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ジェトロ 中国営業秘密セミナー Q&A ダイジェスト

前回の続きです。8月5日に開催された、ジェトロの営業秘密漏えい対策セミナーの質疑応答コーナーのダイジェストです。

4 海外では、取引相手と信頼関係を築くのは容易でないと感じます。取引前に注意すべきことはありますか?

回答:中国の場合、営業秘密保護の問題もそうですが、それ以前に、取引先の不払い、支払い遅延などの契約違反が非常に多いです。このため、取引前に相手方の信用調査を行うことをお勧めしています。
具体的には、経営状況はもちろんですが、訴訟情報や過去の行政処罰などにも合わせて確認し、相手方のコンプライアンス意識等についてのネガティブチェックしておくと良いと思います。
また、取引の内容にもよりますが、例えば、製造委託を検討する場合には、委託先候補の営業秘密管理体制を、セミナーでお話した「チェックシート」
(下記「中国マニュアル」P.33~35)https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/besshireiwa.pdf
に沿って確認するなどして、営業秘密を開示するにふさわしい相手かを確認することも考えられます。
なお、これに関して、逆に、中国顧客が、監査と称して日系企業の工場に立ち入り、携帯電話で工場内部の動画を撮影するなどの事例が実際に報告されています。契約上根拠のない監査は断ること、やむを得ず監査を受け入れる場合であっても、携帯電話の持ち込みは禁止する等、社内のルールに従って貰うことを前提とすること、また、工場見学や監査の動線を決めておき、監査の際には、自社の営業秘密は目隠し対応する等の準備事項を決めておくこと、などが必要だと思います。

5 監視カメラの設置等は、営業秘密保護にどの程度有効でしょうか?

回答:監視カメラの設置等は、実際に漏えいが発生した時の、証拠確保の手段として位置づけられます。それ自体で漏えい、盗用を物理的に防止できるわけではありませんが、監視されていることを周知させ、営業秘密の盗用を心理的に抑止する、という効果は、ある程度期待できると思います。ちなみに、中国では、会社備品、材料の盗難等の事例も多く、実際に監視カメラの映像が決め手となった事例も少なくないようです。
ただ、セミナー本編の最後のスライドで触れたのですが、監視カメラ等の設置(以下のスライドで番号32に該当)は、

チェック項目の分類

どちらかというと、管理強化のための措置であり、まずは、物理的に営業秘密の漏えいを防ぐための、「接近の制御」や「持出しの困難化」関連の措置をしっかりと対応する、ということが重要だと思います。

6 中国で、副総経理を中途採用することを検討しています。留意点はありますか?

回答:中国では、転職時・退職時の営業秘密漏えい事例が目立って多いです。このため、自社の従業員の退職時には、退職後も秘密保持義務を課すこと、また、必要に応じて競業避止義務を課すことが重要、ということをお話していますが、中途採用時には、逆に、前職場にて、このような義務を課されている可能性(副総経理レベルの人材になると、競業避止義務を課されている可能性も含めて)がかなり高いです。
したがって、入社時には、競業避止義務を課されていない、又は、それに違反していないことの確認、誓約をとることが必要です。
また、これは任意提出になりますが、退職理由が記載された退職証明書の提出を求めることも一案です。懲戒解雇された場合は、当然、提出できないでしょうし、「労働者が業務に耐えられなかった」等記載されるケースもあるようです。
ちなみに、競業避止義務を課す場合、当該退職者に補償金を支払う必要があるため、実際に競業避止義務を課すケースはあまり多くないかもしれませんし、日系企業の場合、誓約書を提出させたらそれで終わり、ということも多いのではないかと思います。この辺りは逆に、中国企業の方が徹底しているかもしれません。競業避止義務を課した退職者が本当にこれを遵守しているのか、調査会社を使って調べることも珍しくないようです。

7 営業秘密侵害についての時効を教えてください。

回答:民事の訴訟時効は3年です(民法典188条)。
刑事については、営業秘密侵害罪の法定最高刑が10年となるので、公訴時効は15年となります(刑法219条、87条)。


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