2020 J2リーグ第35節 ツエーゲン金沢 VS アルビレックス新潟 レビュー「結果より内容」
今日の試合を表現するとしたら、信じられない試合。これだけ悪運に恵まれた試合は記憶にありません。攻撃に関しては多くの決定的チャンスを作れていましたし、3得点できていました。一方、守備では悪運によって、最初の2失点が生まれました。その後は、われわれのミスが各失点につながってしまいました。攻撃において、決定的チャンスをたくさん作りながらも決め切れなかったことも、信じられません。
今後、われわれがしなければいけないのはいまの道を突き進み、攻撃はレベルアップすること。攻守のバランスが必要なので、守備の改善は今後必要になります。
(アルベルト・プッチ・オルトネダ監督の第3節試合後コメント)
日本で3試合目に喫したショックの敗戦。それからバルセロナの遺伝子は連敗を一度しかせず、コメントの通り守備を改善。得失点差は34節終了時で+10点。特にアウェーでは2敗しかしていないという強さ。シーズン中に色々なゴタゴタがあったが、それに引っ張られる事なく結果を出してきている。
昨年の金沢は34節終了時は同じく得失点差+10点で10位に位置していた。今年に当てはめると勝ち点50だったので7位となる。ほぼ今年の新潟と同じ。
金沢は勝ち点で去年より7少なく、得失点差は14点の差がある。残り少ない試合で来年へ繋げるために、群馬戦では勝利への執念を見せた。しかし大宮戦では順位がそう変わらない相手との大きな隔たりが見えたウノゼロだった。今節で見たかったのは結果よりも内容。内容が良い試合を続けていればおのずと結果もついてくる。
スタメン
金沢は長谷川・渡邊が契約上の問題で出場できない。その為、下川くんが28節千葉戦以来の右SBでの出場。そして大宮戦で裏を狙われ続けたホドルフォさんは連続スタメン。SHは左が本塚、右が島津と順足での起用となった。頼盛くんのスタメンも千葉戦以来。
そしてルカオさんの名前が無かった。前節、大宮の高山くんだったかに吹っ飛ばされていたが、よほど足の具合が悪いのだろうか。さらに西田のメグちゃんがヤナ将3か月理論に沿って復活。
新潟は早川→大本の変更のみ。渡邉新太くんが負傷欠場、ファビオ氏がさよならして鄭大世さんがファーストチョイスに君臨し4-2-3-1が怪我の光明で機能。高木くんの元々の足元の技術の高さに加え、本間くんのスピード、セレッソからレンタルの中島くんのテクニックと決定力、サッカーIQの高い島田くんのハードワークなどが噛み合ってきた。第3節で戦った相手とは全く別のチームだ。
やってきたことは何なのか
金沢のサッカーとはなにか。それを説明できる人が何人いるだろうか。「激しく襲い素早く仕留める」というキャッチフレーズがあるが、それを感じた敵チームは今年どれだけあっただろうか。最近の金沢のサッカーを観て僕でも説明に困る。
前線からの激しいプレスをかけボールを奪い獲る。それをする事を分かっているから対応されてしまう。どのやり方もサッカーにおいて絶対に有効だという事は無い。だから相手によって色々な武器を用意しておく。金沢にもそれがあったはずだ。
新潟の組織されたサッカー
新潟は金沢が前線からのプレスを仕掛けてくる躱し方をしっかり頭に入れてきた。金沢の2FWのどちらかがボールホルダーへアタックしにいく。もう片方は新潟のCH中島くんへのパスコースを切る。金沢のSH本塚・島津は舞行龍さんの両脇にいるマウロ・島田へプレスをかける。そうなると狙われるのがボランチの脇。前半の給水タイムまではここに縦パスが入りボールの前進を許していた。
給水タイム後、金沢はFWのプレスを止める。山根・加藤のFWはボランチへのパスコースを切り、SHの本塚・島津は新潟の両SBへとプレッシャーをかけに行く。新潟は攻撃時3-3-2-2(3-3-4)のような形になり、SBがピッチ幅を大きく使っていたからだ。しかし、その対応を見越してか、新潟は積極的にシンプルな縦パスを入れて金沢SBの裏を狙い、最悪でもCKを狙う。セットプレーからの得点が1/4を占めている新潟。
それと同時にビルドアップではディフェンシブサードからミドルサードにかけてはボールタッチを2つにまで限定し、中島くんがビボーテとしての役割をほぼ完璧にこなしてボールをコントロールしながら田上・堀米のインナーラップも利用して金沢のカウンターを阻止していた。
ただ、そんな中でも金沢にも何度か反撃のチャンスはあった。新潟は39失点の内10失点がクロスによるものだというデータが出ており、それも織り込み済みで身長も高くない山根・加藤の2トップのFWにしてSHに関しても右に頼盛くん、左に本塚くんという順足配置にしたものと思われた。要するにマウロ・舞行龍より早く動き出してアーリークロスで背後を取って仕留めるという「お得意」ともいえる手法。
しかし、そんな憶測をよそに金沢はカウンターで中央突破を図ろうとする。もちろん、惜しいシーンも前半では何度かあった。しかしカウンターでフィニッシュにまで持ち込んだシーンは無かった。新潟の守備時の4-2-3-1の陣形は中央を固める守り方で、攻撃時の3-3-2-2の3列目の3枚もSBがインナーラップして相手の攻撃に対してリスクマネジメントをしている事が多かった。
対してクロスは40分5秒の本塚くんのクロスを島津くんが頭で合わせたのみ。なんとこれが前半唯一のシュートであり、試合を通じて唯一成功したクロスとして認められたものとなる(クロス12本で成功1本、成功率8.3%)。
1失点目の3つの疑問
一つ目はマウロさんから縦にパスが入ってから、石尾くんがテセさんを視界から消してボールの前に出ている。と、いう事はテセさんが石尾くんの背後に入ったわけでは無いという事。それなのにボールを外に出さなかったのは何故だったのか。何にせよ判断に迷いが出ているのは、最近の石尾くんを見れば間違いない。
二つ目はテセさんにボールを奪われてから廣井くんがテセさんのところに行くまでの時間が掛かりすぎている。奪われて初めて、一度ゴール前を見て敵がいないのを確認してテセさんのほうへと移動している。これはカバーリングのカバーリングという概念「ペルムータ」が出来ていれば問題なく回避できた場面。廣井くんが躊躇なくテセさんにアタック出来るように、下川くんの声出しも必要だった。
そして三つ目、白井くんのポジショニングである。ボールが奪われるところまでは正しい位置にポジショニング出来ている。しかし白井くんから見てテセさんが右にボールを足先でかなり動かしているのに対して、白井くんは少し右に、しかも後ろに下がりぎみに構える。結果、ボールとゴールを結ぶ対角線の真ん中に白井くんがいないのだ。このポジショニングは致命的だ。白井くんは32歳。GKとして反応の良さだけで正GKを確保できるほど現実は甘くない。ポジショニングが良くなければGKとしての衰えは早くなる。
同点にした本塚の初ゴール
これは本塚くんのホドルフォさんの使い方やゴール前への意識の高さを賞賛したい。丁寧なほど足元を指差しワンツーに持ち込ませて、ホドルフォさんのグラウンダーのパスが通らなかったと見ると、すぐにゴール前に入りボールを奪取。
試合中にあんな嬉しそうな顔をしたのを見た事が無かったから、僕もすごくうれしかった。
しかし、すぐに後半の給水タイムがあり、再開後のプレーで初ゴールの喜びが無くなってしまった。
それは油断というかスペイン人監督の上手さというべきか。
先ほどまで上図だった布陣が給水タイムで下の図のように替わっていた。
下は本間くんのヒートマップだが、左サイドに散らばるボールタッチの点は給水タイム前まで、右サイドの点は給水タイム後と考えて良い。
完全に、右に移動した本間くんに金沢ディフェンス陣が引っ張られて2対5の状況にも関わらず、左から進入してくるゴメスくんのケアには行けていない。人数が足りているとの判断なのか、それとも守備のタスクはあまり要求されていないのか、頼盛くんが金子くんと同じような自陣への戻り方なのも気になる。
残り20分。何をしたのか。
上は大宮戦でのルカオさん、下は新潟戦での陸次樹くんのヒートマップ。陸次樹くんは若干右寄りではあるが、センターサークル付近でパスを受ける役割を負っていたであろう事が共通のタスクとして想像できる。
そして途中出場した二人のものも挙げておきたいが、映像で確認しても何をしようとしていたのかが良くわからない。共通するのは綺麗な斜めの意識だ。上が大宮戦での永遠くん、下が新潟戦での杉浦恭平くん。
とにかくどちらの試合でも戦況を変える事が出来ずに敗れた。
結果
ハイライト
試合後のコメントから
シュートチャンスがなければ仕方ないけど、あるのに打たない。打たなければ点数が取れない。自分たちのゴールに近いところで、負ければ失点するよねというところでやられていたら、それは失点する。勝ちたいという熱の違いなのか分からないが、俺とは違うし、相手の選手たちとの勝ちたいという気持ちにも違いはある。サッカーに限らず、戦いのところで相手に負けていたら勝負にならない。一人ひとりを見たら相手のほうが力がある選手が多い。負けてほしくないなというのはある。守備に関しては狙いを持ってボールを奪えているし、やっていることに関しては良いと思う。これが力の差かなと思う。(Jリーグ公式HPより抜粋)
上のリンクは昨年終盤の思いを綴ったレビューのようなものです。結局今とそう変わらない現状。試合の変化に対応できないチーム。個性を消して戦略を構築したが対応力がドンドン失われています。新潟戦でのクロス成功率は先ほど挙げましたが、シュートは4本のみ。しかもFWはだれもシュートを打てていません。勝ちたい気持ちが見えても勝てない。内容が良くなければ一度勝っても次に繋がりません。結果より内容。もう、今になって多くを望みません。鉛色の空からはまだ日差しも射してはいないのですから。
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