2020 J2リーグ第15節 レノファ山口 VS ツエーゲン金沢 レビュー 「邂逅」
五連戦が終わったと思ったらまた五連戦。先の五連戦は勝ち点7。得点8失点12となった。攻撃に関しては爆発する時と不発の時の違いが著しい。まあ、安定して点が取れるようなら上位にいられるはずなので、そこは長い目で見ないといけない。最下位でしかも直接対決で無敗と相性の良い山口だが、油断せずアウェーの地でしっかり結果を残せたか。
スタメン
山口は前節から3人替え。川井→田中陸、浮田→森、小松→イウリ。重要なセンターの布陣は変えず、周りはターンオーバー。霜田監督の三年目。今年の戦い方を特別と捉える監督だが、今は我慢の時。早く結果が欲しいところ。元ツエ戦士の小松・パウロはベンチスタート。
金沢は6失点した前節から変更は1人。本塚→加藤。もしかしたらと思っていたら普通に4-4-2のシステムだった。
試合開始
開始から主導権を握っていたのは山口のほう。もちろん、金沢としては相手にボールを持たせておいて高い位置で刈り取りたいので、ボール支配率は山口が高いのは狙い通りなのだが、判断が遅かったりマークに付ききれていない状況が散見されていた。
タイトな日程で、体調面と精神面のコントロールが難しいとは思うが、連戦と連戦の間に久しぶりの中5日という間隔が入った事で、身体はある程度リフレッシュ出来たが、緊張感は持続出来なかったのではないか。山口の事を悪く言うわけではないが、上位のチームと当たっていたら得点されていたかもしれない。
山口の攻撃の振る舞い
上記のように思う理由のシーンは試合時間13分36秒あたりから
この時、池上くんがイウリさんを選択していたら決定的な場面になっていたと思います。しかしこの時は高井くんを選択。ゴールには至らず。
さらには19分50秒、右サイドライン際での山口の振る舞いです。
高井くんのシュートは金沢守護神・白井くんのナイスセーブで得点はなりませんでしたが、最初に高くんにプレッシャーをかけられていたら、ゴール前まで持ち込まれずに済む場面。
また、27分ごろ山口が金沢をファイナルサードに押し込んでから、中央でショートパスを回して左サイドにボールを預けるシーンは、山口のポゼッションへの意識の高さが感じられる。
山口の守備
基本的な守備陣形は4-1-4-1。金沢のCBにはイウリさんが一人で対応。ボランチへのパスコースを切りながら待ち構える。金沢のダブルボランチには池上・高が対応、その他は図の通りだがヘナンさんを真ん中に置いている理由は、ボールを奪った位置によって自由にカバーに行けるようになっている為。うちの大橋くんと同じ役割だ。
11分過ぎに金沢左サイドで攻守が目まぐるしく変わる中、ヘナンさんがボールの出口となり高井くんへの鋭い縦パスを出すシーン。オフサイドにはなったが、守備から攻撃へ転じる際のヘナンさんの役割がはっきり見えた場面だった。
加藤陸次樹のFWとしての構成要素
正直、前半35分までは金沢にあまりこれといったチャンスは無かったように思う。しかし裏への抜け出しと身体の使い方への意識は何度か見られた。そんな中での陸次樹くん1点目のゴールは、山口のCB眞鍋くんに身体を触らせない位置から抜け出すタイミング、後ろからのボールをしっかり目で追い足に当てる技術など、正にここで得点が欲しいと思った時に決められるFWとしての要素が凝縮。
以前Twitterで僕が陸次樹くんはクライファート型のFWだと言ったが(クライファート:元オランダ代表でバルセロナ所属時182試合90得点。気まぐれの天才と言われ、難しいシュートはあさり決めるが簡単なシュートは外す)、もう少し経験を積めば、簡単なシュートは簡単に決めてくれるかもしれない。
下川くんがただ縦パスを出すだけではなくて、ゴールに向かう内側の回転をかけて得点のお膳立てをした事も忘れてはいけない。やはりこの男の出来はもはやチームの勝敗に直結する。なるべくなら疲労を溜めずに次節以降のために後半途中で交代させて欲しかったが、ヤナ将の思惑はそうではなかった。
陸次樹くん2点目も、恭平くんが絶妙のスルーパスを送ってくれたが、決して簡単な角度ではないシュートを鮮やかに、それも豪快に決めてくれた。リーグ再開直後やルカオさんとのコンビの時とは全く違う顔を見せる陸次樹くん。これで磐田の小川航基くん、徳島の垣田くんと並ぶ得点ランキング3位タイとなった。(しかし2得点とも簡単に裏を取られすぎな眞鍋くん)
後半開始
後半から陸次樹→杉浦力斗となりスギウラーズの2トップとなる。「筋肉に張りというか違和感が感じられて(公式サイト試合後監督コメントより)」交代したという。あまり無理使いはさせられない。ルカオさんがいない今陸次樹くんまでいなくなったらゾッとする。
ちなみに山口も安在→川井に交代。
山口の振る舞いは、後半開始後もあまり変わる事はなかった。確かに前半の山口の攻撃を見れば悪くはなかった。失点しなければ自分たちのペースでゲームが動いていた。後半の始めは様子を見るといった感じの霜田監督。
そんな思惑とは裏腹に金沢は山口を突き放す。
ロングスロースルーパス
眼を見張ったのは金沢右SB渡邊泰基くんのロングスロースルーパス。ディフェンシブサードとミドルサードの境目辺りからのスローインがあっという間に力斗くんの前へ。山口CB眞鍋くんと競り合いコーナーキックを得た。こういうプレーがジワリとボディブローのように効いてくる。
そのコーナーキックくずれのセカンドボールを回収し、右サイドで窪田きゅんが高井くんと1対1。クロスが杉浦恭平くんにドンピシャでゴールとなる訳だが、ここには昨シーズンからの進化が隠れていた。
大樹・沼田から進化した窪田の相手を抜かないクロス
昨シーズン、加藤大樹くんや沼田くんから繰り出されたクロスは左45度から内側に巻いた回転のクロスで、相手DFとGKのちょうど間を狙うような軌道を通っていたが、得点者はその軌道に合わせる必要があった。
今回窪田きゅんが放ったクロスは一見、そのクロスとは逆の右から放ったバージョンに見えるが、角度があまりついていない横方向のクロスで、しかもボール速度は45度から放たれるより速い。さらには、1対1で相手を抜き切る必要が無く、一瞬のスピードでクロスを上げる。得点者は足を出すだけ。
頼盛くんのゴールを演出した山形戦のクロスも、抜き切らずに1対1の相手のタイミングをずらす事に成功していた窪田きゅん。今季2アシスト目。これが成熟されてくれば、10アシストくらいはいけるのではないだろうか。怪我するなよ、窪田きゅん。
200試合出場男
恭平くんはJ2通算200試合出場を自ら祝うゴール。必ず節目の試合ではやってくれる男である。
霜田監督の奥の手、元金沢戦士との邂逅
スコアは0-3となったが、時間はまだ30分以上ある。霜田監督は作戦を変えた。運動量を上げてさらにサイドの攻撃に拍車をかける。
上の図は全交代が終了した75分以降の図であるが、山口が小松・パウロ・浮田を入れた59分から4-2-4のような形になっていた。前半との違いは、ボランチの高・池上が最終ラインに降りてこない事。山口左サイドから攻撃するとしたら基本的にはヘナン・ヘニキの二人でサイドへボールを送る。補助的に逆サイドのSBがラインに加わる。
そうするとボランチの二人とSB・SH(WG)とFWの5人でのサイドでのボール回しが可能となる。しかも2、3人がタイミングを合わせて同じ方向に平行に走る、という攻撃。
図とは逆サイドだが、84分50秒くらいからの動きを見れば分かり易い。そうする事で誰かにパスが通った時に、すぐ近くに味方がいる為ワンタッチパスしやすいのだ。しかも、ボールを戻した場合は味方(山口)が敵(金沢)を引き連れて前に行っている為に、時間的余裕がある。パウロさんが左右どちらにも顔を出しクロスを上げるなど、浮田くんが1点を返してからは怒涛の攻撃を見せた山口。それはとても最下位とは思えない迫力のあるものだった。
交代選手は何故そこにいるのか
金沢は本塚くんが2トップの一角、杉井くんが左SH、ホドルフォが初めて定位置の左SBに入るなど、追加点を取りにいくというより、山口に追加点を与えないようにするのがやっと。相手を外に追い出すように指示が出ているのかもしれないが、金沢の「激しく襲い素早く仕留める」サッカーを選手交代終了時から体現できたかと言えばNOである。
試合終了
感想
山口は前半4本だったシュートが後半で13本と3倍以上に増加。やはり攻撃の回数は上位クラスなので、あとは決定力といった印象。リーグ後半戦でグッと伸びて来る可能性もある。
金沢は先行逃げ切りという、ある意味理想的なゲーム。ただ、持ち駒が適正では無い位置に入らなければいけないというジレンマ。なので追い付かれると、再度逆転とはなかなかいかないだろう。
とにかく5連戦の最初は勝った。次はホームの試合が3つ続く。この好条件を勝ち点にどれだけ結びつけられるか。どこまでチームを試合に直接関係無いところまでマネージメントできるか。成功すれば順位はイッキにあがる。
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