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2020 J2リーグ第17節 ツエーゲン金沢 VS V・ファーレン長崎 レビュー 「牽強」

前回対戦の、昨年10月の試合は2-4というスコアで勝利した金沢だったが、その前に勝った試合を振り返ると2015年までさかのぼる(1-0)。あまり得意な意識の無い(?)長崎が、首位で金沢に乗り込んできた。金沢は前節、劇的勝利で流れは良い。長崎は新潟と引き分けそのまま金沢に移動した事だろう。日程的なアドバンテージは金沢にある。

スタメン

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金沢は京都戦以来の「6ベンチ」。怪我人が増えてきた事を考慮しても、まだ選手はいるだけに残念な構成。昨年チーム最多の41試合出場を記録した藤村くんをベンチに残し、ボランチは島津・本塚の初コンビ。SHは久々のスタメンとなった高安くん初スタメンのホドルフォさん。フレイレさんとルカオさんの「怪獣大激突」は次にお預けとなったが、陸次樹くんもモンスターに進化しようとしている。

長崎はターンオーバーで8人の変更。秋野・大竹・角田の主力はベンチ外で完全オフ毎熊・氣田など若手も着実に力をつけているし、外国人3人が控えている怖さがある。さらにこういう時に頼りになる大ベテラン玉田くんのメンバー表に入っているだけであふれる存在感。新潟に一時別れを告げ、大きくなって戻りたい加藤大くんのポテンシャルも高い。

試合開始

長崎は守備時は4-4-2のブロックを敷くが、攻撃時は3-1-4-2(1-1)のシステムに変化する。ただ単純にミラーゲームの様相にはしない。というかそういう長崎のスタイル。

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長崎のボランチの一方がサリーサリーダ・ラボルピアーナでCBの真ん中または2CBの左右どちらかに降りる。給水前は加藤くん、給水後は磯村くんが主にその役を担った。

いつも長崎は、秋野くんがCBの位置に降りカイオさんがタクトを振るってサイドにボールを散らすのだが、この試合ではSHの名倉・吉岡がIH化してボールを受けに来る事が多かった。上の図を見れば長崎左サイド(徳永くんがボール保持)からボールを展開しようとした際に、亀川くんがサイドレーンに張っているので、普通なら金沢の右SH高安くんは徳永くんにアプローチにいくか左SB亀川くんにいくか、瞬時に判断しなければならない。

しかし、金沢はしっかりと前から同数でプレスにいく事を共有し、マークをスライドすることで対応出来ていた。

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サリーを行うなら相手の2トップに対して3人となる事で数的優位を作り相手FWで構成される第一プレッシャーラインを超えるのが理想的だが、金沢はそれを容易にさせなかった事で前半のペースを握った。

そのボールの前進を阻止したゲーム時間10分12秒の金沢の攻撃は、トップ下の位置でボールを受けた加藤陸次樹くんがボールキープし、徳永くんと亀川くんの間をスルッと抜けた高安くんにボールが渡りシュートしたがボールは僅かにゴールから逸れる。

そのすぐ後の金沢の攻撃も、廣井くんが玉田くんのボールコントロールミスを誘発し、それを低めの位置を取っていた陸次樹くんが回収。それを渡邊→本塚→長谷川とサイドチェンジし長崎のスライドが追い付かないうちにアーリークロスを繰り出す。スライドが追い付いてしまい前に立たれてしまったら早い弾道を打てないからだ。

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ドンピシャのアーリークロスだったが徳重くんに惜しくも阻まれる。徳重くんはまさにゴールの門番といった風貌。たぶん、小松に住んでいたら勧進帳で弁慶の役を与えられるだろう(笑)

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というか長崎は、ある程度自分達が前半は攻められない事は織り込み済みだったのかも知れない。今季、磯村くんは16分しか出場時間が無く初スタメンだった。すぐに秋野・カイオの役を務められるかと言われれば難しいと判断し、前半は無失点で終わりたいと指揮官なら思うはず。甲府・磐田と金沢の後には強豪との戦いが控えていて、ベンチのカイオも出来るだけ休ませたい。

そのためか、長崎のボランチはあまりボールを深追いせず、ネガトラにも対応できるように金沢のFWを囲む。

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ここから逃れるようにこの試合、加藤陸くんは下がり目の位置でボールを受けていたとも思える。

チット、もう2ランクアップを

金沢の攻撃22分20秒くらいのシーン。加藤陸くんから左サイドを駆け上がるホドルフォさんへボールが出る。深い位置まで入り込みクロスを上げるが全く走り込んだ杉浦恭くんにあっていない。シーンを確認すると、全く味方の位置を確認していない事がわかる。(53分48秒の杉浦恭くんへのクロスは良かった)84分のボールの奪われ方や、そのすぐ後のパスを貰おうとする動きも近すぎて「ちがーう!」と思わず画面の前で叫んでしまうプレーだった。攻撃のシーンだけではない。

失点シーンでも長崎の加藤大くんのドリブルに対して、位置取りがやや右だった為にフェイントで簡単に振り切られてしまい、決定的なクロスを上げられてしまう。

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玉田くんのフェイントから頼盛くんのバランスを崩させてシュートまで持っていく速さも素晴らしかったし、セットプレー崩れの中でマークが曖昧になってしまった事もあるが、そういう時こそ狙われる。なんせ長崎はセットプレーからの得点が多いのだから。チャンスをしっかりモノにする。上位チームには欠かせない要素だ。

ただ、長崎は1点目を入れたあたりからディフェンスラインを少し上げてきた。給水前に何度かSHやFWにパスを出した時の距離の遠さを修正したと思われる。

それを逆手に取った金沢の攻撃が何度かあった。杉浦恭くんのポスト直撃のシュートや

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加藤陸くんの徳重くんとの1対1で弾かれてしまったシュートなどがそれだ。前半で1点獲れていたら勝ち点3を得られていたかもしれない。それだけ前半の流れは良かった。

後半開始

両チームとも交代は無くスタート。このままいくと金沢に必ずゴールが生まれると思っていた。その時は意外に早く、意外なミスから生まれた。

もちろん加藤陸くんや他の金沢の選手がプレッシャーの強度を落とさずにいたからこそチャンスが生まれたのだが、前半から少しでも危ないと思ったら一度GKの徳重くんにボールを収めてから立て直していた長崎だったのに、この時のフレイレさんは何故かサリーで下りてきた加藤大くんにパスしてしまった。多分、米田くんにも吉岡くんにも思ったより早くマークがついていた為、焦ったのかもしれない。

このパスをカットした陸次樹くんがシュートを決めて同点に。得点ランキングでも堂々単独3位となった(下の画像はSPAIAより)。

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長崎は56分に吉岡OUTで氣田IN、そして玉田OUTでサラー、じゃなくてルアンIN。

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今度、髪長くしたらこうしてみようかなと思うタギさんなのでした(楽そうだもの)

よりPAの近くでプレーする氣田くんと個人技に長けたルアンさんが入った事でチャンスが生まれる長崎。

63分45秒くらいからの金沢ゴール前の一連の長崎の攻撃のシーンや、66分35秒のルアン→名倉ヒールパス→ルアンシュート→白井セーブ、といったシーンで失点しなかった事が金沢としては大きかった。

金沢の交代と長崎の交代

68分に金沢は島津→杉井、高安→窪田の2枚替え。長崎も畑→イバルボ、磯村→スコーピオ、じゃなかったカイオの二人を投入する。

スコーピオの良い写真が無かったが、スコーピオ・スカイの方ではなくベイダーと仲の良かったスコーピオの方です(誰が知っとるねん)。

正直最近のイバルボさんを見ていても、前回対戦した時ほど怖さは感じなかった(身体が重そうでスピードも落ちているように感じた)が、カイオさんは昨シーズンよりチームにフィットし今は長崎の攻撃の肝と言っても良いだろう。出来ればリードして温存したかったはずのテグ将。

73分ちょうどのシーンのようにドリブルでチャンスを演出する事も出来るカイオさん。杉井くんが加藤大くんを、本塚くんが名倉くんを見ていた為、渡邊くんがファールで止めていなければピンチになるところだった。

成功とはなんぞや、スイッチを押せない監督

そして残り15分で杉浦→杉浦(恭平→力斗)と加藤陸→作田の交代。同じような策を去年、ホームの岐阜戦とアウェーの横浜FC戦で見ている。その時は梅鉢くん(現・相模原)が岐阜の川西くん、横浜FCのレアンドロ・ドミンゲスさんにぴったりマークについて仕事をさせないという任務に当たり見事に成功した(岐阜には辛勝、横浜FCには惜敗)。ただ、今回は成功したと言えるのか。

確かにカイオさんがあの時間帯に出てくるのは厄介だった。ヤナ将も長崎を事前に研究した際に、一番厄介だと思ったからこその作ちゃん投入だっただろう。カイオさんに仕事をさせなければイバルボさんもさほど脅威ではない。

しかし、ここから最後までチャンスは力斗くんのミドル2本のみ。確かに惜しいシュートではあったが、力斗くんにワントップを任せるのはまだ早かった。

作ちゃんはあくまでカイオさんに付いているので、加藤大くんがサリーで下がった時は、長崎3対1金沢となり簡単に前にボールを運ばれてしまう。そこで何とか前の穴を埋めようと長崎CBにアプローチしていたのは、ボランチで入っていた杉井くんだった。前回ボランチで投入されていた時も、攻撃的なボランチではなく相手ボールを奪取する役割を担っていた杉井くんが、前に出ざるを得ない状況だと長崎が攻勢に出るのは当然の事。

長崎もスタミナが無くなりかけていた為逆転されずに済んだが、金沢のこの交代はヤナ将が前節試合後にコメントしていた

「出ている選手の誰か1人2人が「今頑張りどころだ」と、「点をとるためには今やらなきゃいけない」ということをリードしてくれて、チームがひとつになれたら」(公式HPより抜粋)

という気持ちに選手がなる為のスイッチを監督が押せなかったように見えた交代だった。

試合終了

感想

島津・本塚のボランチは良かった。どちらが攻めてどちらが守るというようなモノでは無く、しっかりとバランスを見て対応出来ていたし、守備が不安だった頼盛くんも気持ちの入ったボール奪取を出来ていた。本塚くんも、陸次樹くんへのフワッと浮かせた縦パス(陸くん触れられず)など面白い場面も見られ、藤村・大橋・下川の次の選択肢だった二人が次世代の金沢を見せてくれた気がしてワクワクした。

しかし、首位の長崎相手に作ちゃんを投入して勝ち点1を得た事が成功なのかが疑問だ。町田・徳島と続く試合に藤村くんは必要だから温存したい気持ちもわかるが、藤村くんを入れて頼盛くんをトップ下に入れる事も出来た。そしてそれよりなにより

苦しい台所事情もあるが、6ベンチにする明確な理由がヤナ将の「闘える選手」というこだわり以外に見当たらない。「風が吹けば桶屋が儲かる」的な牽強より高い可能性で、「6ベンチで勝ち点3獲れなかった」という気持ちになった試合だった。

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