シリーズ2 短編小説1-8
8話 手術後
でも、佳奈の願いは、叶わなかった。
佳奈の目の包帯もとれ、生活も普通に戻るにつれて、
フレデリックの酒も、徐々に、もとのように増えていった。
佳奈の目は、緊急のオペのお陰で、何もなかったかのように、
元通りになった。
佳奈は、自分の人生を再び、考え始めていた。
アル中に関しても、本を読み漁った。
そして、フレデリックのアル中は、佳奈にはどうしようもできない、
と理解できるようになっていた。
ずっと心配しながらも、陰で支えていた佳奈の母親が、とうとう、
しびれを切らした。
「もういい加減に帰ってきなさい」 と言って、飛行機の切符を
佳奈に送ってきた。
それで、佳奈は帰国した。
すべてを忘れ、日本で新たな生活を始めようと決めた。
連日の電話責めにあいながらも、佳奈は、かたくなに、
フランスへ戻ることを拒んだ。
すると、今度は、彼が、日本に来る、と言い出した。
「日本で同じ系列のホテルに勤められるかもしれない。
とりあえず観光で日本に行って、様子をみたい」 と言ってきた。
佳奈は、かたくなに、それも拒んだ。
「私も家族もあなたを受入れられない」 とつっぱね、
長い手紙を書いて送った。
それでも、彼の執拗な電話攻撃が続いた。
佳奈は、徐々に、神経がやられていくのを感じていた。
自分の行動の浅はかさ、怖いもの知らずの無鉄砲さ。
世間知らずの馬鹿さ加減、
そして連日鳴り響く電話に、心が参っていた。
佳奈の母親が心配して、色々調べた結果、
縁切りの占い師さんがいるという情報を手に入れた。
そして、佳奈は、そこへ行った。
その占い師さんは、
「本当にきれいさっぱり縁が切れますよ、それで良いんですね?」
と、念を押してきた。
「お願いします。本当に、ぱっさりと縁を断ちたいんです」
それから、3年。。。
縁きりの占い師さんのお陰で、
佳奈は新しい人生を歩み始めることができた。
たまには、パリでの生活を思い出す。
楽しいことも数えきれないほど、あった。
それまで経験したこととは、まるで違った人生も味わうことができた。
夢見ていたパリの生活も送れた。
公園のベンチに腰掛けて、スケッチする街並みは、本当にきれいだった。
この思い出は、大切に取っておこうと、佳奈は心に決めていた。
「もう、二度と会うことはないだろう。
フレデリック、お酒をやめて幸せになってね」 と、願った。
5月の爽やかな風が吹いていた。
これで、シリーズ2の短編小説は終わりにします。
いつか、この小説を1本にして、創作大賞に応募出来たらいいな、と思っています。
みなさま 今後も、応援どうぞ宜しくお願い致します。