AI以前を振り返り、これからの技術を考える ~世界を変えたiPhoneとクラウド
こんにちは、ただしです。
オムライス探索家兼エンジニアとして、アプリ開発を行っています。
以前から考えていたこと、これからの技術革新について考えていきたいと思います。
クラウドのはじまり
次のコメントは、Googleの当時CEOであるエリック・シュミットが、最初にクラウドコンピューティングという言葉を今の意味で使ったカンファレンスでのメッセージです。
私がこのメッセージを真に理解したのは、5年後の2012年でした。
iPhoneの衝撃
2007年1月、米国でiPhoneが登場。それは熱狂によって迎えられ、スティーブジョブズにより電話の再発明として喧伝された。
それはたった3年で9000万台という出荷台数を記録、携帯電話のマーケットに革命を起こし、世界初の時価総額一兆ドルを超える企業が出現する原動力となった。
「iPhoneに技術革新はない」 というのが当時の、特に自分も含めた日本人の一般的な見方だった。本当に阿保である。
以下は当時の記事から引用したものである。
このように、技術的には取るに足らないプロダクトであるとAppleの競合他社の多くが静観していた。デザインが良くて、使いやすい、ただそれだけのデバイスであるとみんなが見ていた。(教訓:世界は自分が見たいようにしか見えない)
たしかに、初代iPhoneを携帯電話としてみた場合には、欠けているものがたくさんあった。
物理キーが無いなんてあり得ないし、落とすと簡単に壊れたり、水に弱かったりした。他のデバイスでは標準装備されていたFelica機能やデジカメレベルのカメラ、PCなど外部デバイスに接続したり容量を拡張したりするための豊富なインターフェースなど、多くのものが存在しなかった。
確かに取るに足らないデバイスであったように見える。当時競合すると考えられていた他社のスマートフォンと比較しても、携帯電話として見た場合に、機能や性能はむしろ劣っていたかも知れない。
しかし、そのデバイスが持っていた他製品とはかけ離れていた特長は、そのハードウェアそのものが、冒頭で挙げたエリック・シュミットの言う、”The right kind of browser” を完全に実現するためのものであったことである。つまり、クラウド・コンピューティングへの入り口が、iPhoneがもたらした大型のタッチインターフェースだったのである。
その頃、スマートフォンにカテゴライズされるモバイルデバイスは、Blackberryを始め、NOKIAやMotorola、日本メーカーでもi-mode端末としてのフィーチャーフォンなど数多く存在していた。それぞれがその技術レベルを競っていた。
しかし、iPhoneが作り出した大型スクリーンとタッチインターフェースがクラウドにアクセスする際の標準的インターフェースとなり、結果としてiPhoneとそのクローンであるGoogle Androidだけが、現在のスマートフォンとして生き残ったのである。
クラウドのキラーアプリとしてのGoogle MapやFacebook、Instagram、Twitter、Amazon、その他のあらゆるクラウドサービスが、iPhoneに最適化することで飛躍的に使い安くなり、活用範囲が広がっていった。
対して、クラウドコンピューティングの世界はどう変わったのか。
iPhoneが登場して急速に普及した結果、クラウドへのアクセスが飛躍的に増大した。そこでの大量のトラフィックをリアルタイムに処理する必要性に迫られたため、分散コンピューティングによるスケールアウトといった研究開発が急速に進展し、クラウドは大きく進化していったのである。
クラウドの入り口としてiPhoneが利用され、クラウドはますます利用範囲を拡大していった。それが相乗効果を生み、iPhoneはますます利用範囲を広げていった。そういった相互作用が、たった数年でiPhoneをコンピュータの主役にしていった。
取るに足らない幼稚なコンピュータであったiPhoneは、ムーアの法則によってその性能を指数関数的に高めていき、今やノートPCやMacbookなどと同等の性能を持つようになっている。
クラウドコンピューティングへの窓にしか過ぎなかったiPhoneは、CPU性能の向上、大容量メモリの搭載、高度な画像処理機能やAIチップの装備などによって、いまやPCを超える機能を持つコンピュータとなり、徐々にクラウドコンピューティングの一部として、それに融合しつつある。
完全な5Gネットワークが普及すれば、さらに高速なネットワークに常時接続され、スマートフォンは完全にクラウドと一体化し、クラウドを超えるクラウド、スーパークラウドが出現するだろう。
クラウド化の進展
もはや企業内のオンプレミスのコンピュータは消失し、全てはクラウドに集約されていく。物理的なコンピュータという存在は身の回りから消滅し、より抽象度の高いSaaSに移っていく。
クラウドにはあらゆるデータサービスとコンピューティングアーキテクチャが、さまざまなベンダーによって提供され、ユーザーはクラウドにデータを蓄積していく。
ディープ・ラーニングにより進化した人工知能(AI)は、人間と機械の中間にある代理人的な存在として、さまざまなアーキテクチャを持って実装され、クラウドの中でもiPhoneの中でもリアルな存在となる。AIはクラウドにあるデータを取り入れながら成長し、人の意思決定を代替していく。これが第4次産業革命で言う、究極の自動化を実現するインフラとなるのである。
ビジネスや産業を含む、あらゆる人の活動は、iPhoneを通じてクラウドと一体化し、人と人、人と機械、機械と機械を繋いでいく。これが究極のコネクティビティである。この流れは急速に進展し、数年後にはiPhoneのような、新たなシンボリックなプロダクトが出現するだろう。これは予言である。
ビジネスチャンス
技術革新は常に新しいビジネスチャンスを生む。コンピュータの世界は約12年周期で大きな技術的転換点を迎え、それを象徴するプロダクトが生まれる。
1971年 マイクロプロセッサ (Intel 4004)
1981/1984年 パーソナルコンピュータ (IBM-PC/Macintosh)
1995年 インターネット (Windows 95)
2007年 クラウドコンピューティング (iPhone/AWS/Twitter)
2016/2022年 ディープラーニング (Deep Mind Alpha Go/ChatGPT)
iPhoneの出現によるクラド・コンピューティングの普及は、2007年前後が区切りとなる。直近では2019年前後からのディープラーニングの実用化とAIの普及である。次は2031年前後になるはずであるが、その萌芽はもうすでに出てきているはずだ。
私は次の進化はAIの普及がドライブして、ブレイクスルーが起こると考えているが、今の所は何が起こるかは予想がつかない。
クラウドコンピューティングを構成している、データサービスとアーキテクチャを提供するベンダーは数多くひしめき合っており、さまざまなレイヤーで新興企業が生まれている。今の所、生成AIはその中に埋もれているように見える。
まだまだAIによる革新は、それ以前のネットやクラウドのように、プラットフォーム化に至っていない。単なる便利ツールとしての立ち位置にしかなっていない。しかし、他のプロダクトも当初はそうだった。気が付けば世界を変えていた、それが革新であり、渦中にあると気付くことは出来ない。
あと1年で、自分を含めた皆が何かに気付く、そんな気がする。
参考文献
Google Press Center; August 9, 2006. Search Engine Strategies Conference
Extreme automation and connectivity: The global, regional, and investment implications of the Fourth Industrial Revolution; UBS White Paper for the World Economic Forum Annual Meeting 2016.
The Third Wave; 1980. Alvin Toffler.
第四次産業革命 クラウス・シュワブ
スティーブ・ジョブズ ウォルター・アイザックソン