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「謝ったら死ぬ病」の治し方
1. 成長すると「謝る人」が少なくなっていく?
こどもの頃に、「悪いことをしたら相手に謝ろう」と大人から言われたことがあるでしょうか。
こどもの頃にケンカはつきものです。きっかけはおもちゃの取り合いだの、
冷蔵庫に残しておいたおやつを食べられてしまっただの、意外にささいなことだったりすると思います。
でもきっかけがどうあれ、一旦ケンカになってしまうと、不愉快な感じがお互いに続いてしまいます。
そうした不愉快なケンカ状態を解消するために、「謝る」っていうのが効果的なんだよと、
冷静になって相手の立場に立ったときに、「確かにこれは悪いことをしたかもしれないな」という感覚がわかったら、
そのことに対して素直に「謝る」という行動をとれば、その不愉快な状態は解消されるかもしれないよと、
経験を積んだ大人がアドバイスを送ってくれているんだと思います。
一度でも「謝られた」という経験がある人ならきっとわかると思いますが、
確かに「謝る」という行為を行う前と後とでは、「謝られた」側の気持ちは大きく変化するようなところがあるのではないでしょうか。
確かに「謝る」という行為には、「ありがとう」と同じように、世界を大きく変える力がありそうです。
ただ、不思議なことに、そんな大人の世界に入ってみると、
なんだか「謝る」人が少なくなっているようにも思えます。
あるいは「謝る」という行為を見たとしても、表面的というか、薄っぺらいというか、
言葉では謝っているけど、なんだかその気持ちが素直に伝わってこないような場面も多いと感じるのは気のせいでしょうか。
2. お医者さんはなかなか謝ってくれない
それどころか、「謝ったら死ぬ病」なんて言葉も聞くようになりました。
私は医師ですが、医師は特にそんな傾向が強いように感じています。
たとえば認知症の新しい薬は、副作用も大きくて使うのが難しい薬のようですが、
その薬を使って、もしも患者さんの状態が副作用で悪くなってしまったとしたら、普通は「謝ってほしい」ですよね。
でも多くのお医者さんはこう言うと思います。
”残念ながら病気が進行してしまったようです。副作用を抑える薬を出すので安心して下さいね”と。
多くの患者さんは病気のことは複雑でわからないと思っているから、
お医者さんからそう言われると、そう言うものなのかなと思ってしまうかもしれません。
でも薬を使い始めて起こったことなら、薬の副作用の可能性も疑うべきですよね。病気の進行と断定してもいいものなのでしょうか。
あるいは薬の副作用を疑って、薬を中断してくれるお医者さんもいるかもしれません。
ただそのお医者さんはお医者さんで、こう言うかもしれません。
”残念ながら薬の副作用が出てしまいました。別の治療に切り替えましょう”と。
…これは、謝ってくれてはいないですよね。
まるでどうしても避けることができない自然災害のような出来事であったかのような言い方にも聞こえます。
私の知る限り、お医者さんの中で自分の出した薬の副作用を謝ってくれる人はすごく少ないと思います。
もしそういうお医者さんがいたら、その人はとても良いお医者さんだと思います。大事にしてほしいと思います。
実際には謝るどころか、副作用の存在にさえ気づかず、老化や病気のせいだと考えているお医者さんが多いと思います。
その結果、どうなるかといえば、どんどん出される薬が増えていくということになっていくわけです。
もし私の感覚が正しければ、お医者さんはみんな「謝ったら死ぬ病」にかかってしまっているかのように思えます。なぜなのでしょうか。
3. 「謝ったら死ぬ病」に関わると死ぬほど辛い
あくまでも私の予想なので、参考程度に聞いてほしいのですが、
自分に自信を持っている人は「謝ったら死ぬ病」にかかりがちな気がします。
自分に自信があるからこそ、ケンカになった時も「自分が間違っている」とか「相手に悪いことをしたかもしれない」とは思いにくいのだと思うのです。
一般的には自信を持つことは良いこととされていますよね。
最近は「自己肯定感」なんて言葉もよく聞くようになりました。クヨクヨしないで、自分に自信を持っていきましょうよ、というわけです。
もちろん、自信を持つこと自体は悪いことではないと思います。しかし何事にも限度というものがあると思います。
いわゆる「自信過剰」な状態になると、どんどん「謝る」ことが難しくなっていくように思うのです。
自信過剰であっても、本当に相手に対して悪いことをしていないのであれば、謝る必要はないのかもしれません。
でも自信過剰であること自体が、相手に悪いことをしているかどうかを気づきにくくさせている側面があるという構造は知っておいて損はないかもしれません。
病気を治す立場のお医者さんの中で「謝ったら死ぬ病」が蔓延しているのだとしたら、とても皮肉な話です。
どうすれば、この「謝ったら死ぬ病」を治すことができるでしょうか。
もしも私の予想が合っているのだとしたら、
自信を持つことと同時に、自分は不完全な存在であるという感覚を持っておくことが、
「謝ったら死ぬ病」の予防にも治療にも役に立ってくれるかもしれません。
逆に言えば、自分は完全無欠だと信じて疑わない人に対して「謝る」ことを要求してしまうと、
それは相手にとって「死ぬほど嫌なこと」だと受け止められてしまうのかもしれませんね。
それほど嫌なことになる前に、
自分の不完全性を認めながら、相手の立場を想像しつつ、
もしも相手に悪いことをしたら素直に謝る心を保ちながら、
一方で自分への自信も適度に持てるように、
生きていきたいものです。
でも「謝ったら死ぬ病」にかかった人に悪いことをされて、
謝られない側の立場になった人だって、死ぬほど辛いわけです。
そんな人と出会ってしまったら、そんな綺麗事だけでは生きていけないかもしれません。
「謝ったら死ぬ病」を治すことができるのは、自分自身しかいないのかもしれません。
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