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2020 J2リーグ第2節 ツエーゲン金沢 VS 松本山雅FC レビュー

僕の仕事場はわりとスタジアムから近い。もうすでに試合が始まっているというのに試合を見る為に家路を急ぐ、スタジアムから離れてしまうというのは違和感を覚えた。待ちに待った試合に行けないという寂しさ。スケジュール通りに事が進むよう願って止まない。

山雅はツエーゲンにとって特別な相手だ。反対に山雅は金沢をカモにしている。対戦成績もクラブの実績も上。格上の相手であるとすれば結果的に勝ち点1を得たのは恩の字かも知れない。

しかし金沢の血は入れ替わっている。0-4、0-4、0-5と惨敗した試合全てでピッチにいたのは大橋・白井の2名。また相手もしかりだが、先入観ほど邪魔なモノは無い。敵勢力の特徴を把握して試合に臨めたのか。

スタメン

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金沢は左SH大石くんが怪我で離脱中。その位置にFW山根永遠くんが入る。後半で永遠→窪田きゅんが投入される事となる訳だが、永遠くんに最初から左SHをさせるという事は他に適任者がいないという判断なのか。

松本はセルジーニョさんが阪野くんと縦関係を作っている。と、いうより図を作る上で2トップ表記にしたが阪野・鈴木・杉本らが溜めや空間を作り出し、そこに効果的にセルジさんが入り込むという形。(セルジオさんでは無い)余談だが阪野くんは髭が無いほうが断然良い。

ボール支配率は50%、では何が違う?

開始5分でわかった金沢のプレー原則は3点

クリアは分かりやすく

ボールの出しどころに迷ったら無理せず戻す

最終的にはルカオさんを狙ったロングボールを

というわりと基本的なもの

一方の山雅はSBの裏やCBの前に素早く位置取りし、金沢DFを引き出して空いたスペースを作りセルジさんを送り込む。動いて動いてパスを回す。

同じ50%のボール支配率、同じ4-4-2に見えても、選手の特徴や動きで大きく違いが出る。ちなみに4-4-2はバランスは良いが、基本的に相手に対応する為のバランスの良さなのでポゼッションには不向き。よって持たざる者同士の戦いな訳だが、山雅のサッカーにはボールを与えている時間だけセルジさんが躍動する時間が多くなる。

シュートの一つ前のプレー

そのお互いの特徴は確実な差となってデータにも表れた。敵陣30メートル以内のプレー数は金沢149回に対し山雅219回(今回のデータは全てSPAIAより)

「いくらボールを持っていても、シュートまでいかないと面白くないでしょ。相手のゴール前でのプレーの数を増やしたい。(抜粋)」

試合後のヤナ将のコメント。実際のこの試合のシュート本数は金沢15本に対して山雅が17本。しかし枠に飛んだのは金沢2本に対して山雅は11本。お互いが勝ってもおかしくない試合だったと思っているかも知れないが、精度という点においては山雅が抜きんでている。もちろん、点が入らないと意味の無いデータなのだが。

シュートの精度は一つ前のプレーと直結する。パスやクロスの精度が低く無理矢理放ったシュートなら枠を外すし、精度の高いプレーの後のシュートは枠を捉える。今節のように白井くんが活躍する。ええ、もちろん嫌味ですよ。(苦笑)

しかし実はそのシュートの一つ前のプレーがチグハグなのだ。16分18秒のシーンでは下の図のように楕円のスペースへの反応が遅れてボールを戻す。

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その数秒後には金子くんがラインの裏に抜けPA内に入り込むが、また同じ状態に。

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上の写真2枚共に左側に3人がボールを待っている状態・・・。確かに上手くいったシーンもあった。20分51秒の加藤くんのヘディングまでのボールの繋ぎ方と囮になる動きは抜群。41分17秒の同じく加藤くんのヘディングも。(その前のパスは何とかしてほしかったが)しかし、決定力の高いFWがいるわけでは無い金沢はチャンスを幾つも作るしか無いのに、そのチャンスを逃している。この試合だけでも両手で数えられないほどのチャンスが失われた。

レイオフ

カウンターが得意だったはずの金沢からカウンターが消えた。それは「激しく襲い、素早く仕留める」という手法の違いだろうか。

なるべくなら相手ボールを高い位置で奪ってショートカウンターを発動させたいところだが、なかなか簡単にボールを奪えるものではない。そこでボールを持ったらポゼッション時(ボール保持時)やポジティブトランジション時(守→攻の切り替え時)の区別無く、一旦FWの選手にボールを預けてダイレクトにボールを戻し、3人目の選手が前線に走り込んでいくというレイオフの形が昨シーズン後半から増え、この試合でも何度か見られた。(ちなみにボールタッチをもう一つ増やし、4人目の選手が前線に走り込んでいくパターンもあり、これを僕はレイオフくずれと勝手に呼んでいる)

これはこれで良いと思っている。極端にオフサイドの網にかけようとしないJ2では最適な作戦で、これに関しても惜しいシーンが試合中に見られたし、前線に走り込む選手も実は囮で、逆サイドへクロスを上げるというのも大橋くんがよくやる効果的手法だ。

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カウンターは不発、決め事の整備を

ただ、ボールを保持しないサッカーにカウンターは付き物だ。しかし35分42秒からの藤村くんがドリブルで上がっていくシーンや、48分15秒の永遠くんのドリブルからのカウンターのシーン、52分40秒のカウンター、54分52秒のカウンターなど、ことごとくシュートまで持ち込む事無く失敗している。

なぜ、カウンターが失敗するのか。やはり先ほどと同じく、スペースを見つけて移動していない事が原因の一つとして挙げられる。例えば52分40秒のシーンでは永遠くんから加藤くんにボールが渡り、カウンターが発動される。

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大橋くんが4人に囲まれながらも金子くんへパスを出し2対2の状況を作った。しかし、右に流れたルカオさんにパスを出すが、山雅の森下くんのスライディングに阻まれる。

加藤くんはパスを出した後、とっさに大橋くんのカバーに入る。しかしそれがFWのやる仕事だろうか。

これをチーム内のプレー原則としているのであればカウンターは成立しなくなるし、プレー原則が無いのなら問題だ。前に行く動きをしろという以前に、スペースの認知力を高めなければいけない。

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FWなら上の図のような動きで数的優位を作り出す事が仕事であろう。このような決まり事の整備が必要な部分は多々見られた。

ボール非保持→ポジトラの切り替え

2つのシーンを例にDAZNで確認していただけたらありがたいのだが、35分41秒の金沢のカウンターのシーンはボール非保持→ポジティブトランジションの切り替えが遅く、藤村くんがドリブルで上がっていっても孤立しボールの出しどころが無い。

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一方、山雅は54分07秒のカウンター時のようにボール非保持→ポジトラの切り替えが早くシュートにまで至っている。

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だが、悪いところばかりでは無い。57分36秒からのカウンターのシーンはこの試合一番のチャンスだった。ルカオ→山根→ルカオでシュートがポストに阻まれた。加藤くんもファーでしっかりと囮になりルカオさんのシュートをアシストしている。

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相手の脅威になるドリブラー

他のカウンターのシーンと何が違うか。答えはボールを運べる選手がいるかいないか。永遠くんがドリブルで運ぶ事が出来ると、相手はそちらに気をとられFWも空いたスペースを見つけ進入しやすい。

83分29秒からの藤村くんが上がるシーンでも、シュートには至らなかったが同じような効果があった。

窪田が出来て、なぜ永遠が出来ない?

そのシーンで永遠くんから交代した窪田くんがサイドハーフの位置取りというよりはウイング的な位置取りで前に残っているのが確認できる。もちろん点が欲しい時間帯で窪田くんは投入されたので、永遠くんと役割は違うかも知れないが、永遠くんがいるうちに83分29秒からのようなシーンが何度かあれば得点が決められたのではないかと思ってしまう。

さらにはルカオさんの使い方にも問題があると思っている。岡山戦ではフィジカルモンスターぶりを如何なく発揮したルカオさんだったが、今回はチェイシングマシンとしての役割が多く、そのために体力の消耗が激しくカウンターが成功しないのでは?という印象を受けた。

確かにルカオさんのチェイシングは有効な場面も見られたが、ゴール前で仕事が出来ないルカオさんは相手にとって、そう怖くは無い。このままチェイシングマシンやフィジカルモンスターで終わっては数字は残せない。

まとめ 4つの問題

以上からわかった問題が

①決め事の整備、スペースの認知

②ボール非保持→ポジトラの切り替え

③ボールを前に運ぶ選手が必要

④ルカオさんの使い方

であると考える。新しい選手が入ったり、リーグ戦中断などの影響もあるとは思うが、それを差し引いてもこれらは昨年からの問題も内包しており、チームの組織的な問題だと思っている。

やられた感が強い今回の試合

守備に関しては結果オーライであるが2試合で1失点。また5失点して悪夢を見なかったと思えば上々の結果であろうか。2点くらい獲られてもおかしくはなかったがある程度の失点は許容範囲だろう。

義道くんがいなくなって多少マイナス要素はあるかもしれないが、3年間積み上げてきたものが守備にはある。しかし攻撃にはそれが無い。特にアタッキングサード、PA前からゴールまでの距離がとてつもなく遠い。

引き分けて勝ち点1。山雅にとっては「勝てなかった」試合。まだ2試合しか戦っていない中でセルジさんありきのサッカーは当然の事。これから色々なオプションを落とし込んでいくだろう。でなければ過密日程でこのサッカーはヤバい。途中交代の山雅の久保田くんにはその兆しを感じた。

しかし金沢にとっては「負けなかった」試合だった事は忘れてはいけない。2試合で1点も獲れてはいないのだ。

サムネのように下を向いてベンチへ戻るヤナ将の姿を何度も見てきた。今年は4年目。降格が無い事で、監督の目指すサッカーを思い切りやるチームもある。可もなく不可もない。そんなシーズンにはしてほしく無い。

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