2021 J2リーグ第8節 アルビレックス新潟 VS ツエーゲン金沢 よくやった、でいいの?
スタメン
泰基くんがレンタルの契約条項により新潟戦は出場できない為、代わりに誰が入るのかと思ったらなんと片倉くんだった。サポーターズ出陣式で紹介した「城西のファンダイク」片倉くんがメンバー入りしワクワクしていたのは仕事休憩中のタギリスト。ちなみにリアタイでは試合を見る事が出来ず。「加賀のモハメド・サラー」大谷くんとコンビを組む左サイドはリバプールの風が吹いていた。
新潟は鈴木考司くんがOUTで谷口くんがIN。開幕から途中出場だった男がホームの舞台でスタメン。アルベルト監督、使いどころをわかっている監督だ。
試合開始
受動的と能動的
分かり易く言えば、金沢は2つの顔がある。開幕から見せてきたボールも人も動く攻撃的サッカーと、東京V戦で見せたポゼッション型のチームに対する顔だ。
下の図はヴェルディ戦の金沢の守備陣形
ただヴェルディとアルビの違いはサイドでの振る舞いの違いだ。攻撃時はWB的な役割を果たしていたヴェルディの両翼だった為に、基本的には金沢の2列目の選手はカバーシャドーしながら極所的に数的優位を作れていたが、アルビに対しては同数(ボールサイドにボランチの高くんやワントップの谷口くんが入る為)となり、質的な優位性にはアルビに分がある。
こちらはアルビ戦の金沢の守備陣形
能動的に動くのが攻撃時なツエーゲンのサッカーであるとすれば、ポゼッション型に対しては受動的と言える。それは金沢のプレスのタイミングを見れば一目瞭然。
ちなみに質的優位性がアルビにあると言い切った理由は、受動的である事を金沢が自ら選択したという事からである。アタッキングサッカーを明言してきたヤナ将がリアリストになってきたという点は5年間で1番変化があったところかもしれない。
前回のレビューで触れたジャンケン理論でいうところだと、グーとグーの撃ち合いをする選択肢もあったと思うが、ヤナ将はそれを選ばなかった。ただ、それが悪いとは思わない。能動的だろうが守られて為す術が無ければ負けだからだ。
前半、一進一退
前半の金沢の守備はうまくいっていた。ヴェルディ戦で前線に蓋をしたように新潟の前と後ろの分断に成功。だが新潟はサイドに活路を見出し、ロメロさんや本間くんに縦パスを入れてワンタッチで後ろに戻し、もう一度ワンタッチで前にパスを出して前線の選手に前を向かせレイオフの形でボールを前へと運ぶ。
ワントップの谷口くんがサイドに流れ、金沢の庄司・石尾が挟み込んで止めに行くが必死にボールキープ。金沢のデイフェンス陣は6人でPAを固め新潟の前線4人に対応していた。
最初は跳ね返すのがやっとだった金沢も徐々に反撃。新潟が後ろにボールを戻すのに合わせてチェイシング。
25分24秒の後藤くんのゴールキックから27分44秒の庄司くんにボールが当たってタッチラインから出るまでの、息をのむ攻守が激しく入れ替わるシーンはシュートこそないものの、この試合の面白さを象徴するような時間だった。一進一退とはまさにこの事。
ルーキー片倉、渡邊の代わりでは無い活躍
さらには守りに穴を開けなければ、この試合に関しては合格点かなと思っていた片倉くんが存在感をアピールする。
36分15秒、大橋くんと左サイドハーフライン周辺でパス交換を行い、ロメロさんを振り切りながら、新潟右サイドバックの藤原くんの裏のスペースへとボールを出し大谷くんを走らせる。
そのすぐ後の37分ちょうど、右から流れてきたボールを受けとると前線2人の新潟CBの裏への動き出しを見て、瀬沼くんへのパスを選択。
どちらもチャンスにはならなかったが、渡邊くんにも石尾くんにも強力なライバル出現と言ってもいいくらい。もちろん、キープ力もあり速さも持ち合わせるロメロさんに対して、しっかりマークして攻撃の芽を摘んでいた。
金沢のルーキーのデビュー戦としてはかなり良い部類に入る。ただ、受動的な試合と能動的な試合ではやる事がガラリと違うので、次は能動的な試合で彼のプレーを見てみたい。
数字以上の反撃
38分5秒の大谷くんが舞行龍さんからボールを奪ってクロスを上げるシーンや、前半ロスタイムの大橋くんから瀬沼くんへのセンタリングからのワントラップシュートがまさかのオフサイドになったシーンなど、前半30分前後から新潟のペースだった試合を、金沢の流れに持っていく形でハーフタイムとなった。
前半を終えて、シュート数新潟5本金沢1本、ボール支配率は新潟76%金沢24%、コーナーキック新潟3本金沢0本、ファール新潟2回金沢7回、と数字の上でも新潟が上回っていたがスコアは0-0。良くボール支配率が低いから金沢の試合だとか、高いから金沢のペースじゃないとか脈略の無い話が飛び交っているが、新潟のペースである事は間違いなかった。ただ、金沢はシュートが打てなかっただけで、決してやられてばかりでも無かった。
後半
アルベルト監督、動く
さて、後半の中身に触れる前に、見て頂きたいのはいつものヒートマップである。先に見せるのは千葉戦の庄司くん、その次が今節新潟戦の庄司くんのヒートマップである。
若干後ろに位置しているのがお分かりだろうか。これは意図的に新潟に対しては低く守っていると思われる。その根拠は、先程見て頂いた金沢の守備陣形。もう一度貼り付けておく。
前線の瀬沼・丹羽がセットする場所を決め、新潟の最終ラインを近づけさせないようにすると前線との間に距離が出来、それによってボールを前に運びにくくしていたのだ。
それを修正しようと後半にアルベルト監督は、そもそものボール運びのやり方を変え、金沢の第1プレッシャーラインを超える時には急がずに横方向にボールを動かし、必要に応じて余裕を持ってボールを戻しながらボランチを経由して超える。分かり易く言えば前半は最終ラインから始まっていたアルビの攻撃を、後半は本格的な攻撃の位置を金沢の第1プレッシャーラインを超えてからに変えたのだ。
必要以上に下がって守らない金沢FWをクリアしてからは本間がトップ下の位置に入って上下動してボールを受けに来る。ボールサイドのIHが裏へ飛び出す動きをすれば、その空いたスペースに谷口くんが入っていく。
ヴェルディ戦では最後尾から山本理人くんがボールを散らしていて、井出・佐藤優平のIHがボールを受けに来ていたが、ゴール前まではかなりの距離があった。アルビはすでに金沢のFWを後ろに置いてからのボール運びにもちこんだ為、持ち味のポゼッションサッカーを存分に発揮できる状態を作っていた。
特に今回の試合は金沢のディフェンスの基準が人だった為に、目まぐるしくポジションが入れ替わる後半のアルビには手を焼いた。金沢はご存じのようにマンツーマンディフェンスを採用しているが、相手によってその守り方を少しづつ変えている。アルビに対して色濃くマンツーマンディフェンスを行った理由は、そもそも4-4-2のゾーンディフェンスを採用していない事もそうなのだが、金沢とてある程度のゾーンディフェンスは出来る。しかし相手が流動的に攻撃してくる事やシームレスな展開を予想して、マークの受け渡しによるリスクを回避してきたのだと思われる。
金沢の守備を逆手に取る
しかしそれを逆手に取るシーンが60分ちょうどに見られた高くんのドリブルだ。
金沢FWの後ろにいた高くんがボールを持ってゆっくり上がるのだが、高くんに付いている金沢の選手がいない為に、速くもないドリブルでペナルティエリアに侵入を許してしまう。
重なるミス、油断は共有される
しかし、金沢が一番気をつけなければいけなかったのは油断だった。
新潟の藤原くんがスパイクの紐切れの為、ピッチの外へ。これにより人が基準だった金沢の守備のバランスが崩れた。
新潟GK阿部くんのロングボールが高木くんへ。何故か石尾くんが競り合ったにも関わらず弾き返せなかった。高木くんと石尾くんの身長差は15cm。タイミングを見誤らなければボールを逸らされる事はあまり考えられない。
そこは果敢にアタックにいったという事で仕方ないとしても、そのセカンドボールを獲る際に松田・藤村がお見合いしてしまったところを本間くんにさらわれ、すぐに大橋くんが矢村くんに付いていればよかったのだが、反応が遅れてしまった。
これは藤原くんがいなくなって松田くんが宙に浮いた状態になった為におこった出来事だと思われる。一度の場面で3つの致命的なミスが起こってしまえば相手はゴールを奪ってしまう。
失点以後も金沢はチャンスらしいチャンスは作れなかった。唯一これはと思ったのは瀬沼→力安というパスからのカウンター。しかしアルビの帰陣は速く、松田くんへの横パスもカットされてしまった。
試合終了
スタッツ
ハイライト
柳下監督コメント
できることは全部やったんじゃないかと思う。新潟の選手一人ひとりは力があるし、スキもまったく見せずに90分戦えていたので、なかなかボールを奪うこと、カウンターでゴールを目指すことは難しかった。強いチームに対して緩いプレー、ちょっとでもスキを見せてしまったら間違いなく勝てないので、まずそういうことがないようにチームをまた作り直していこうと思う。もちろん一人ひとりのプレーの精度を上げないと上を目指すことはできない。そのあたりをトレーニングしていきたい。(Jリーグ公式HPより抜粋)
感想
正直、スタッツの数字などはどうでもいい。が、後半に至ってはほぼ新潟の試合。相手が1位だろうが関係ない。前半のうちに得点を奪えるチャンスだってあった。町田戦のように勝ってしまう事もある。
「よくやった」で片付けるのは簡単だ。そうやって5年間が過ぎた。生半可な挑戦ならそれでもいい。しかし、選手は相当悔しいはずだ。連敗してもまだ5位だと喜ぶのなら挑戦を止めるべきだ。悔しさが選手達や俺たちサポーターを挑戦へと駆りたてると信じ、あえて言う。
この内容と結果でよくやった、でいいんですか?
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