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得失点分析をすべき理由 ~何も持たない僕へ~

ただのアマチュア

僕には信頼が無い。実績を作ろうと思っても難しい。それは戦術分析をしているアマチュアとして、仕方の無い事なのかもしれない。信頼が無いから見て貰えないしリツイートもされない。共感を得られる、信頼して広められるというバックボーンが僕には全く見当たらない。同じ事を悩みとして持っている人も少なからずいるのではないだろうか。

しかし、ライセンスを取るのも少し違う気がしている。僕はある意味自由だ。もちろん勉強する姿勢は大切だと思うが、サッカーを語る上でライセンスは必要だろうか?指導者を目指している訳でもない。料理をより深く学びたければ、調理師免許を取るのも悪くは無いが、お店を出すという目標が無く、料理の腕を上げたいのなら独学でも学べるし、料理教室に行く方法もある。

しかし戦術分析には教室も殆ど無い(セミナー等はあるにはある)し師匠がいるわけでも無い。では料理のように「美味しい」と思ってもらえるような分析をするにはどうしたらいいか。

悩んだ末単純な結論、しかし「美味しくない」

良いものを書き続けるしかない。自分の「舌」を信じて。その結論に至ったのは2019シーズンが終わってからだった。だからシーズンオフも自分への挑戦として書けるだけ記事を書いた。

ツエーゲン金沢のシーズンレビューや特別企画、エイバルのレビュー、水戸への興味、YOUTUBEチャンネルも作り一日一度はこのnoteに記事をUPするか動画を作る事を続けた。

しかし、何をしても何もない。自分の経験として蓄積していくだけ。それはそれでいいのだが、発信していく者としての欲求は満たされないまま。ただ忍耐強く続けていく覚悟だが。

何に手をつけてもツエーゲン金沢を強くしたいのだ。決して絵空事だとは思っていない。サポーターはクラブを作り上げる者の一人だし、僕もその端くれだ。

エイバルのレビューを書くのも、乾くんがいるから書いているのでは無く、金沢とサッカーが似ているから。

水戸に興味を持ったのも、金沢より予算の少ない中で、金沢より上位に立つクラブから何かを吸収できないかと考えたから。

昨シーズン最終戦や開幕戦にプレビューをスマホで見やすいように発信したのも、MEXICOさんのかわら版を見て、金沢のサッカーを見る人達に、スポーツ新聞では出来ない、深い取り上げ方をして、かつ読みやすくして興味を持ってもらいたから。

自分としても、多角的に物事を見ていかなければただのオタクになってしまう。

僕のタギリストとしての活動全てが、ツエーゲン金沢のサッカー・クラブ・環境を強くしたい、という思いに繋がっている。しかし、そんな僕の料理を食べる人は増えないし、そもそも食べているかすらわからない。食べても「美味しい」と思われないと広まらない。広まらなければ僕のツエーゲンのあらゆる面を強くしたいという思いは叶わない。

そんな思いの中、料理で言えばベースとなる良い食材や調味料を、手に入れるにはどうしたらいいかを考えていた。

元旦に運命の記事と出会う

MEXICOさんと同じ、大宮の分析をされているZdenkoさんの記事がUPされたのは元旦。最初に記事を見た時には「とても時間が掛かりそうで、めんどくさがり屋の僕には出来そうもない」というのが第一印象だった。

しかし僕の大好きな、現セレッソ大阪のロティーナ監督が、東京V監督時代にインタビューを受けた記事が、Zdenkoさんの記事の中で引用されていて、興味を引かれた。その記事には以前、僕も目を通していて覚えていた。

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201706050006-spnavi

国外のリーグを初めて見る時、そのリーグの特徴をつかむためには2つの方法がある。1つはとにかく多くの試合を見ること。もう1つはより効率的な方法で、ゴールのハイライト映像を見ることだ。ゴールを見ればそのリーグが持つ特徴、チームや選手の質を知ることができる。(記事抜粋)
失点は3つのタイプに分類できる。1つ目が「避けることのできない失点」で、ゴラッソ(スーパーゴール)が典型だ。2つ目は、例えばGKのパンチングミス、CBのクリアミスなど「ヒューマンエラーによる失点」で、シーズンにおいて一定数ある。3つ目が「避けることのできる失点」。ポジショニングミス、カバーリングの遅れなどに起因するもので、守備の戦術コンセプトを知っていれば、実行していれば避けられたゴールだ。実はJ2というリーグはこの失点が非常に多い。(記事抜粋)

言葉で表すと簡単な事なのかもしれないが、リスクマネジメントに取り組むロティーナ監督の言う失点の、評価基準となるものを作り上げたZdenkoさんのフォーマットの事がしばらく気になっていた。

私が普段レビューで、選手や監督のプレーや采配を評価をしている事には、少なからずそのプレーや采配に至るまでの原因がある訳で、最大限原因に近づける為の観察や情報収集に努めて、自分なりの考えを当てはめて記事にするわけだが、その原因を確認できる術は何一つない。さらにはしばらく時間が経つと、どの試合のどのプレーが重要だったか、確認するのに時間が掛かってしまう。

選手や監督に聞ける訳でもなければ、欧州クラブが導入している高価な分析ツールが使えるわけでもない。自分の舌を信じて、「美味しい」と思ったものを皆さんに見て頂いているだけなのだ。売れないラーメン屋と同じかも知れない。

凄いフォーマットの魅力 「美味しい」を自ら作る

そんな中、2月の初旬に開幕まで少し余裕が出来たので、思い切ってZdenkoさんにDMをしたところ、快くフォーマットを共有していただいた。

実は僕はExcelは大の苦手で、そのグーグル版となるスプレッドシートを使えるようになるまで、さらにはZdenkoさんのフォーマットを実際のハイライト映像を見ながら使えるようになるまで、44歳のおじさんにはかなりの高いハードルだったがそれを越えた甲斐があった、とても素晴らしいフォーマットである。

自画自賛はしない方であろうから、僕が変わりに賞賛したいと思う。一から作るのにはかなりの労力が必要だったと思われる。

このフォーマットの特徴はZdenkoさんの記事を見て貰えばわかるのだが、一応ここにも記載しておくと

①ポゼッション、トランジション、セットプレーでどれだけ得点(失点)したのかが分かる
②具体的な得失点のパターンが把握できる。
③パターンごとの詳細な分析ができる
④具体的な数字を提示しての説明ができる
⑤どの選手がどのように得点に関わっているのか把握できる
⑥過去の得失点をすぐに確認できる
⑦シーズンを通しての分析ができる
⑧他チームとの特徴の比較ができる

今までは傾向を分析する際はDAZNの映像を確認するか、配信が終了していたら、自分のレビューを見ながら一つ一つ思い出すしかなかったのだが、これは一度分析を出してしまえば、数値として見る事が出来るし、得点・失点を(ポゼッション・トランジション・セットプレー)の3つ、計6つの局面に分類している為に、どの局面が自チームのストロングで、どの局面がウィークポイントかは一目瞭然。しかもJリーグのハイライト映像とリンクさせ、そのシーンをすぐに確認できる。

金沢の昨シーズンの一例

例えばツエーゲン金沢の昨シーズンの総失点は46失点。そのうちセットプレー(CK関連・FK関連・PK)は8失点だが、トランジションからの失点が12失点。ポゼッションからの失点はなんと26失点である。これはマンマークの特性を上手く分析されていて、前半戦は8失点なのに対し後半戦は18失点となっている。なぜポゼッションからの失点が多いのか。

自陣に戻って、敵を待ち受ける守備陣形のほうが失点が少なそうだが、トランジション対応は金沢はとても他チームに比べて早く、即時奪回し攻撃に移るという意識が強い為に、あえてゴール前の守備を意識させ、ボールを動かしながら人と人の間に進入し、マークの一瞬の混乱を突かれる、という失点が多い。しかも自陣で守っている為にカウンターにも繋げにくい。事実、カウンターでの得点は後半戦に入って減少した。

上記のように実際、印象のみで強い・弱いと判断していた局面が、数値化されるとハッキリして、印象が変わってくる。

しかも、各項目を分類しているリストを、どうやって作成したのかというのが僕としては最大の驚きだった。例えばトランジションの場面でも、ボールを奪取した時(された時)のプレーの選択肢(縦パス・横パス・ドリブル等)と、ゴール前での崩しの時(崩された時)のプレーの選択肢(クロス・キープ・セカンドボール回収等)は違ってくる。

その選択肢を考えるだけでも骨が折れただろうと想像するが、全く不備が無く、プルダウンされるリストの中からプレーの種類を選択するだけ。さすがZdenkoさんが大宮界隈で教授と呼ばれているのもうなづける。

その作業を延々行う事、58得点46失点の計104得失点。2019年の金沢に関わるゴールシーン全てを分類・分析出来たのは本当にZdenkoさんのおかげである。僕はフォーマットを使わせていただいたに過ぎない。

このフォーマットのおかげで、今シーズンは昨シーズンと違って進化しているのか、もしくは弱点は依然として弱点なのかを自信を持って評価する事ができる。

さらにシーズン中も続けていく事で、リアルタイムに近い傾向・対策分析が出来る。我々に出来るような分析を、クラブが分かっていないで弱点を突かれているなんて事は、あってはいけない事なので、クラブ側がしっかりと分析出来ているのかを測る指針ともなる。

一緒にこの素晴らしいフォーマットを作りたい

しかし、ご自身の記事でも触れられているが、主観による分類になってしまう事もある点や(高価な分析ツールを使っても、最終的には人間の判断なので主観が入るのは仕方ない部分もある)セットプレーでの評価など課題もあるし、金沢特有のマンツーマン守備による分類の難しさなど、僕の感じた事をお伝えし、ブラッシュアップに役立てて頂きたいと思っている。

僕自身の力を高める為にも、各地の分析ブロガーと呼ばれる方々とは繋がりたいし、逆に僕と繋がって下さる方には何かを還元したい気持ちだ。(何が出来るわけでは無いので、とりあえずは出来るだけリツイートしている)

Zdenkoさんに対してもそう。時間は掛かるかも知れないが、この素晴らしいフォーマットを共有できる仲間を増やして恩返ししたい。そしてより良いものを作って、各チームのデータを共有出来れば「美味しい」と思ってもらえる料理の一定のベースを、共有する分析者みんなが手に入れる事が出来ると確信できるツールである。そしてこれを続けていく事で、どこのデータとも被らない、我々独自のデータを構築する事ができるのだ。

今のところ、共有しているのは私一人だけらしいので、新たな方の出現を期待している。そして僕もすでに開幕戦の岡山戦で活用しているが、昨年と今年との比較分析を行いたいので、早いリーグ戦の再開を願っている。興味のある方はどうかZdenkoさんか私にご連絡を!

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