2020 J2リーグ第16節 ツエーゲン金沢 VS FC琉球 レビュー「恍惚」
琉球との対戦は荒れる予感がする。昨年は窪田きゅんが負傷する事態となったホーム試合。怪我はしなかったが現・群馬の小島くんも同じ試合で吹っ飛ばされて三回転していた。
個人的見解としては、やはり琉球のアウェー遠征はかなり過酷なんだろうなと思う。今年は特に過密日程でストレスに拍車がかかっている。しかし、去年は4勝しか出来ていなかったアウェーはすでに今年3勝。昨年の失敗をしっかり生かしている。
だがホームで山形に敗れ、中3日で金沢に乗り込む大変さ・・・。次の町田との試合はかなり辛いのでは、と琉球サポじゃないのに心配になってしまいます(;´д`)
スタメン
金沢は廣井→作田の変更のみ。「スタメン」という事にこだわるヤナ将。変わり映えしないという事は、ベンチメンバーとの力の差がかなりあるという判断なのか。
一方の琉球は鈴木→福井と池田→山口の2点の変更。久々に西部緑地に帰ってきた沼田くん。逆サイドの田中くんと同じくチーム最多の3アシストをマーク。最近「せやろがいおじさん」にハマっているのかTwitterに良く動画がリツイートされている。Twitterのアカウントが「ぬまたけいご」になっている為、ここでもあえて「ぬまた」くんと表記する(笑)
開始2分から14分後
窪田きゅんが足を踏まれて倒れ込んでいたが笛は吹かれず、そこで何とかボールを取り返そうと琉球の河合くんを猛追する下川くん。左斜め後ろから身体を入れてスライディングをするが着地した時に、膝に横方向に力が入っていた。
試合開始直後だった為か、まだやれると判断したのか、プレーを続行する下川くん。しかし、交代したのはその14分も後だった。大橋くんと同じようにしばらくプレーした後に退く下川くん。それが何を意味するのか。
しなくていい失点
しかしながら、お粗末と言って良い崩され方が序盤から見られる。それは7分55秒からのシーン。
しかも中に敵がいないにも関わらず対応が遅れて、寄せに行かない作ちゃんがちょっと意味がわからない。
失点シーンも(島津)頼盛くんの守備意識の低さが原因?いや、上記とほぼ同じ位置で、ボールを相手に保持される事は許されているのかも知れない。しかしそれが許されているのに渡邊くんや作ちゃんのポジショニングがおかしいのは何故だ。説明がつかない。
頼盛くんが琉球SB田中くんにプレッシャーをかけにいかないので、渡邊くんが正対して間を詰める。すると何故か作ちゃんがマークに付いていた琉球SHの風間宏くんから離れる。
田中くんから風間宏くんにパスが通り、作ちゃんがまた風間宏くんに付く。付いて離れてまた寄って。離れた間に藤村くんがそこにカバーに入り、琉球の山口くんの動きにつられて下川くんが来て団子状態に。
阿部くんはボールが来る事を想定して、常に石尾くんと一定の距離をとっていた。ボールが来たらダイレクトでシュートを打つために。
しかし、それはボールを入れさせなければ良かった話。守備の意識の低さのせいか、誰がどの相手にマークに付くという判断のミスなのか。
どちらにしろ、見ていて「なんじゃこりゃ」というミスで失点してしまった金沢。
その後前半のハイライトは頼盛くんのミドルが外れた事や、作ちゃんのヘディングが2度ミートしなかった事などが挙げられるが、実はそれとは別の事だった。
あまりチャンスらしいチャンスとはならなかったので、あまり印象に残らなかったかも知れないが、前半は金沢のほうがファイナルサードでプレーしている。
支配率をコントロールせよ
琉球はカルバハルさんも参加して最終ラインからボールを回す。カルバハルさんが入らない時は、上里くんがヨンジさんの右に入り右SBの田中くんを前に送る。田中くんは金沢がアプローチしてこない時は、ボールを保持し時間を作る。逆に強くプレスにくる時はワンタッチで風間宏くんにパス。ボールをロストすると判断すればすぐに後ろに戻す。
その判断も早かったが、ある程度ボールを失っても早いパスでサイドを崩す事を許容していた。それは琉球左サイドでも同様。しかし右サイドでの攻撃が多かったのは1点目での崩しでもわかるように、頼盛くんの守備意識の低さと渡邊くんのプレス強度の高さを利用してのものである。
さらにボール支配率は金沢47%に対して琉球53%。金沢は今シーズン45%を超えると勝利した試合は栃木戦のみ(6試合で1勝5敗)。相手に持たせながら、したたかに前半を終わらせようとしていた。
琉球は失点の37%はクロスからによるもの。それを分かっているからこそ窪田きゅんはクロスにこだわったのだろうが、この試合に関してはあまり成功しなかった。
ボランチは下川くんから本塚くんに交代し、左の位置取りだった藤村くんが右へ。これは決まっている様子。下川・藤村だと藤村くんは左に位置し下川くんが右でしかも下がりめに。本塚・藤村だと藤村くんが右で藤村くんが下がりめになる。
その本塚くんが出したクリアボールをFWの二人が「これぞ金沢」という速攻でゴールに結びつける。
「これぞ金沢」速攻ゴール
二人のここぞという意識が素晴らしかったが、さすがきょんぺーくん。PA手前で陸次樹くんがボールを失いそうになるが、それをかっさらって豪快に叩き込む。
なかなか二人にボールが来ない時間が続いたが、それを払拭するゴール。先制して前半を終わらせようしていた琉球にとって、この得点はかなり痛かったに違いない。
後半開始
金沢は交代なし。琉球は後半開始から、山口くんに替えてガンバユースの最高傑作(と僕が勝手に思う)市丸瑞希くんがIN。各年代の代表にも選出されU-20のW杯では主力だった。僕が目にしたのはまさにその時だったが、その輝きを放った時期からは少し霞んでしまった。ガンバの層が厚いという事ももちろんだが、昨年岐阜にレンタルされたがチームを残留させる事は出来なかった。
その市丸くんは上里くんとボランチの一角を担い、ボランチだった小泉くんは、FWの位置から中盤のあらゆるとこるへ顔を出す、自由な位置取りをしていた。守備時の小泉くんは4-4-2のトップの位置に収まっていた。
琉球は守備ではコンパクトな4-4-2でブロックを組んでいたが、ボールがディフェンシブサードに入るとマンツーマン気味にディフェンス。金沢はボールを動かし、なんとかハーフスペースやライン際を活用し逆転を狙っていた。
48分39秒の頼盛くんの鋭いシュート、50分38秒の窪田→長谷川へのパスから中央へのクロス、57分10秒の窪田→加藤→杉浦恭→加藤という繋ぎ。70分45秒の高安→藤村→杉浦→高安のショートパスの崩し。SHが2枚替えしても(63分高安・ホドルフォIN)ディフェンスライン脇への狙いは変わらない。
ぬまたの使用方
ヤナ将が試合後のコメントで語っている事がある。
インタビューアー:昨年まで金沢に所属していた沼田圭悟選手の対策はしましたか?
ヤナ将:ディフェンスラインの背後、ペナルティエリアの角あたりにボールを入れるパス、それともう少し高い位置(金沢にとってのゴールに近い位置)からのアーリークロス、そういう場面で非常にチャンスを作っているし、ゴールが決まってるんですよね。だから、そこは防ごうと。多少遅れてでも、そのコースを切りながらアプローチをして、田中恵太選手の方もそういうところを気を付けようと選手たちに伝えました。(ツエーゲン金沢公式HPより抜粋)
確かにSPAIAのデータでもわかるが琉球の両SBにほとんどクロスを上げさせていない。右の田中くんは79分19秒からの攻撃のようにPAに入り仕掛ける事も出来るが、ぬまたくんにはそれが無い。
しかし、試合を見ていると完全にクロスを上げるチャンスが無かったかと言われればそうでもない。ぬまたくんの前にはスペースがあったが、味方がそれを感じてはいなかった。ボランチと二列目とのパス交換で、金沢を崩す事に気を取られていたように感じた。
ぬまたくんの使い方とFWの動きだしをもう少しチームで意識すれば、得点は増えると思って敵ながらもったいない気がした。
SHのチット
前述の79分19秒でのボールの奪われ方、80分35秒のボールを味方に預けてからの動きなど、まだまだ試合を通じて使える選手になったとは言い難いホドルフォ(相性チット)。
しかし83分02秒のクロスは相手のディフェンスが戻るタイミングが遅いと判断して、半ば強引にあげたが狙いは良かった。日本人には出来ない強引な身体使いでなんとかしてしまうバネがあるのではないかと思う。それで怪我する事だけは無いようにしてもらいたい。
決勝点の差
90分通して、サッカーの質としては満足いくものではありませんでした。選手一人一人が止まっている時間が長かったんじゃないかな。アクションを起こさないと見ているサポーターの皆さんは面白くないし、そこはいくらしんどくてもやっていかないといけないです。今はトレーニングがなかなかできないですが、気持ちの面で挽回してほしいです。
琉球の選手たちも相当しんどそうで、お互いに動きのあるゲームではなかったんだけど、こういう状況のときこそ、出ている選手の誰か1人2人が「今頑張りどころだ」と、「点をとるためには今やらなきゃいけない」ということをリードしてくれて、チームがひとつになれたらもっと早いタイミングで点が取れたんじゃないかと思います。
今日はたまたま我々に最後点が入って勝ちましたが、どちらに転がってもおかしくないような。チャンスはこちらもありましたが、流れとしてはどっちかな、というような展開でした。ただ、こういうゲームの流れの中でも、勝ち点3を取れたことは前向きに考えて、相当疲労はしていますがその疲労も回復できると思うし、また中2日でゲームがあるのでコンディションを整えてやっていこうと思います。(試合後ヤナ将コメント、公式HPより抜粋)
樋口監督も「精神的にも肉体的にもタフさがちょっと足りなかった」というようにお互い自分のプレーに関して通ずるところがあったようだ。
ただ、精神論的なコメントである事も忘れてはいけない。オーガナイズされていないチームに「ひとつになれ」というのは矛盾している。
最後の場面に関してはあまり言う事は無い。どちらに転んでもおかしくなかったというヤナ将のコメント通り。しかし、だからこそチットが決めた事にみんなが喜んだ。
ロングスローを入れる為に、右に移動していた金沢左SB渡邊くんからFW加藤陸次樹くんにアーリークロス。それをヘディングで合わせたが琉球GKカルバハルさんが弾き、こぼれ球に素早く反応したチット。
ユニフォームを脱げばイエローカードを貰う事など分かっているだろう。しかし、昨年の山形での涙の退場。そして金沢に来て、やっと試合に出場できるようになって、決勝ゴールあげた喜びはイエローカードぐらいで治まるものでは無い。
試合終了
前節、陸次樹くんを45分で交代し、今節最後まで使ったヤナ将。それが次節以降どう影響するか。
そして現時点で怪我のリリースは無いが下川くんの具合はどうなのか。どちらにしても次節は出場できないと見ておいた方が良い。
長崎・町田と続くホームゲームで再び恍惚の瞬間は訪れるのか。ひとまずチットよ、おめでとう。しかしここからが勝負だぞ。
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