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一期「まあたらしい影」展覧会アーカイブ②作品紹介

神奈川県逗子市の小学生&映像作家の山根晋によるアーティストコレクティブ TAGOE(たごえ)。2020年9月からはじまった第一期の成果としての展覧会「まあたらしい影」を〈2020年12月20日~12月26日〉の会期で行いました。第一期のテーマである"影"をさまざまに探求、遊んだ作品を展示しました。今回はこの展覧会「まあたらしい影」の作品紹介をします。

1)映像劇『とらわれた少女』

ビデオ、パフォーマンス、ミクストメディア | 17分40秒


本展覧会のメインとなる映像劇作品。オープニングレセプション時にはライブ上映、会期中はその記録を展示しています。第一期のテーマである「影」をさまざまに想像/考察/遊ぶ、その過程のなかで生まれてきた物語や造形、現象の断片を紡いだ、TAGOE第一期の成果とも言える作品です。本作は、TAGOE第一期メンバーが昨年まで通っていた保育園での記録映像(撮影:山根晋)が、物語の中に組みこまれており、ドキュメンタリーとしての要素と演技を伴ったフィクション、影絵のパフォーマンスと様々な映像形態が重なっています。また、それらは前方と後方の双方より投影されて、スクリーンにおいて像を結びます。いわば、スクリーンは此岸と彼岸を隔てる薄い境界膜とも言えます。こうした多層的な映像形態がある種の環境となり、そこにメンバーの日常や身体における初源的な感覚が充満することで、世界との新たな結節点、または現代社会が忘却しかけている神話的な時間の現出を試みました。

⚫︎あらすじ
町外れにある森で遊んでいた3人の少女は、森の奥に光るものを見ます。その光るものを探していると、いつの間にか蜘蛛の糸に絡まってしまいます。光っているように見えたのは、蜘蛛の糸だったのです。少女たちは蜘蛛の糸を取り払おうとしますが、難しく、同じような境遇のおばけと出会います。そうこうしているうちに、留守にしていた蜘蛛が帰ってきます。この蜘蛛は特殊な能力を持っていて、蜘蛛の糸を通じて、絡まった者に深く作用し、ずっと見ていたくなるような【 ho nya ra ra 】※作品2の解説を参照 を映し出すことができるのです。果たして、少女たちは無事に蜘蛛の糸から抜け出すことができるのでしょうか。

2)ho nya ra ra

 ワード、黒画用紙

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映像劇『とらわれた少女』のなかに時折出てくる、まるで穴埋め問題のように一部空欄になっている、おばけや少女たちのセリフ。文脈的に対応するのは、少女たち、つまりはTAGOE第一期メンバーが昨年まで通っていた保育園での記録映像ですが、それを「映像」だとか「動画」、もしくは「写真」といった形式的な言葉で言い表しても、確かに間違ってはいないですが、そこに映っているものではありません。そこで、メンバーそれぞれが、この空欄に入りうる言葉を直感的に捉えて書き、スクリーンの両サイドに配することで、映像と言葉の想像的な往来を促します。

3)影蜘蛛図

ビデオ | 10分32秒
画用紙、墨、鉛筆、色鉛筆、クーピーペンシル、
水彩絵具、雑誌、ポスカ、炭、パステル

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影に満ちた空間に、始まりと終わりを無限に行き来する時間を持った映像。そこに捉えられたイメージの蜘蛛は、生涯この映像に棲みつくのでしょうか。どこか、山水画を連想する色調と構図を持ったこの映像を、メンバーそれぞれが、くじ引きによって引き当てた別々の画材を用いて模写をしました。無作為に引き当てた道具に向き合い模写をするという行為は、一見非対称にも感じますが、それが人の人生を表しているようにも思えます。TAGOEのメンバーが、これから先、どのような人生を描いていくのか。想像しながらご覧ください。

4)写真の巣

写真、荷造りテープ、木枠、釘、ライト

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壁に展示してある写真は、TAGOEのメンバーが「写ルンです」を使って撮影した写真。そこに、投射された蜘蛛の糸の影が重なっています。この装置は、映像劇『とらわれた少女』で使用したもの。そもそも、蜘蛛の糸や蜘蛛を劇中に登場させるきっかけは、ある時メンバーの一人が、おもむろにスクリーンに荷造りテープを貼り、蜘蛛の糸に見立てたことからでした。そこから、“記憶”を一つの主たる制作テーマとする山根が、記憶が自然界で物質化したら、蜘蛛の糸や巣の形状になるのではないか?と、着想を広げました。荷造りテープさえも可能性に満ちたメディアであることを、可視化する作品です。

5)さくたの水晶

写真、ボックス大小、iPhone

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「これで、面白いことできるんじゃない?」TAGOEメンバーの朔太が、手のひらに握り締めたものを見せてくれたことがありました。光り輝くそれは、朔太いわく「水晶」とのこと。きっと、そうだと思います。誰しもが、海岸や公園、または道端などで“大切なもの”を拾った記憶があるのではないでしょうか。そしてまた、大人になるにつれて、自分にとって“大切なもの”を見つけることができなくなっていることにも気づかされます。TAGOEの活動において作品を作るということの本質は、自分にとって大切なものを見つけ、それとの関係性を結び、顕すことにあります。そのことを教えてくれるのが、さくたの「水晶」です。

6)ドキュメント

テキスト、写真、スケッチ、メモ

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リサーチや実験、制作の過程を記録したドキュメントです。想像的な瞬間、さらには神話的とも言える光景は、すぐに過ぎ去ってしまい二度と現れることがないため、なるべく記録に残しています。作品が生まれる種が、ここに詰まっています。(こちらの記事ですべての内容を公開しています)

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