2020 J2リーグ第37節 ツエーゲン金沢 VS 徳島ヴォルティス レビュー
何気にえらい事である。決してサッカーの中心地ではない四国に、めちゃくちゃポジショナルなクラブがある。予算がある無しとか、コロナ禍だからとか、そんなエクスキューズは必要ない。そんなものを覆せるのがサッカーだ。四国で出来る事が北陸で出来ない事は無い。
昨年入れ替え戦で引き分け、昇格出来なかった時から自動昇格しか考えていなかった。なかなか狙って出来るものでは無い。しかしそれを徳島はやってのけようとしている。いつの日か金沢がやらなければいけない事。そこに「○○だからダメだ」という弱さは一切ない。
スタメン
徳島の変更は2点。岸本→藤田と島屋→渡井。4バックでのCBコンビが福岡・内田コンビが主流になってきている。35歳の石井くん、まだまだ頑張って食い込んで欲しい。
一方、金沢の変更は5点。石井・作田・本塚・長谷川・杉浦恭平から白井・廣井・高安・藤村・山根と、失意の山形戦からガラリと変えたように見えるが前々節新潟戦から比較すると2点しか変わっていない。
前回が異例だったとも言えなくもないが、今節異例だったのは下川くんがいないところ。悪い事が起きていない事を祈りたい。
キックオフはご用心
金沢は前節までに実に21試合で先制点を献上していて、逆転出来た試合は3試合しかない。確率にして14%だ。まずはこのチームとしての体質を改善しなければいけないだろう。この試合でもその体質は顕著だった。
1分30秒ごろ、いきなり左サイドを渡井くんが3人の網を掻い潜り突破。さらに引っ張られて空いた穴となったところに浜下くんが飛び込む。白井くんが跳ね返し失点は免れたものの、2分25秒には垣田くんの積極的なチェイシングで白井くんがパスミス、直後の3分7秒には石尾くんが跳ね返そうとしたヘディングのボールが渡井くんへの絶好のパスとなり、ヒヤッとする場面が続いた。
そしてそのミスの連鎖は藤村くんへと伝播する。右サイド深くで田向くんから奪ったボールがサイドラインに流れ、それを阻止せんと左側にいた高安くんにパスを出そうとしたところ、田向くんにボールが当たり高安くんまでボールが届かない。
タッチライン際まで切れ込む田向くんの操るボールはラインを割っていたようにも見えた為に金沢ディフェンス陣の判断が一瞬鈍った。
白井くんが田向くんのシュートをブロックしたこぼれ球が西谷くんに渡っても金沢ディフェンス陣が受け身になって見えたのはそのせいと思われる。だが西谷くんの思い切りの良いシュートも評価しなければならないだろう。
ストライカー垣田、金沢時代とは違う姿
その後は一進一退の攻防、いや徳島はいつものようにボールを保持しながら相手の隙を狙っていた。そして岩尾くんが手薄になった金沢右サイドを狙う。
高安くんがたった一歩踏み出した隙に西谷くんが逆に走り高安くんの裏を獲る。フリーになった西谷くんは白井くんと金沢のCB2人の間を通すようなパスを出す。垣田くんが身体に当てたボールはゴールに吸い込まれる。
一見、泥臭いようなゴールに見えるが、垣田くんは西谷くんの動きに合わせて身体で廣井くんを抑え込みながら石尾くんと距離を取っている。
石尾くんからすれば西谷くんのクロスを阻む為に前に出ざるを得ないので廣井くんに垣田くんを任せている訳だが、気がつけば廣井くんは垣田くんに抑えられていた。金沢時代ではあまりお目に掛かれなかった点取り屋の姿がそこにあった。
その後すぐに給水タイム。まさか早くも2点リードされて給水を迎えようとは。
歓声を上げられないスタジアムだったが、沈黙が広がっていた。それは長い時間に感じられたが、闘う選手の事を思うと諦めてはいけないと思った。
渦潮コーナーキック
しかし、そんな事はお構いなしに徳島は3点目を奪う。給水タイム前後はこの試合で一番徳島がボールを保持していた時間帯で、金沢のボールを持っていた時間といえばマイボールにしてから奪われるまでのほんの少しの時間だった。それを証拠にこの時間帯は1本もシュートを打てていない。
あとでハイライトを見て頂きたいが、まさに鳴門海峡の渦潮というべき綺麗な円を描き、その中で岩尾くんというチームの象徴がゴールを決めるというこれ以上ないコーナーキックからの得点。今までで見た中で一番美しいコーナーキックの場面ではないかと思うほどだった。
0-3でも変わらぬ展開
しかし、この試合の山場はまだまだ訪れなかった。展開としてはそれほど変わっておらず徳島がボールを保持し、金沢がそれをインテンシティ高くプレスに行くところを躱しながらボールがハーフェーラインを超えるとサイドに展開し手数をかけて崩しにかかる。決して急がず。
コンパクトな陣形で守る徳島に対して中にボールを入れられなかった金沢にようやく欲しかった得点が生まれる。それは昨シーズンから待ち望んでいた形だった。
ようやく初アシスト
石尾くんがスタメンに名を連ねるようになってから一年が経過した。昨季は山本義道くんの活躍で後塵を拝していたが、パスセンスのかけらを発揮してはいた。そこまで目立たなかったのは義道くんが鋭い縦パスを入れたり、裏へのパスを通していたから。
しかし今季はディフェンスの要として、2度の試合中の流血をしながらもこれまでフル出場をしてきた。だが、攻撃に対する意識が高まってきたと思えたのはここ最近だった。
徳島の守備は4-4-2で陣形を組んでコンパクトネスを保っていた。永遠くんと頼盛くんが石尾くんに近づくと、後ろに少し隙間が出来る。それを見逃さなかった。
陸次樹くんのシュートはシュートと呼べないほどボールに対しての当たりが浅かったが、それで十分だった。
群馬戦以来のゴールで得点を13に伸ばした。ようやく反撃の狼煙があがった。石尾くんは金沢に来て初のアシストを記録した。来年覚醒する事を一つの楽しみにしておこう。
交代の意味
後半開始に廣井→作田の交代が。大宮戦のレビューでも触れたが廣井くんは決定的な仕事が出来ていない。それはこの試合もデータで表れている。
下の図はこの試合の守備ポイントと呼ばれるものである。Football labさんから拝借した。
ちなみに守備ポイントは以下のように算出される。
さらには垣田くんへの守備への付き方があだとなったか。スタメンCBが途中交代する事は金沢では珍しい。久々にサンデー作ちゃんが見られて少し嬉しくもあったが。
金沢の狙い
後半も金沢は、先ほどボールを通したボランチとSHの間を標的の一つとしてとらえていた。47分37秒には渡邊くんがカットインしたタイミングで永遠くんが内田くんの裏を獲りPAに進入、パスが通りシュート。福岡くんのブロックに会うが、1点を返した勢いが失われていない事を感じさせた。
56分にはプレスによるミスで小西くんからボールを奪い永遠→加藤へと繋ぎシュート。しかし上福元くんが素早い反応でセーブ。
そして金沢の2得点目もボランチとSHの間を通すパス。渡邉くんが浜下くんをおびき寄せ、陸次樹くんが内田くんの前を通りパスを受ける。
陸次樹くんは自ら作った隙間にホドルフォさんが入るのを見てパスを出す。ゴール前を固められる前にホドルフォさんが回転しながら右足のインサイドで上福元くんの逆を突くシュート。ボールはゴールラインを割った。
61分51秒に今度はしっかりと幅をとった渡邊くんがライン間に立つ永遠くんに向けてグラウンダーのアーリークロス。シュートは惜しかったがCKを得て、そのCKがゴールへとつながる。良い時の金沢は狙いがいくつか重なりゴールが生まれる。
CKは昨年まで得意としていた形。石尾くんが下り返したボールを大橋→作田へと繋ぎ、最後は頼盛くんが神の腕ともいうべき身体で押し込むゴール。決して綺麗なゴールでは無かったが気迫あふれるチーム一丸となってのゴールだった。
交代の仕方に出た差
しかし、追いついた事で安心したわけでも無いだろうがここから地力の差が出る。徳島は浜下・藤田から交代した岸本・鈴木の活躍で右サイドが活性化。後半の金沢に傾いた勢いを徐々に引き戻す。
徳島の4点目も、交代した岸本くんがピンポイントクロスを入れ、石尾くんの後ろのスペースに走り込んだ垣田くんが、作田くんにマークに付かれながらも必死に足を伸ばしシュート。1試合2得点の垣田くんの恩返し弾が、結果的に金沢の4連敗を決定づけた。
しかし惜しむらくは、試合終了間際に多くのチャンスを迎えたにも関わらず、交代カードを切ってしまっていたが故に決めきれなかった。スギウラーズの二人はゴール前でボールに触らせてはもらえなかった。
試合終了
ハイライト
感想
徳島というチームは油断はしないと思うけど、3-0になって少し落ち着こうという雰囲気があった。そこでわれわれも一か八かではないけれども怖さを捨てて距離感を近くしてボールを動かそうと、怖がらずにやれていたのは良かった。こういうプレーを今までもまったくできなかったかというとそうではないが、90分のうちやれている時間は非常に少なかった。でも今日はもしかしたら今季で一番長くやれたのかもしれない。(ヤナ将試合後コメント、Jリーグ公式HPより抜粋)
前回レビューでも言ったが、結果より今は内容。
4連敗となった反省も多くあるが、盛り返せた事で選手達が闘えるチームである事を確認出来たし、サポーターも明るく帰る事が出来た。ただ、交代の差は如何ともしがたい所。残り5試合、来年に繋がる内容で終える事ができるのか。一つも無駄に出来ない試合が続く。
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