見出し画像

21.09.16_TAGOE活動記

矢萩多聞さんによるリモートワークショップ

京都在住、装丁家の矢萩多聞さんとは、数年前にインドの空港ではじめて出会った。到着ロビーの柵に寄りかかりながら、ソワソワしながら出てきた僕らを見つけた時の多聞さんのニヤリとした顔は、なぜか今でもはっきり憶えている。そこから一緒にタラブックスへ行き、記録映画を撮った。その後、完成した作品を携えて上映会ツアーも一緒にしたし、多聞さんが装丁を手掛けた500冊ほどの本を、多聞さんの家に1週間寝泊まりして撮影したこともあった。毎食の絶品手料理に、3キロほど太って帰ってきた。多聞さんと僕はタイプは違えど、ぴったり共通する一つの価値観がある。それは「フォーク」である。スプーンとフォーク、ではなくて、フォークロアの「Folk」だ。たとえば、路上に座り込み、古木の年輪のような顔つきでシケモクをふかすお婆さんなんかに遭遇すれば(普通はいないけど)「いやぁ、フォークだねぇ」「あの視線の送り方がさぁ」なんて言い合いながら、ずっーとお喋りをしている。

画像1

タラブックスで撮影中の多聞さんと僕(撮影:三輪舎、中岡さん)

そんな「フォーク」の同士である多聞さんと僕に共通するもう一つのことが、こどもたちと一緒に創作/制作を行っていること。多聞さんは京都で『ちとらや』という活動をしていて、こどもたちと一緒に山で絵を描いている。こちらも、大人が絵を教えるわけではなくて、ただ一緒に絵を描く時間を過ごす。そんなところも、TAGOEと共通しているところがある気がする。そうした経緯があって、僕がTAGOEをはじめた昨年から、事あるごとに遊びに行きたいなぁと言ってくれていた。前回の展覧会『ゆめを食べた本』なんかは、とても興味を持ってくれていた。そして、今回のテーマは『文字』ということで、是非参加してもらいたいと思い、お誘いしたら二つ返事で快諾してくれた。

画像2

既存のフォントだけではなく、手で描いた文字、書き文字を装丁表紙に数々描いてきた多聞さんが、どうやって手で文字を生み出すのか?それをライブ感あふれる形でみんなに見せてもらえば、きっと刺激されたりヒントを得て、自分なりにそれをアレンジするだろう、ということで、たっぷり1時間半を使い、前半はそもそも文字って何だろう?インドの文字の紹介などをスライドで説明してもらい、後半はマスキングテープで文字を作った。

画像3

画像4

当初、こどもたちを相手にリモートワークショップが上手くいくのか、少し不安があった。けれど、そもそも内容が面白ければ成立するということが分かったし、身体のある場所は離れていても、メンバーと多聞さんの空気感がちゃんと重なることにも驚きがあった。しかし、なんかみんなめきめきと大人になっていくなあ。ルアンなんかは、唇にグロスを塗りはじめているし。それはそれは喜ばしいことだけど、平たく言えば個性が、社会性に塗りつぶされないで欲しいなとも思う。第三期の成果としての展覧会まで、残すところ一ヶ月ほど。帰り際、ひなこさんが「また追い込みだよー」とサツキに言うと「やった!やった!」と。遊んで遊んで、楽しさを膨らましていこう。

ここから先は

0字
この『TAGOEサポーターマガジン』では、二週に一度活動をしているTAGOEの活動記録(テキスト:山根晋)が掲載される他、TAGOEメンバーによる投稿や連載も?予定しています。ぜひ、購読者となってTAGOEの活動を応援してください!

神奈川県逗子市の小学生&映像作家の山根晋によるアーティストコレクティブ TAGOE(たごえ)です。2020年の夏より活動をはじめ、毎期ごと…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?