【保護者のための進路指導部】子どもと進路の話をするときの意識と声がけ
職業柄、高校へ出向いて保護者の皆さまに進路関連の話をしたり、学校イベントの保護者説明会で話をしたりと、高校生の子を持つ保護者の方に接する機会がたくさんあります。
その経験の中で抱く印象は、子どもとの「接し方」について不安や心配を抱かれる方が多いということ。
とはいえ、これは今も昔も変わらないことで、子供の未来を想う親心以外の何物でもないと思います。
ここでは、データを参照しながら、「高校生の子どもと一緒に進路を考えるときに保護者の方に意識して欲しいこと」を考えてみます。
なお、ここで言う「接し方」をもう少し細かく表現すれば、
・何を話したらいいか分からない、話題が見つからない
・話題があっても広がらない、話題を広げる知識がない
・(進路の)アドバイスができるほどの知識がない
・今の大学や専門学校などの入試事情が分からない
・こどもが話をする気になってくれない
など、近年聞こえてくる「あるある」を中心に紐解こうと思います。
保護者に聞いた「受験から入学までの間で困ったことや悩んだこと」とは?
新入生の保護者を対象に聞いた調査結果があります。
そのお題は「受験から入学までの間で困ったことや悩んだこと」です。
2022年/2023年/2024年の3ヵ年比較が示されており、中でも2024年に伸びている回答に注目してみると次の3つが挙げられます。
1.子どもの体調や精神面のこと
2.受験方法の選び方
3.受験・入学手続きのスケジュール管理
まるでマネージャーそのものです。
これらはどれも「支え方」に意識が向いているようです。
あれもこれもサポートしたくなるのが親心。
わかります。
高校生に聞いた「進路の話をするときに保護者が良く使う言葉」とは?
では、子どもは親をどう見ているのでしょうか?
高校生に聞いた「進路の話をするときに保護者が良く使う言葉」におけるダントツ1位は
自分の好きなことをしなさい、やりたいことをしなさい
第11回「高校生と保護者の進路に関する意識調査」2023年報告書
しかも2019:51.9%→2021:58.6%→2023:59.7%と、時代の流れと共に子どもの自由な選択に寄り添い応援する保護者が増えているようです。
ですが、第2位~4位を見てみると、
・自分でよく考えなさい
・勉強しなさい
・自分で決めなさい
第11回「高校生と保護者の進路に関する意識調査」2023年報告書
と厳しい指導もあるようです。
断っておきますが、これはあくまで【子ども目線】です。
保護者の方は【善かれ】と思っての愛のある言葉であると思っています。
というところまでは、いつの時代も耳にしそうな「あるある」ですが、気になるのは第5位のこちらです。
頑張れ、あきらめるな、やればできるよ
第11回「高校生と保護者の進路に関する意識調査」2023年報告書
これは子どもとの意識ギャップにつながる強烈ワードで、この言葉の背景にありがちなのが
「自分の頃は●●だった」
「自分はこれぐらいやってた/できた」
という意識です。
これを伝えることの目的は何でしょうか?
これを伝えることて、子どもの意識変容を促すことができるのでしょうか?
子どもにしてみれば、昔の情報をインプットすることにほとんど興味がないかもしれません。
温故知新とは言えど、昔と今で異なる価値観を生きる子どもたちにとって、その情報や知識の生かしどころがわからなければ、子どもたちはただ困るだけだと思います。
イマドキの子どもたち事情
今の子どもたちと接していて感じることは、とても慎重で、リスクヘッジ意識が強く、意志決定に躊躇し、失敗したくないと思う傾向が強いように思います。
また、自己肯定感や自己効力感が満たされない、あるいは不足しているような印象も。
そんな子供たちにとって、
・自分でよく考えなさい
・勉強しなさい
・自分で決めなさい
という言葉は子どもたちを追い詰める要因になったり、あるいはそれを加速させることもあるでしょう。
「接し方」という点においては、私たち親が言いたいことをグッとこらえて、まずはお子さまが進路に関してどんな悩みや不安を抱えているかを傾聴することが第一歩なのかもしれません。
子どもへの声の掛け方
そんな時の声の掛け方は、
「進路どうするの?」
ではなく、
行ってみたい学校ある?
やってみたい仕事ある?
と聞いてみて下さい。
ある人なら「ある」と答えるでしょうし、ない人なら「ない」と答えるでしょう。
「そんなの当たり前だろ!」と怒られるかもしれませんが、Yes/Noで回答できる、これくらいのやり取りで良いと思います。
大事なことは、子どもたちの中に意識があるのかないのかを把握することです。
「ある」なら、「何?何?聞かせて!」で先に進みます。
「ない」なら、「じゃあ一緒に探してみようか!」で先に進みます。
いずれも、先に進みます。
進む方向が違うだけです。
あるのか、ないのか。
それすら分からなければ、この先どこに進んだらいいかわかりません。
子どもを導きたくでも、導く方向性が見えてきません。
だから、多くの保護者が次のような気持ちを抱くのだと思います。
・何を話したらいいか分からない、話題が見つからない
ちなみに、「どうするの?」という問をされると、人は”何か具体的な回答をしなきゃ”、”答えられないと怒られる”という気持ちになりませんか?
私なら心の中で”どうするの?って言われても、そんなのわからないよ!”と思います。
仕事において似たような言葉で詰め寄られた経験を持つ方いませんか?
そんなとき、辛くなかったですか?
「答えられないと怒られる」という【恐怖心】です。
そりゃ、話すのが嫌になる気持ちも分かります。
だから、保護者目線になると次のような言葉が出てくるのだと思います。
・こどもが話をする気になってくれない
なぜ話す気になってくれないのでしょうか?
本当に話す気がないのか?それとも、話したくないのか?
その本質的な理由と向き合ってみるのもいいかもしれません。
さて、今回は「接し方」を深掘ってみました。
ご家庭の数だけコミュニケーションの在り方が存在しますので、アプローチも多様です。
そして、世の中にはこの手の記事が無数に存在します。
そんな中で、この記事が誰かの後押しになることを願って。