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官能小説 秘花は妖しくからみ合う 19 隣人
これまでの話は、こちらのマガジンにまとめてあります。
***
里奈が祐一と会った、その翌日の夜。
マンションの部屋でひとりくつろいでいると、インターホンが鳴った。
誰だろう?
のぞき窓から外をうかがうと、一人の女性が立っていた。
しかし、女性の顔に見覚えはなかった。
怪しい人でもなさそうなので、とりあえずドアを開けた。
「こんばんは。いきなりですみません」
30歳くらいのその女性は、ぺこりと頭を下げた。
黒髪をひとつに束ね、カットソーにジーンズというラフな格好である。
「昨日、隣の部屋に引っ越してきました。田中といいます」
女性は顔を上げ、人懐こい笑みを浮かべた。
里奈は、息をのんだ。
女優かモデルなのかと思うほど、その女性は美人であった。
「昨日の夜もうかがったんですけど、お留守だったみたいで。とりあえず、引っ越しのご挨拶に」
田中と名乗った女性は、きれいに包装された小箱を里奈に手渡した。
「ごていねいに、ありがとうございます」
「女の気ままな一人暮らしなので、よかったら仲良くしてくださいね」
女性は、花がほころぶような笑顔を見せる。
里奈は、思わず見とれてしまった。
「私も一人暮らしなんです。こちらこそ、よろしくお願いします」
同性ながら、里奈はドキッとした。
その魅力に引き込まれていくような、そんな感じがした。
「では、失礼します」
女性はふたたび頭を下げ、隣の部屋に戻っていった。
部屋へと戻り、小箱の包みを開く。
中身は、高級チョコレートだった。
熱いコーヒーを淹れ、チョコレートを口に含む。
上品な甘みが、口の中に広がった。
趣味の良い方なんだわ…
里奈は、憧れにも似た気持ちを抱いていた。
この女性こそが、祐一の妻・美知恵であることなど、まったく気づいていなかった。
***
挿絵は伊集院秀麿先生の描きおろしです。
ありがとうございます。
ひょんなことから、伊集院先生に挿絵を描いていただけることになったのですが…
毎回イメージがドンピシャすぎて、驚いております。
伊集院先生は、多岐にわたるジャンルのnoteを書いておられます。
ここに、尊敬の念をこめて、伊集院秀麿先生をご紹介させていただきます。
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