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官能小説 秘花は妖しくからみ合う 2 課長と秘書
このシリーズは、こちらのマガジンにまとめてあります。
***
さかのぼること、1日前。
長尾祐一は、職場の上司である田中、そして秘書課の浅岡里奈とともに、新幹線に乗っていた。
この日から、1泊2日の出張である。
出張の内容は、関西での得意先回りと接待。
宴席の花に、という理由で秘書課の浅岡里奈も同行したというわけである。
浅岡里奈は、今年で26歳になる。
入社4年目で、秘書としての実力には少々疑問があるが、見た目は文句なしだった。
軽くカラーリングしたセミロングの巻き髪、ちょっとあどけなさの残る愛らしい顔だち。
小柄なボディは意外とグラマーらしく、スーツを着ていても胸の盛り上がりが見てとれる。
おっとりした性格で、男性社員からの人気も高い里奈だが、これまで浮いた話は聞いたことがなかった。
その里奈が、新幹線で祐一の隣に座っていた。
「美知恵とはまた違った魅力だよなぁ…」
と、祐一は常々感じていた。
今年30歳になる美知恵は、どちらかといえば「才女」タイプだ。
結婚を機に26歳で大手保険会社を辞めたが、ゆくゆくは管理職とも期待された人材だった。
見た目もすらりと背が高く、パンツスーツに黒髪をきっちりまとめ上げた姿は、まさにキャリアウーマンのそれだった。
美知恵とはお見合いだったが、颯爽(さっそう)とした姿に一目ぼれしたのは祐一である。
美知恵が「正統派美女」なら、里奈は「守ってあげたくなる可愛さ」だと祐一は思った。
その里奈が、ウトウトしながら祐一にもたれかかってきた。
時計を見ると、針は午前10時を指していた。
9時10分に東京駅を出発したのぞみは、11時51分に新神戸駅に到着する。
まだしばらく、このままでいいか。
微笑ましいような、ちょっと嬉しいような感覚を味わいながら、祐一は里奈の顔をながめていた。
部長である田中は、前列の席に座っている。
もしこの光景を見たとしても、特に何も思わないだろう。
可愛い女の子にもたれられるのは、悪い気分ではない。
新幹線は、定刻どおり新神戸駅に到着した。
到着する少し前に、里奈は目覚めていた。
「課長、すみません」
と、少し照れ気味で謝ったが、むしろこちらは嬉しかった、と祐一は思った。
神戸周辺の得意先回りは、順調に終了した。
あとは宴席だけである。
この日の接待は、神戸三宮にある料亭で行われた。
こちらからは部長の田中、祐一、秘書課の里奈。
接待の相手である地元の大手ゼネコンからは、副社長と専務が来ていた。
計4人で、宴会は始まった。
この料亭は、地元でも名の通った店らしく、贅を尽くした料理が次々と運ばれてくる。
天然ふぐのジュレに始まり、マグロやウニの刺身盛り合わせ、てっちり鍋、但馬牛サーロインステーキ…
それぞれ酒も進み、里奈もお酌をしたりで大いに盛り上がった。
ビジネスの取引もうまく進み、接待は成功のうちに終わった。
この日の宿は、料亭のすぐ近くにあるビジネスホテルだった。
同じ階のシングル3室に、それぞれ祐一、里奈、田中がチェックインした。
まだ新しいホテルらしく、部屋は清潔でアメニティも充実している。
先ほどの宴会で軽く酔った祐一は、ユニットバスでシャワーを浴びた。
ホテルの名前が入ったナイトウェアを身に着け、ふとスマートフォンを見るとLINEの通知が入っている。
見ると、里奈からのメッセージのようだ。
「さっきの宴会では、あまりお酒を飲めませんでした。飲み足りないので、一緒に飲んでいただけませんか?」
というメッセージと、ホテルの自動販売機で買ったらしい缶チューハイの画像が表示されている。
どうやら、近くの居酒屋に行こうかというわけではなく、部屋で飲もうということらしい。
一瞬迷ったが、里奈と酒を飲むなら悪くはない。
出張先だし、やましいことはない、と祐一は心を決めた。
OKの返事を送ると、数分後に里奈が祐一の部屋にやってきた。
手には、数本の缶チューハイが入った袋をぶら下げている。
彼女もシャワーを浴びたらしく、祐一と同じナイトウェアを身にまとっていた。
ガウンタイプのナイトウェアの裾からのぞく白い素足が、妙に艶めかしい。
「課長もそんなに飲んでなかったでしょ?私、氷取ってきますね」
と言って里奈は、いったん部屋を出た。
ホテルの廊下に、製氷機があるのだ。
製氷機備え付けのプラカップに氷を詰めて、里奈が戻ってきた。
袋から2本の缶チューハイを取り出し、残りの3本を冷蔵庫に入れる。
ということは、この部屋に長居するつもりなのか?と祐一は思ったが、口には出さなかった。
「カンパーイ」
ささやかな飲み会が始まった。
部屋の小さなテーブルにカップを置き、里奈は備え付けのソファ、祐一はベッドに腰をかけた。
里奈は、早いペースで缶チューハイを飲んでいた。
ただ、もともと酒が好きというわけではないのだろう。
酒を飲み始めて間もなく、里奈の頬は紅潮し始めた。
「ねぇ、課長ってご結婚されてるんですよね?奥さんってどんな感じの方なんですか?」
カップに2杯目を注ぎながら、里奈が問う。
「ん?うちの奥さん?」
「課長はイケメンだから、奥さんも美人なんじゃないですかぁ?」
どうやら里奈は、すでに酔ってしまっているようだ。
普段は、他人のプライベートなど気にする女性ではないのに。
「うちの奥さんかぁ…そうだな」
そこまで言って、祐一もチューハイをグビリとあおった。
「美人であることは確かだよ。国立大の出身だから頭もいいし、家事も完璧。あれ以上の奥さんはいないだろうね」
これは、祐一の正直な感想だった。
美知恵は、女性としては完璧だと素直に思っている。
「ね、奥さんの写真とかないんですかぁ~?」
言いながら、里奈はソファから立ち上がり、祐一の隣に腰を掛ける。
「うちの奥さんの画像?んー、あるかなぁ…」
かたわらに置いていたスマートフォンを手に取り、美知恵の画像を探してみる。
「ね、ないですか?見たいですぅ~」
画面をのぞき込むように、祐一の隣に座る里奈が体を寄せてくる。
その気はなかったが、ナイトウェアの襟元からのぞく胸の谷間が、視界に入った。
ゴクッ…
祐一は、思わず生唾を飲み込んだ。
里奈が着ているナイトウェアの、一番上のボタンが外れている。
そういえばさっき、「暑い」と言って自分で外していたんだっけ…
結局、美知恵の画像は見つからなかった。
少し前に、スマホの機種を変更したからだ。
「課長~、私酔っちゃいました。アハハ」
里奈が、さらに体をすり寄せてくる。
ナイトウェアがずれ、バストの上半分がちらりとのぞいた。
スーツを着ていても予想できた胸のふくらみは、思った以上のものだった。
このバストは、片手では持ち切れないだろうな…と祐一が考えた時。
祐一の股間が、ぴくりと反応した。
「ねぇ、私入社した時から、課長のこと好きだったんですよ~」
鼻にかかった声で、里奈が告白する。
「でも、課長は早くにご結婚されてたから、私は告白できなかったんですぅ」
酔っているのか、とうとう里奈が祐一に抱きついてきた。
豊かなふくらみの感触が、体に伝わってくる。
ビクン…
股間が次第に熱くなるのを、祐一は感じていた。
***
挿絵は、伊集院秀麿先生にご提供いただきました。
前回に引き続き、ありがとうございます!!
思い描いていた里奈のイメージにピッタリだったんで、ビックリしました。
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