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2020J2リーグ第34節 大宮アルディージャ VS ツエーゲン金沢 レビュー

書かないと思ったでしょ。書くよ。

1996年4月29日の新日本プロレス東京ドーム大会。「観戦記」となっているのは当時週刊プロレスは新日本から取材拒否を受けていた為である。プロレス雑誌がプロレス団体から取材を拒否される、それも最大手の新日本プロレス。しかし、戦場でもプロレスでもジャーナリズムはある。その時に大きなうねりとなっていたUWFインターとの対抗戦を無視する事はせず、写真を一枚も使わない「観戦記」として特別号を出した。24年経っても色褪せることの無い人生のトピックの一つである。

何故だろう。昨日、試合の事を一切書かず大宮戦の「観戦記」のようなものを書いたあとにこの事を思い出した。あの時、週刊ゴングを買えば写真付きの試合レビューが見られた。しかし買ってもいなければ立ち読みもしておらず週刊プロレスの観戦記を買った。ジャーナリズムの使命感に共鳴していたのかも知れない。ただ、僕はジャーナリズムの仕事もしていなければ、誰からも頼まれて書いていない。あるのはただ使命感。感じたままを残さなければという。しかし、僕の文章に誘導されなくていい。見て下さる方も感じたままで。それが僕の望む自由です。

スタメン

それぞれの課題

白井裕人

大宮戦 前方パス数 17本(13) 前方パス成功率 47.1%(53.8) 

水戸戦 前方パス数 23本(21) 前方パス成功率 47.8%(42.9)

北九州戦 前方パス数 27本(15) 前方パス成功率 37.0%(40.0)

岡山戦 前方パス数 15本(7) 前方パス成功率 66.7%(42.9)

千葉戦 前方パス数 11本(9) 前方パス成功率 27.3%(55.6)

北九州戦や水戸戦は金沢のボール支配率が低い試合でした。その為、押し込まれる時間が長くGKのパス数も増えています。カッコ内は前回対戦時のデータです。

ロングフィードに定評がある白井くんですが、最近そういう場面もあまり見受けられません。これは白井くんが悪いのではなく、前線の選手の動き出しに問題があるのですが。競り合い自体もあまり分が良くありません。ルカオさんというハイタワーがいるにも関わらず。以前に比べればセカンドボールを獲る意識はありますが、あまり競り合いやセカンドボールを獲る事に特化した練習は出来ていないでしょう。出来ていればもっと成功率は上がるはずです。笠原くんはもう少し高めです。

廣井友信

football-labさんからお借りしました、今節の守備ポイントです。守備ポイントの説明は以下の通りです。

もちろん、直接相手を阻止する事だけが仕事では無く、マークについたりコースを消したりする事も重要です。ですが、直接の貢献度が高くない事がデータでは示されています。ちなみに廣井くんが出場していて勝った試合をさかのぼると24節の甲府戦になりますが、その時の守備ポイントは1.75です(石尾 4.48)。

石尾崚雅

これは廣井くんと二人のシーンなのですが、21分2秒に黒川くんがボールを受け菊池くんが廣井くんと石尾くんに挟まれています。右から三門くん(?)が前に出てきていて、石尾くんは菊池くんを見ながら三門くんのほうに離れていきます。廣井くんはそれに気がつかずに黒川くんを止めに行きます。黒川くんが菊池くんにスルーパスを出しますが、菊池くんとタイミングが合わずピンチを逃れました。

失点シーンでも、石尾くんがマークしていた菊池くんがボールを受けに下がったところで菊池くんを大橋くんに渡すのですが、ゴールを決めた小島くんが前に出てきている際に杉浦恭平くんが小島くんを追うのを止めた(多分、恭平くんのゾーン外に出た為に、大橋くんが二人を見なければいけない状態に)。

これはヤナ将が言っているコーチングの部分だと思います。声を拾えている訳では無いので確信は出来ませんが、両方の場面で声を出して指摘し合ったり、オーバーなアクションで味方にピンチを伝えるような事は見受けられませんでした。金沢の誰もがスッと離れてスッとついていくように見受けられました。

この5連戦で11失点。0-6で磐田に敗れた時の5連戦が12失点でしたから次いで多い失点です。疲れもあると思います。たまに廣井・作田にしたらダメなのでしょうか。

ホドルフォ・長谷川

上の図はfootball labさんの出しているクロスが成功しているベスト30です。下川・窪田は試合で見る印象通りでランクインしていますが、ここに長谷川・ホドルフォの名前はありません。(ちなみに長谷川くん48位、ホドルフォさん104位)逆に昨シーズン金沢にいた沼田・小島・加藤がランクインしていて、クロスに関しては昨年より弱体化しています。

二人に共通するのはクロスを早く上げるタイミングです。相手が準備する前にクロスを上げようとしているのでしょうが、味方すら準備出来ていません。ちなみにfootball labさんではあまり低い位置(ミドルサード~ディフェンシブサード)でのクロスはクロスと定義していないようでパスに分類されています。パスのランキングでも長谷川くんは135位、ホドルフォさんは460位となっています。

さらに下の図はホドルフォさん、マッチアップした山田くん、右IHの小野くんのヒートマップです。

ホドルフォさんが攻撃方向へ若干行き過ぎている印象を受けます。その隙に裏へ入り込む山田くん。両軍ともに右サイドからの攻撃が多かったのですが金沢は右サイドからのビルドアップを好む為、大宮はホドルフォさんの裏を狙う為という印象でした。

大橋尚志

怪我による出場試合減で数値には現れにくいですが、ボールを狩り取る力は相変わらず高い大橋くん。しかし一方でパスの精度が昨年より落ちています。先ほどのfootball labさんのパスポイントの平均値も下がっているのですが、僕が気になるのがPAの10メートル手前くらいからFWに出されるフワッとしたパスです。大体、大橋くんはワンタッチでそのパスを出すのでタイミング的に相手に読まれやすくなっているのです。

本塚くんがボランチをやっていた頃は、かなり縦に出すパスが通っていたので、大橋くんが怪我から復帰してもスタメンは厳しいのではないかと思っていましたが、やはりボール奪取を買われているのでしょう。しかしカウンターの起点となるパスをよく相手に獲られるのを目にします。

藤村慶太

46分7秒に普段なら絶対にしないであろうパスミスをした藤村くん。金沢に来てから年1で決めているゴールも、大宮戦ではバーに嫌われお預けとなりました。アシストも去年と同じ6としていますし、ボール奪取は去年よりレベルアップしています。文句のつけようがないですが欲を言えば無双ドリブルが昨年より減っている事。守備のタスクは相手にもよるが去年より減少しているので、それを攻撃面に生かしたい。

下川陽太・本塚聖也

もはやSHとは呼べない位置取りで、下川くんに至っては逆サイドでボールタッチをしている。元々、前節群馬戦から試みられている事で、この動きをする為に下川くんはSHに、ホドルフォさんはSBで使われていたと思われる。しかし、本職がSBである下川くんと、本職がボランチである本塚くんには前線から距離のある場所(視野を広く持てる場所)でのクロスやロブパスを得意としている。しかし、二人を完全にサイドでは無く2列目のように振舞わせる事でFW・ボランチ・SBというあらゆるポジションのバイパス役となり、よりゴールに近い位置での決定的な仕事を期待されている。

大宮戦でいうと13分31秒。藤村くんからMF-DF間ハーフスペースでボールを受ける本塚くん。右足でトラップし左足で杉浦恭平くんに縦のパスを出す。高山くんの裏を取り抜け出した恭平くんがダイレクトシュート。惜しくも笠原くんに弾かれてしまうが、シンプルだけどリスクが少なくフィニッシュまで持っていける攻撃。

また、下川くんでは65分40秒。白井くんからのロングボールを西村くんとルカオさんが競り合う。セカンドボールを下川くんがキープ。西村くんと山越くんの間を抜ける恭平くんへ縦パス。思い切り倒されてPKかと思いきやノーファール。よくよく見ると下川くんがボールをキープする際にも同様のタックルが見られた為の相殺か。

しかし、デメリットも。ホドルフォさんがオーバーラップを仕掛ける事が多く、そこを使わざるを得ない攻撃になってしまうと、単調でしかも精度を欠いたフィニッシュになる。クロスの精度が高い下川くんのクロスを使う事が出来なくなってしまうのだ。

また、本塚くんは金沢左コーナーキックの流れから70分42秒に左足でシュートを放つがシュートコースを相手DFに消されシュートは枠外に。左足が効き足である本塚くんを右サイドに置く逆足配置には「質的優位」が必須条件であり、本塚くんの右足はまだその条件には当てはまらないと筆者は感じている。上記のシーンでは左足でトラップして右へとボールを動かしてからシュートコースを開けて右足でシュートする事が出来ればゴールを狙えた。

ルカオ

怖くないのだ。負傷欠場前の左右でボールをキープするフィジカルモンスターだった頃とは違い、前線でボールを待つターゲットに。余程足の状態がよろしく無いのか、大宮戦でも身体を入れられるとすぐにバランスを崩したり、相手に吹き飛ばされるシーンがあった。フル出場でシュート1本はエースFWと呼ぶには程遠い。

杉浦恭平

豊富な運動量で、藤村くんと同じくらいの広範囲をカバー。下川・本塚のところで触れたシーンのように裏への飛び出しからシュートを狙い、大宮の一番の脅威になった。前節の水戸戦でも2ゴールを挙げている事からも、今FW陣の中で一番調子が良い。今シーズンはすでに昨シーズンの28本を大きく上回る49本のシュートを放っている。そのぶん成功率は下がっているがチャンスを多く作っている事はさすがといえる。

山根永遠

群馬戦では「2列目」の二人&藤村とのポジションを入れ替え、光明を見せた山根くんだったが、今節は山根くんが入ってすぐに元塚→加藤の交代が。すると上図のように加藤くんに近づかないようなポジショニングに。もちろん指示があったものと思われるが、二人とも生きない結果となってしまった。

柳下正明

試合開始前から試合を構築するタイプの監督だとは良くわかっているが、それでもあれだけホドルフォさんの裏が狙われる事への修正、ビハインドにも関わらず2枚替えに止めた事、ルカオさんをフルで使う事、学生時代に経験したポジションだとはいえ練習で落とし込んでいないであろうタスクを要求する場所に加藤くんを投入した事、疑問が多く残る采配。特に本塚→加藤の交代はクラブの理念とサッカーが乖離している事を示した神経の通っていない交代。

何の話をしているかと思われるかもしれないが、監督のサッカーに基づいた理念・原則、もしくは理念・原則に基づいたサッカーをする事が大前提であって、そのプロセスがそれに則したものなら、たとえ負けても構わない。それが未来の金沢に繋がると思えるからだ。しかし、この交代には勝ちへのこだわりもなければ、未来につながるプロセスも感じられない、使われる選手の評価も下がる、プラスの要素が全くないものだった。だから私は言ったのだ。「挑戦よ、さようなら」と。

あと、一つだけ。見えないところで色々言ってもらっているらしいが、こちらからピッチ外の人達の有り様を指摘した覚えもなければ文句を言われる筋合いも無い。それこそが金沢のサッカーを取り巻く環境としての「弱さ」だと改めて痛感。それがわかっただけでも感謝である。

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