2020 J2リーグ第18節 ツエーゲン金沢 VS FC町田ゼルビア 「膠着」
リーグ戦でも相手によって特別楽しみな試合、というのが何試合かある。その一つが町田との試合だ。町田はいつだってチームが一丸となっているように見える。勝っていても負けていても。若手だろうがベテランだろうが選手がみんな町田の為に戦っているように思える。まさにクラブ理念の「町田市民が誇れるクラブとなる」為、今シーズンから再び町田の指揮をとるポポビッチ監督は適任と言える。
相馬前監督がそうしてきたように、経営母体が変わっても、サポーターや選手達は「東京」ではなく「町田」の誇りを持って戦う。スペインでいうバスクのイメージ。それが僕が町田の事を好きになった理由だ。そんな誇りをもった敵ほど厄介なものはない。
スタメン
手抜きしてしまいました。中2日だもの(-_-;)
金沢の変更は2点。廣井くんとホドルフォさんが外れ、作田くんと藤村くんに。藤村くんとボランチを組むのは本塚くんで、島津頼盛くんは左SHへ。怪我で戦列を離れていた金子くんがベンチに戻ってきた。
町田はスタメンの変更はなし。金沢もターンオーバーはあまり関係無いのだが、ここまで徹底していると驚愕である。ちなみに金沢は登録選手がJ2リーグイチ少ないが町田は金沢に次ぐ少なさだ。選手が少ないからタフになれという事なのだろうか・・・。
試合開始 カギは4分と24分にあり
※選手の前についているボジション表記は登録されているものでは無く、試合中のポジションです。
開始から攻勢に出たのは町田。連戦でスタメン固定がまるで嘘のような強度のプレッシングで金沢のパスを奪い獲り、ゴールに詰め寄る。
ファーストシュートは金沢の右SB長谷川くんがPAに進入しゴールはるか上にふかしてしまったものだったが、そこから10分ぐらいは町田のペース。
町田FW安藤くんが長谷川くんと交錯し倒れているところ、こぼれ球を拾った町田左SH岡田くんにマークにつく金沢CB石尾くん。その前方となる町田から見て左PA脇にボールを貰いにいく町田FW平戸くん。平戸くんには金沢CB作田くんがついている。自陣PA内にカバーの為に等間隔で並ぶ長谷川・本塚・渡邊。その前にスッと入り込んでパスを受ける町田CH佐野くん。
連動して3人の前に入ってきた町田右SH吉尾くんにパス→町田右SB奥山くんにダイレクトに預けてミドルシュート。
マンツーマンで守る金沢のマークがずれた時のもろさ、相手という基準がいない時はゴール前を固めてしまい、空いているスペースを使われるという弱点を早くも露呈してしまった金沢。
24分ごろにも同じような形で金沢右サイド深くに入られ町田が安藤→岡田→高江くんのミドルシュートを打たれてしまう。
この2つの場面で手ごたえを掴んだ町田は39:38ごろに仕留めにかかる。
先程から金沢の右サイド深くに入って来ていた平戸・安藤は動かず各マークをピン止め。金沢で一番危険察知能力に長けたCH藤村くんがミドルを打たれないように穴埋め。金沢CB石尾くんは安藤くんがゴール前に進入しないか監視。そうなるといつのまにやら高江くんと奥山くんの間で右往左往している金沢右SH高安くんがいた。藤村くんが高安くんに奥山くんのところへいくようコーチングするが時すでに遅し。前述の2つの場面が生きたゴールだった。
町田は先制した試合は負けていない。4連勝の勢いそのままの町田。1点あれば十分な気がした重い点だった。
町田の金沢封じ
町田の両SBのヒートマップを見てみると小田くんはややミドルサード~ファイナルサードタッチライン際のプレーが目立つが、後方でのボールタッチも目立つ。しかし、ゴールを奪った奥山くんはそんなに前でプレーしていない事がわかる。
金沢のボール保持時の攻撃での大きなポイントは次の3つ
・石尾のパートナーのCB(作田・廣井)はボールを前に運べない。
・中央からの突破はほぼ無い。しかし、鋭い縦パスか裏を狙うパスがボランチから入る事あり
・早いサイドチェンジは出来ない
これらを頭に入れておけば、例えば金沢が左サイドからボールを運んできたとして
上の図のようにCH本塚くん、SB渡邊くん、SH島津頼盛くんで崩しにかかっても町田CH高江くん、SH吉尾くん、SB小田くんで対応できるしそんなに深い位置でなければFW安藤くんも加勢出来る。金沢の2FWには町田2CB+逆側のSBで見る事で、サイドを突破されても一人がボールホルダーにアタックに行け、上の図では町田左SB奥山くんが金沢右SB長谷川くんを、右SH岡田くんがCH藤村くんを、CH佐野くんが右SH高安くんをそれぞれ見る事で、容易にサイドチェンジや間受けをさせない。
しかも町田が攻撃の時にはFWやSH・CHがサイドに進入してズレを作ってからの奥山・小田の出番となるので、前がかりになってカウンターを食らう事も少ない。
カウンターのチャンスとなったのは33分ごろの金沢FW加藤陸次樹くんのシュートくらいではないだろうか。
前半終了前にもコーナーキックのこぼれ球を陸次樹くんがシュートするも町田GK秋元くんの正面。
全く攻めているという感じがしない前半だった。以前からボールを持った時の崩し方が課題の金沢。それが改善される気配は無い。
後半開始
ハーフタイムでの交代は無し。連戦の疲労からか、後半開始直後の町田はパスミスが多く、金沢としては得意なカウンターに繋げる事のできる場面が多かったがその多くがフィニッシュに至る前に終了。
2手3手で仕留める事が求められる金沢には、3手目がダメになったところで4手目に行く手段があまり無い。それは53分15秒のシーンを見ればわかる。前半の町田と同じように、金沢が左サイド深くに進入していこうとするが、藤村くんを外側から追い越す渡邊くん、ボールを藤村くんに預けて前に張る頼盛くんと、裏を取ろうと待ち構える陸次樹くん。
結局、各々が孤立してしまう。色んなパターンの狙いが頭の中でうごめいているのだろうが、この時にはこの攻撃だという明確な決まりが無い為に、各々の考えが一致せず孤立してしまう。
だが、金沢にはもっと手っ取り早く点を獲る為の武器が仕込んである。
窪田という刀
後半14分に高安くんに替わり窪田きゅん投入。今季始めはあまり精度の無かった窪田きゅんのクロスだが、最近になって精度・スピード共に増してきた。
陸次樹くんのパスを受けデュエル最強奥山くんと対峙する窪田きゅん。前方向にボールを進めるのではなく、あえて平行にボールを出して一瞬のスピードで出すクロス。GKの秋元くんが出られそうで出られないところへ出した絶妙のクロス。窪田きゅんが伝家の宝刀になりつつある。
前回、精度が上がれば10アシストできると言ったが、かなり確信的になった。もう一度言う。怪我はするなよ、窪田きゅん。したら泣いちゃう。
お互いの利害が一致し幕引き
後半は前半よりも金沢のペースでの展開が続いたが、杉浦恭くんのミドルシュートもポストに弾かれ、藤村くんのミドルシュートも僅かに枠を捉えず。町田は中島・森村という攻撃カードを切りつつも変化をつけられないまま試合を終わらせた。確かに、アウェーで選手の疲労を考えるとポポビッチ監督も勝ち点1でも悪くない。お互いの監督の利害が一致した終わり方になった。両チームとも交代枠が5あるのに3しか使わなかったもの次節を見越しての事か。
試合終了
金沢はパスの本数が616本と普段の2倍となり、中2日で迎えるアウェー徳島戦にかなりの疲労を残す形となった。これを書いている時点で徳島戦30分前。去年の対戦の完敗の印象が強く、徳島に対してどれだけやれるかというのが、金沢が前に進んでいるのか後退しているのかを測る物差しとなるだろう。頼む、良いサプライズを届けてくれ。
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