一字一句に宿る書き手の熱。 noteで出会った秀逸な記事タイトルを勝手にピックしてみた。
書いてよかった。
先月(8/10)に書いた記事が、おかげさまで、なんと200スキに到達したんです。多くの方々からマガジンにピックされ、オススメもしていただいて、感謝感激です。2万字マラソン、諦めずに走り続けた甲斐がありました。
このnote、過去一番と言っていいくらい時間と情熱を注いだnoteだったんです。noteのお知り合いの方々だけなく、これまで接点のなかった方々からも、「役に立った」「参考になった」などうれしい言葉をいただきました。
記事タイトルに悩まれている方々がnoteには大勢いることを実感しました。これまで以上にタイムラインや過去記事や公式マガジンに並ぶ記事タイトルを意識的に眺めるようになったんですが、「おっ、この記事タイトルは・・・・・・っ! 」という出会いも増えました。
私たちが記事タイトルをみて「気になる」「読んでみたいかも」という気持ちになるのって、無意識であることが多いんですよね。
でも、ちゃんとその記事に引き寄せられる理由があるはずなんです。使われている言葉や言い回し、漂ってくる並々ならぬ熱といった人をひきつける何かが。雰囲気だけじゃない、確かな技術のようなものが。
そこで今回、tagoがnote徘徊中に「おっ」と思った秀逸な記事タイトルをいくつか紹介したいと思います。同時に、それぞれの記事タイトルについてのコメントも書かせていただきました。
先にあやまっておきます。勝手に偉そうに分析してすみません。
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『「書きたい」「書かなきゃ」でも「自分の中には書く価値のあることがない」と心が折れそうなときには。』(服部タカユキさん)
「心当たりあるわ」「これ自分のことや」という気持ちにさせて一気に読み手の心をパクッとひとのみしてくる記事タイトルです。カギ括弧の部分では、多くの悩める書き手の心の動き(流れ)やモヤモヤがはっきり言語化されています。
この記事タイトルからは、読み手に「救い」を差し出す意志を感じます。
「書きたい」「書かなきゃ」と思っている。でも「自分の中には書く価値のあることがない」という壁が立ちふさがっている。この壁、相当高いんですよ。自分もそうですし、多くの人がぶち当たるんじゃないでしょうか。
「すごい」と思える記事を書いている人は、その記事ネタとなるレアで面白い経験もしているケースが多いんです。だから、そういう経験がない人は、書くことがないと思っちゃうんですよね。
そんなふうに、“悩み多き書きたい人”が立ち止まって右往左往している時、この記事は、心を和らげてくれたり、一歩進むきっかけを与えてくれます。
本文冒頭で「そんなに気負わなくてもいいんだよ別に」といきなり結論から言い切っています。大事なことや結論を先に言うのはネットの文章の正攻法ですが、本当に読み手に寄り添ってくれていると思いました。
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『僕とコンテストと愛と酒とドラッグとセックスとバイクと暴力と呪われし姫君』(逆佐亭 裕らくさん)
ワイルドなパワーワード群。一度みたら忘れない字面のインパクト。確信犯です。というのも、ご本人が冒頭で、「愛と酒とドラッグとセックスとバイクと暴力と呪われし姫君については一切語る気はない」と白状しています。
映画が数本撮れそうなくらいの素材を記事タイトルに詰め込んで、本文の冒頭でいきなり種明かしされて「ズコーッ」となる。その時点で読み手はもう心を奪われています。力の抜け具合と戦略性。完璧です。
適当に強い言葉を連発しているわけではありません。記事の本筋である「コンテスト」をさりげなく入れつつ、ドラクエ8のタイトル風にして既視感を組み込んで攻めてきます。
企業コラボのコンテストや私設コンテストが盛んに行われるnoteでは、「コンテスト」だけでも十分に強いワードなんですよね。選ばれる人より選ばれない人の方が圧倒的に多いからこそ、多くの人が関心のあるテーマです。本文では、コンテストに対する自分のスタンスを明確にしながら鋭く切り込んでいます。
よく見てみてください。ドラッグ、セックス、バイク、暴力。これらの言葉を使うのであれば、選ぶ主語は「僕」ではなく「俺」になるのが自然だと思いませんか。なぜ「僕」なのでしょう。これは、おそらく本人のただの照れだと思います。そう、「俺」を使う勇気まではなかったに違いありません。
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『好きな人が、恋人になりました』(いちとせしをりさん)
いちとせしをりさんのnoteの記事タイトルは、そのほとんど全てが秀逸です。(もちろん本文も)選ぶ言葉や言い回しに色気があり、読み手の心にはっきりときれいな足跡を残します。
「片思いが、両思いになりました」「思いを寄せていた人と付き合い始めました」ではありません。綴られた言葉は「好きな人が、恋人になりました」です。「恋人」っていう響き、うれしいんですよ。恋人。この言葉で二人の関係性を表現したいというピュアな思いが伝わってきます。同時に、本文ではその思いがどのように語られているのか気になります。
よく観察してみると、「人」という言葉をリズミカルに繰り返しています。「好きな人」から「恋人」へ。これによって相手との関係の変化が強調されているんですね。
本文では、しをりさんの心の足取りが丁寧に描かれています。日々自分と向き合って全力で生きているからこそ、選ぶ言葉にもこだわりが生まれます。だから文章が月並みにはならないんですね。
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『彼女と出逢って3ヶ月で婚約した僕は、24年間「年齢=彼女いない歴」だった』(かのうおりがみさん)
この記事タイトル、第一印象でものすごく気になったんです。面白い記事に違いないという匂いを感じました。で、実際に読んで、分析してみると、読み手をひきつける技術がいくつか組み込まれていることがわかりました。
まず、数字の対比です。「3ヶ月」と「24年」の落差が効いています。24年間女性と付き合ったことのない人が、付き合って3ヶ月で婚約?どういうことや。一度気になるともう離脱できなくなります。
次に、強い言葉への言い換えです。「24年間彼女がいなかった」とはせずに「24年間 年齢=彼女いない歴だった」とすることで書き手の体温のようなものが宿っています。同時に強いコンプレックスがあったことを暗示しているように思えます。自分の人生をネタにするくらいの覚悟がなければ、この表現を選ばないでしょう。
さらに言うと、言葉の順番にもこだわりを感じます。『24年間「年齢=彼女いない歴」だった僕は、彼女と出逢って3ヶ月で婚約した』とはせず、『彼女と出逢って3ヶ月で婚約した僕は、24年間「年齢=彼女いない歴」だった』としています。
この並べ方にすることで、(幸せそうに見えるかもしれないけれど)実は自分はもともとこういう境遇にいたんだという部分がフィーチャーされ、ありがちなスピード婚の話ではないことが伝わります。
ちょっと長めの本文も読み応えがあって、マーケティング的なことも学べて(笑)、めちゃんこ面白かったです。自分のことを超客観的に見れている人の文章だと思いました。で、この記事タイトルを考えたっていう奥様も素敵です。
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『母の二度目の結婚相手は、一度目に結婚した父でした』(るりさん)
「この記事タイトル、もうセンスしか感じない」
本文を読む前の自分はそんな印象を持っていました。でも読んだ後は、センスだけじゃなくて、書き手の両親に向けた底知れぬ温かな眼差しを感じました。
まずひっかかるのが、二度目の結婚相手が一度目とは別の人かのような文法にしている点。「よりを戻した」「復縁した」「再婚した」といった簡単な言葉を使わずに、独自の言葉で表現されています。これはどういうことなのか。記事タイトルだけしか読んでいない段階では、墓場の写真と相まって、とても意味深です。気になります。
もうこの時点で、この記事タイトルの凄さを感じているのですが、本文を最後まで読み終わった後にもう一度この記事タイトルを読むと、さらに度肝を抜かれるのです。
ぜひ一度本文を読んでみてほしいです。
お母さんの再婚相手である父を「一度目に結婚した父」と表現しています。形式上は再婚であっても、お母さんの再婚相手は、初めて結婚したあの時の若いお父さん(26歳?)だったんじゃないだろうか。過去を忘れたお父さんにとっては再婚ではなく初めての結婚だったんじゃないだろうか。そんな意味にもとれてしまうのです。(深読みしすぎかもしれません。間違っていましたらすみません)
記事タイトルから本文の最後まで読み手を没入させる文章力もすごい。本文を読んだ後、とても温かい気持ちに包まれました。
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『おじいちゃんの死が美しすぎた(前日編)/(当日編)』(飯尾 早紀さん)
たった14文字ですが、この記事タイトル、すごいです。
虚構の世界のヒーローや悪者、詩人や哲学者なら、「死」という言葉に「美しい」を結びつけそうですが、私たちが生きている現実世界では通常、「死が美しい」とはあまり言いません。
この記事タイトルがはじめて目の前に現れた時、まず、この言葉の組み合わせの違和感におそわれます。もう一度読むと、「おじいちゃん」という親しみを込めた呼称であることから、悲しいや寂しいという感情は間違いなくあるはずなのだと気づきます。
「美しい」と表現しているのはなぜだろう。しかも「美しすぎた」とまで強調しているのはなぜだろう。そんな疑問を持ちながら多くの読み手がこの記事の世界へと足を踏み入れていくのでしょう。
ネタバレになるので詳しいことは書きませんが、この記事タイトルは、小手先の技なんかではありません。飯尾さんが本当に感じたことを記事タイトルにしただけなのだと思います。でも、言葉の選び方にセンスがあるということに疑いの余地はありません。
このnoteは前日編・当日編の2パートに分かれています。両方とも最後までじっくり読ませていただきました。記事タイトルの通り、美しかったなあ。そういえば、誰かがこんなことを言っていた記憶があります。「私たちは「死」という確実な未来に向かって日々準備しているのだ」と。
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向けられた優しい眼差し。読み手に届けようという意志。選ぶ言葉へのこだわり。限られた文字数でありながらも記事タイトルからは書き手の様々なことを感じることができます。
記事タイトルに課せられたミッションは、タイムラインサーフィンしている人の心を掴んで本文までひきずり込むことです。そして、私は上記のnoteに実際に引きずり込まれました。
今回紹介させていただいたnoteは、シンプルに「記事タイトルをみただけで猛烈にクリックしたくなった記事」です。ここで紹介しているnote記事以外にも、「おおっ! 」となった記事タイトルはまだまだあります。今後また紹介させていただければと思います。
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