見出し画像

2021 J2リーグ第38節 FC琉球 VS ツエーゲン金沢 レビュー 負けには必ず理由あり

再びノムさんです。自分を「弱者」「月見草」と認めるノムさんには共感する事が多いので、今季2度目の登場となりました。というかこの試合は、負けた理由が、「以前見られていた事が修正出来ていないから」という点に尽きました。

スタメン

琉球は前節から上原牧・福井・赤嶺→金井・岡崎・富所の3枚替え。田中恵太くんと知念くんという攻守の要を負傷欠場で失ってから、連敗街道まっしぐらで監督も交代した琉球。

直近10試合平均得点0.5という得点力不足に泣いていたが、ボールは支配出来ているしチャンスメークも出来ているだけに、何とか残りのリーグ戦で課題をクリアしたいところ。

一方、金沢は後藤・大石→白井・金子の二枚替え。嶋田くんがまだ本調子でないのか、前節同様サブからのスタート。

試合開始に賭けた琉球

もう周知の事実だと思うが、金沢は試合の開始後と終了前に失点が多い。琉球は金沢の特徴を理解し序盤から攻勢に出る。

結果的に1失点目の時間帯は20分台だったが、金沢は最初からのズレを修正する事が出来なかった。

琉球は池田・武田がボールサイドで縦関係を作りながらディフェンシブサードに入ると一方がサイドに残りもう一方がゴール前に流れる。さらにゴール前に人数をかけるよう徹底されていた。

琉球のゴールの約35%はクロスから生まれている。確かに田中恵太くんがいない事でその脅威は半減していたかも知れないが、ズレを作られようが沼田くんに簡単にクロスを上げさせる事はこの試合で一番やってはいけない事。

では、どのようにズレが作られたかを見て行こう。

琉球の攻撃を詳細解説。これが分かればサッカーは10倍面白い。

琉球の攻撃時のマークはこのようになる。金沢の両SBとSHには1対1が出来上がっているが、真ん中のいわゆるバイタルエリアでは4対3の構図となり数的優位に見える。しかし琉球が真ん中から攻撃してくるわけでは無い。

岡崎・李が金沢の第一プレッシャーライン(丹羽・大谷)を超える方法は3つ。①はGKの田口くんを真ん中に迎え入れる方法。

これはたまに見られたが、正直GKの足元の技術が無いと出来ないビルドアップの方法だし、もし相手が連動してプレスに来られた際にはボールを失いかねない。

②は6番の風間宏希くんがCB間に降りてくる方法。

これもたまに見られた。①と同じように3対2の状況を作ることは出来るが一人後ろに下がってしまう事で前にボールが送りにくくなってしまう。そこで良く使われたのが③の方法だ。

③SBと2CBで疑似3バックを形成する。

ここで大事なのはやはり6番の風間宏希くんの位置だ。宏希くんは大体、大谷・丹羽の後方にいて、さらにパスコースを切らせないような位置取りをする。金沢は金井・岡崎・李に対してだと平松・大谷・丹羽でハメでこようとするからボールホルダーに対して斜めに位置すればボールを貰いやすい。

宏希くんの運動量が追い付かない時は富所くんがカバーする。

こうやって第一プレッシャーラインを超えたボールを次のフェーズでは菱形を形成して金沢を崩しにかかる。

富所くんを起点として菱形を作るのだが、武田くんか池田くんが加わるのかはその時によって変わる。細かくパスをしている間に池田(武田)くんが菱形の奥へと移動しボールをキープ。

その際SB(沼田)がカバーに入り他の選手がゴール前になだれ込む。

ここでボールに絡んでいない選手の位置取りが重要になる。

宏也くんはボールロストした時に数的同数や不利にならないようにしていると同時に図で言うと藤村くんをピン止め。

金井くんと風間宏矢くんは中間ポジションを取り同じくピン止め。

という事で図のセンターサークル付近では3対2、金沢左サイドでは4対2(宏希くんも含めると4対3)、金沢右サイドでは5対4という同数にならないズレを意図的に作り出していた。

池田くんが外に張れば池田くんが中へ、富所・茂木がボールを中心に流動的に動き沼田くんがタッチライン際を上下動する。それぞれの役割が理解出来ていれば難しい動きではない。問題はマンツーマンでマークを受け渡ししなければいけない守備側だ。

難しい判断を迫られた失点

大谷くんから富所くんが離れた時点で3対4の数的不利に陥っていた金沢右サイド。中央から左サイドはスペースを埋めたりマーカーに付いている為にボールサイドにスライドする事が出来ない。

琉球がかなり人数をかけて攻めてきている事から、大谷くんがバイタルエリアを埋める為に戻り、藤村→大橋→金子とスライドして対応する事も考えられるが金沢のシステム上、あまり現実的とは言えない。

ただ、沼田くんが外へ大きく膨らんだ時に危険が察知出来ていたら、いつもと違う事も出来ていたはずだ。すべてボールが動いてからの対応になってしまっている。

一度平松くんの視界から消えて再び現れる風間宏矢くんの動きも素晴らしかった。逆に平松くんは視界からマーカーを消してはいけなかった。そして白井くんのポジショニングにも難があった。

GKの本当に守るべき範囲

ゴールキーパーはボールと両ポストに線を引いた2等線上に立つ。すると守べき本当のゴールは横線で表した範囲である事が分かる。

クロスが上がった時に白井くんが細かく後ろに下がっていくのが確認できる。これは自分の守る範囲を広げてしまっている。後ろに行けば行くほど守るゴールは大きくなる。

さらにはジャンプする時に身体を反らしてしまっている。要は後ろに飛んでいる。それも守る範囲を広げてしまっている。飛ぶ時は前か真横に飛ばなければいけない。

「参考文献・・・ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座」

ただこれらはチームの問題として捉えなければいけない。誰かのせいにしていてはまた同じ事を繰り返す。後藤くんに出来ている技術があるのに白井くんが出来ていないのは何故か。

夕陽が気になっていたのだが、もしかするとホームチームはそれも計算の上で左サイドからの攻撃が多かったのかも知れない。

重要視する27分の攻撃「激しく襲いすばやく仕留める」

何故27分のシーンを引用したのかというと、今までの金沢なら出来ていなかった事だったからだ。攻撃を前の選手に委ねてしまい攻撃に人数をかけられないという事が度々起こる。

DAZNの画面には、金沢側は白井・庄司・廣井・松田・大橋、琉球側は池田・武田が映っていなかった。なので左半分はほぼ想像だが、今までなら相手のカウンターを警戒し前に出てくることは無かった。

大谷くんが岡崎くんにボールを奪われ、宏矢くんに泰基くんがチェイシング。ボールを前に出させない。宏希くんにボールが渡るのを予測し、プレスバックする丹羽くん。宏希くんが何とかボールをキープして富所くんにパスを出すと画面の左からものすごい勢いで現れ、大橋くんがボールをカットした。

ボールを前に出させないという気迫、そして狩る為に行う予測、何度もチームでトライする粘り。得点にはならなかったがこういうプレーの積み重ねではなかろうか。忘れかけていた「激しく襲い素早く仕留める」というキャッチコピーがぴったりくるシーンだった。

早々に同点

金沢の得点は相手のスローインを上手く挟み込んで奪い、大谷くんがゴールへ向かって前進した事でディフェンスを引き付け平松くんへ。スライディングした金井くんの手に当たってPK。

イエローは可哀そうな気もしたが、PKを丹羽くんが冷静に決めて同点。

あと1点で2桁得点の丹羽くん。あと4試合でJ2日本人選手最高順位の小池くんを抜こう。君なら出来る。大谷くんと合わせ技でも構わない(真面目)。

後半の風上琉球

失点して早い時間に金沢は同点に追いつけた。その後も相手ゴールに迫れていた。後半開始からもその流れは続いていた。

しかし琉球は前半より縦に早いボール運びを意識していた。それは風上という事もあっただろう。那覇の当時の風速は7メートルを超えていた。大谷くんを狙ったロングボールが押し戻されていた事でも風の強さが分かる。

そのせいだろうか。白井くんからのゴールキックが庄司くんに低弾道で送られるが庄司くんから大橋くんにダイレクトで渡そうとしたところ、パスずれし、茂木くんへ。

ショートカウンター発動。茂木くんが金沢右サイドをドリブル前進。そして内側にいた富所くんにパス。琉球の10番は鋭いパスを風間宏矢くんの足元に正確に通した。

ショートカウンターをさせてしまった事、相手を見ずに戻っている選手が何人かいた事、そしてやはり最大の要因はバイタルエリアを空けてしまう事だ。

ゾーンディフェンスではないので、早く押し込まれてしまうとバイタルエリアが空きやすい。僕が分析を始めた3年前、いや多分それ以前からある問題だが直らないので、そこは着手していないのだろう。

「ミドル打たれて入れられたら仕方なくね?」といった感じだろうか。この問題については諦めておいたほうが良いだろう。ただ、1失点目と同じだがここで上げた要因が重なって失点している。放置して要因を一つ一つ改善しないとまた失点する。何年前からか繰り返しているように。

その後63分に素晴らしいFW2人の抜け出しから大谷くんのクロスバー直撃のダイレクトボレーなどがあったが、琉球もゴール前での迫力が前半より強く、追い付く事は出来ず。

スタッツ

ハイライト

感想

琉球に関してはもう少し細かい原則がありそうだが、今回はこのくらいにして来シーズンの楽しみにしておこう。もちろんその為には残留せねばならんのだが。

金沢に関しては失点の要因は元々続いているものであるという事。選手が変わろうが問題はそのままなので、やはりマネジメントする側の問題だと改めて実感。5年間の積み重ねが「残留争い」という事になってしまったと言っても過言ではない。3年間毎節のように分析している私の実感だ。

ただ残り4試合、選手の能力を考えれば勝ち点12獲れる可能性は全然ある。人生を賭けた4試合、選手達には後悔の無いように臨めるよう心から祈りたい。




ツエーゲン金沢応援集団「RED TAG」運営費用としてありがたく使わせていただきます