習と思えなくなって、気付いたら沢山の時間を共に過ごした相棒。
「あっ! この曲カッコイイ〜!!」
今日もまた、私の指はこの弦を弾いて〝カッコイイサウンド〟を奏でる。
え? 変な音がする?
私がカッコイイって思っているから、これでいいんです!
03. Easy -イジ-|リスタート【RESTART】
「は? 本気で言ってんの?」
高校の時、大好きな野球に裏切られた。
そう思ってしまった、まだ子供だったあの頃。
チームメイトとうまくいかなくなって、取っ組み合いの喧嘩になって。
今思えば、何であんなことになったのか覚えていない。
後輩達が必死になって止めに入った。
同級生が野次を飛ばしながら、困った顔をしていた。
先生が物凄い剣幕でやってきた。
それでおしまい。
「誰も本気にしちゃいねーよ」
「はっ、クソつまんねぇ」
「辞めてやるよ」 ※二人
同時に出た言葉。
その言葉でハッとした。
頭の中はフリーズした。
「言っちまった」
ただ、その一言だった。
あれから何十年もの時が流れて、目の前で汗を流している野球少年達は。
一心にボールを追いかけている。
その姿は。
眩しくて、愛おしい。
その日も俺は、子供達を見送って、一人グラウンドで待っている。
「辞めてやるよ」
「辞めたくなんかなかったよ」 ※二人
つまらない意地は、ゴミ箱に消えた。
04. 流れていけ|リスタート【RESTART】
息ができない。
全身が一気に緊張するのが分かる。
「私はこれからどうしたらいいの」
初めてこぼす弱音に、ただ、寄り添うしかできなかった。
雨。
湿気を纏った雨。
草の雨、木の雨、屋根の雨、流れる雨、流れる雨、雨、雨、雨。
「親子だね。」
「ほんとだ。」
一人になった夜。
「僕はこれから、どうしたらいいの」
と、呟いた。
物音がして振り返ったら、君がいて。
そんなことを言ったんだ。
交差する
何と?
今と
昔と?
今と
君が首を振りながら、夜の闇に溶けた。
「大切な人を亡くすと、心のどこかに穴が空いたように、ぽっかり、とする。」
そんな話をよく聞くけれど。
僕の〝穴〟は、むしろその穴を塞ぐ為に色んなものを吸収した。
膨らんでいく。
ふくらんでいく。
埋まっていく。
うまっていく。
その穴は塞がるの?
僕は君にいつ会えるの?
きっと、その穴が膨らんだ時に。
05. 会話|スタート【START】
『おはよう。』
「おはようございます。」
『今日は良い天気かな?』
「そうですね。」
『眩しいかな?』
「そうですね。」
『今日は目玉焼きが食べたいな。レタス入れてよ、一緒くたに焼いたやつ。』
「いつも、朝は目玉焼きですよ。レタスも、いつも入ってるじゃありませんか。」
『そうかな?』
「そうですよ。」
『今日はみんなが来る日かい?』
「そうですよ。もう一週間経ちましたもの。」
『早いなぁ、一週間か。』
「…。」
『早いなぁ。』
『あ、また走ってるのかい?』
「…。」
『家の中では走るなって言ってるのに。元気なのはいいことだけどな。』
「そうですね。」
『どれ、肩車でもしてやろうか。でも、あいつも大きくなったからなぁ、いつまでできるかなぁ。』
「そうですね。」
『綺麗だなぁ。』
「…。」
『ありがとな、こんな俺の所に来てくれて。』
「そんなこと言うなんて、あなたらしいですね。」
『そうかな?ああ…綺麗だなぁ…。とても綺麗だ。』
「…。」
『ありがとう。俺は幸せ者だな。頑張るからな。頑張る…。』
「お疲れ様でしたね。
待っててなんて言いません。今度こそ幸せになってくださいね。」
「『ありがとう』」
06. 責任重大!|リスタート【RESTART】
お腹痛い、行きたくない。
あー、なんで〝仕事〟ってあるんだろ。
好きなことだけして生きていきたい。
好きなこと?
いや。分かんないけどさ。
お腹痛い!
あー、ヤダヤダ!
……。
うん、そうだ。
寝ちゃお!!
あだだだだだだだだだだ!
引っ張らないで! 引っ張らないで〜!!
オヒゲ!
私の大事なオヒゲ!
…もぅっ!
お母さん、ちゃんと見ててよね?!
この子、まだ小さいんだから!
(猫の鳴き声)
(赤ちゃんの声)
嬉しそうに着いてきてもムダよ!
遊んでなんかあげないんだから!
あーーーーーっ!
しっぽ掴まないでっっっ!
ちょっと! お母さん!!
もぅっ!
ほら! 寝るわよ?!
そう、お昼寝するのよ!
ここに寝転んで!
はい、目を閉じて!
ほらっ!!
(頬を舐めている)
ふぁ〜あっ
(頭をかく、鈴がチリン)
今日もいい仕事したわねっ☆
07.こがれ|スタート【START】
「あなた面白い顔してるわね」
面白い顔ってナンデスカー。
「あなたを見てると笑っちゃうの」
はぁ? シツレイデスネー。
にこにこと笑う顔とは裏腹に、心の中ではそんなことを呟いてる。
そんな時は、〝後頭部に心の顔があったら、すごいアホな顔してるんだろうな〟…って、よく思う。
道を歩けば声をかけられ、
待ち合わせをしていれば変な人にからまれ、
良くも悪くも「親しみやすい顔」。
それが私。
何をやっても日の目を見れなくて、美術部の課題もいつも予選止まり。
私の描く構図が好き。色が好き。そう言ってくれる人はいる。
でも…。
「よくあるよね、こーゆーの。」
そこ止まり。
「それがあなたの魅力なのよ」って、いつか学校の先生が言ってた。
良くも悪くも『平々凡々』。
それが私。
あ、ほら。あの子。いつもニコニコしてて楽しそう。
あっちで待ち合わせをしている子も、手を繋いで歩いている親子も。
みんな、生き生きしてて羨ましい。
引っ越しで遠くへ行ってしまった友達も、
いつか別れてしまった仲間たちも、
巣立っていった後輩も、育ててくれた先輩も。
文通してたあの人も。
みんな、みんな。
私とは違う。全然違う。
「いいなー! いいなー!!」って、ねだってぐずっている幼い子供。
それが私。
私は何がしたいんだろう。
気持ちのままに、赴くままに。
生きられたらいいのに。
08. 本|スタート【START】
ある本と出会った。
「素晴らしきかな、我が人生」。
それが、この本のタイトル。
ある男が一人の女性と出会い、恋に落ちる。
うん、よくある。
育ちの違いで、親に付き合いを反対される。
これもよくある。
様々な障害を乗り越えて、結ばれる。
子供ができて、育てて、巣立って。
また二人の生活になって、手を繋いで、年老いていく。
昔よくあったよね。
ただ、淡々と過ぎていく景色の移ろいを。
ただ、淡々と書き留めただけの小説。
実はこれ、友人の本なんです。
小説というより、エッセイに近いのかな。
友人と言っても、かなり歳が離れていて。
出会いはディケアサービスで、母親が通っていたんです。もう亡くなりましたけど。
そこで知り合った友人が書いた、この世にひとつしかない物語。
それがこの本です。
始まりはこんな言葉から。
〝我が最愛の妻へ捧げる〟
よくあるでしょ?
分かります。僕も同じことを思ったから。
でもなんだか、この一言が「いいなー」て思ったんです。
それで、気付いたらここだけ、繰り返し繰り返し何度も口ずさんでいました。
最初は呟きで。
段々と大きくなって。
変化をつけて。
声色を変えて。
口に出して読みたくなるんです。
大好きな人と出会った時。
大好きな物と出会った時。
ついつい、口に出しちゃうんです。
それが僕という、役者の生き方。
ついつい、生きたくなるんです。
その物語の人生を。
登場人物の生き様を。
いつか、この本を舞台でやりたい。
いや、映画かな?
はたまたドラマか?!
ラジオドラマか?!
フォトエッセイ、なんてのもいいですね。
この本は僕にとって大切な台本で、
この脚本家は僕にとって大切なことを教えてくれた恩人です。
ありがとう。
09. Re:make|リスタート【RESTART】
子どもの頃に憧れたディズニープリンセス。
私のドレスはどんなドレスかしら?
私の王子様はどんな方かしら?
ピンク色のフワッと広がったドレスの裾を掴んで、長い階段を降りて…。
「いつの日か王子様が」。
そんな日を夢見てた。
今でもたまに口ずさんでいるメロディ。
実は現在(いま)の方が、子どもの頃より歌っているかもしれない。
ピンク色のドレスはズボンにTシャツ、時たまエプロン。
長い階段は二階から一階へ降りる時の家の階段。木製。老後のことを考えて手すりあり。段差も考えて設計されたバリアフリー。
「いつの日か王子様が」と夢みてた人は、ちょっと変わり者のサラリーマン。
王子?
ああ、ああ、そんなんじゃない。ただの頭の硬いだけの男。
子どもの頃の夢は叶わなかったけれど。
ミモレ丈のラベンダーワンピース。大胆に腰の辺りからスリットを入れてみる。
その下には真っ白なインナー。太めのベルトがアクセント。
淡い桜色のお着物。帯はワインレッドのシックなお色。帯に、水引きを使った簪を挿してみる。
あの子には昔流行ったキュロットパンツ…え? 今はキャロットなんて言わない?
ジェネレーションギャップ。
あなたのシャツ、着ないならくださいな。
え? …違う違う。
リメイクするのよ、私とこの子に似合うように。
え…あなたも欲しいの?
仕方ないなぁ。
久しぶりに話したね。
たまにはこんな時間もいいもんでしょ?
仕事ばかりじゃなくて、たまには私のことも見てくれていいのよ?
子どもの頃の夢は叶わなかったけれど。
未来(あした)への夢はいっぱい叶ったの。
タキシードとドレスではないけれど、
立派なお城じゃないけれど、
私の〝毎日〟がここにあったのよ。
10. あのひとのことば|リスタート【RESTART】
ー嫌い、大嫌い
ー好き、大好き
いつも、その狭間にいて
ふわふわしてる
「あなたは自分の考え、ないの?」
元カノに言われた言葉
考え?
あるけど
なんで?
「あなたってさぁ(笑)」
いやいやいやいや。「(笑)」【カッコワラ】ってなんだよ
言葉が文字になって見える
見え見えのウソ
はいはい、さよならね
分かってるよ、慣れてるから
いい人止まりでもいいんだよ
居心地が良ければ
触れられれば
- 友達以上恋人未満 -
誰が決めたんだ
その時は一生懸命でも、途端に覚めていくこの想いに
手がつけられずにいる
11. 綻ぶ|スタート【START】
「好きだなぁ」
思わずこぼれた言葉
絶対に伝えないと、決めていた言葉
色とりどりのドロップが、手のひらからこぼれて
赤、青、黄色、白、ピンク、水色、緑、紫…
残ったのは透明のドロップ
色とりどりのドロップはどれも美味しそうで
どれも綺麗で
だけど
どこか窮屈そうで
気付けば 色とりどりのドロップに 蓋をされた透明のドロップ
そこにはどんな想いが染まっていたんだろう
これから、どんな味になるんだろう
私の言葉
私だけの言葉
クレジット
毎日は「はじまり(スタート)」と「おわり(エンド)」の繰り返し
そして「終わりがきたら、また始まる」
日常のヒトコマを切り抜いて
その瞬間を生きる【言葉たち-想い-】と共に…
朗読/野﨑香奈江(創作ユニットTAGU-【たぐ・う】)、「ゆうやけ」作曲・マリンバ演奏/望月かおり(清水音楽工房)
朗読・ギター演奏/うぱ(むしーず)
朗読/TanaShow(創作ユニットTAGU-【たぐ・う】、演劇部BonDebut)、「焦燥」「青い風鈴(改)」作曲・ピアノ演奏/つーあん
朗読/村岡宏樹(演劇部BonDebut)、「泳ぐ星」作曲・ピアノ演奏/つーあん
朗読/末原正彦・齊藤久實子 (演劇部BonDebut)、「Loved ones」作曲・ピアノ演奏/つーあん
朗読/もっちい(むしーず)
朗読/せつこ(むしーず)、「Brilliant View」作曲・ピアノ演奏/つーあん
朗読/貝保賢司 (演劇部BonDebut)、「半即興曲第一番-覚醒-」作曲・ピアノ演奏/つーあん
朗読/田邊奈穂子 (演劇部BonDebut)、「朝月」「Moment-piano.ver-」作曲・ピアノ演奏/つーあん
朗読/いっしー(創作ユニットTAGU-【たぐ・う】)
朗読/佐藤千裕、「桜絨毯」作曲・ピアノ演奏/つーあん
📚創作ユニットTAGU-【たぐ・う】YouTubehttps://youtube.com/@TAGU_FU
📚創作ユニットTAGU-【たぐ・う】Twitterhttps://twitter.com/TAGU_FU
📚創作ユニットTAGU-【たぐ・う】公式LINE
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