だかぼく「だから僕たちは、組織を変えていける」(斎藤徹著)1章2章と最終章の抜き書きまとめ記事
体系的に組織変革論についてまとめられている本です。
まとめ方の要点としては、組織変革を足元から実践していくためにということを主眼に、諸取り組みについて、各種組織論の中から必要なキーワードとコンセプトがコンパクトに解説されている良著です。
【一章「時代」の話】
■農業革命、産業革命、情報革命
社会を支配する考え方が、非連続的に、劇的に変化
「危機とテクノロジー」がセット
■デジタルシフト
インターネット以前、ビジネスは「既得権益」の世界だった
既得権益なしに誰でも起業できる、新しい商売の場が生まれた
■成長エンジン
「いかに工程を効率化するか」から「いかに斬新なアイデアを出し続けられるか」に変わった
■ソーシャルシフト
ソーシャルメディアが、コミュニティ崩壊が進む社会に、古くて新しい人のつながりをもたらした
■ソーシャルメディアがもたらす負の側面
麻薬に近い中毒性を持ち、特に若者の時間を奪う
フェイクニュースの温床となり、社会の動揺を引き起こす
根拠のない誹謗中傷で、他社の名誉を傷つけてしまう
■Y世代 1981〜1995年生まれ
デジタルネイティブ
ミレニアル世代とも呼ばれる
幼い頃からデジタルツールを使いこなしている
■Z世代 1996〜2010年生まれ
ソーシャルネイティブ
1996年以降に生まれ、スマホを片手にソーシャルメディアで育ったZ世代
新たな価値観を当たり前と感じ、人のつながりや多様性を大切にするソーシャルネイティブな若者たち
■ライフシフト 2020年以降
2020年3月11日、WHO(世界保健機関)は、新型コロナウィルスのパンデミックを宣言
2020年の経済成長率は▲3.5%
世界金融危機が起きた2009年の▲0.1%を大きく上回る
オンライン空間の交流が激増し、ビジネスの明暗が分かれた
■在宅勤務
コミュニケーションの既成概念を根底から変えてしまった
■危機から人類が得た新しい学び
テキストメッセージでは届かない、非言語情報がいかに大切か
「私は、なんのために仕事をしているのだろう」
「僕たちの組織は、なんのために存在しているのだろう」
本質的な疑問に向き合うことで、人々は主体性に目覚めてきた
「組織に従属し、ライフとワークにバランスをとる生き方」ではなく「選択肢を広げ、学び続ける、ライフもワークも楽しむ生き方」を目指すようになった
■組織を管理するという視点に立つと
最悪説で構築されていた既存の統制システムが機能しなくなってしまった
お金から幸せや働きがいに価値観をシフトした社員と信頼関係を築くにはどうすればいいのか
重要なのは、多様な社員一人ひとりと深いエンゲージメント(心の絆、信頼関係のこと)を築き、「自走する組織」に生まれ変わること
■ライフシフト
多様な生き方を選択できる社会への変革
提唱者リンダ・グラットン
「教育→仕事→引退」という固定的な流れが崩れて「マルチステージ」の時代が訪れる
■急激な長寿化
2050年までに日本の100歳以上の人口は100万人を超え
2007年に生まれた子どもの半分は、107歳以上生きる
平均寿命が100歳を超え、マルチステージ化する世界
年齢とステージが一致しなくなるために、世代を超えた交流が活発になってゆく
■「何を大切に生きるのか」
「生涯を通じたラーニングコミュニティ」が、家族・職場に続く、第三の社会基盤となる
■ 人間性回帰の流れがはじまっている
「お金」で動く時代は終わり、より高次の欲求である「幸せ」に向かいはじめた
「お金視点」で構築された経営システムを「幸せ視点」にアップデートし、新しい価値を生み出していくことが求められている
どんどん被せていくと、2章の抜き書きです^_^
【2章「組織の話」】
これからの組織は「統制」から「自走」へ
■「マネジメントを再定義する会議」
組織をより人間味あるものにする
会議で提唱された「21世紀への提言」
①志を改める 価値創造 市民参画
②能力を解き放つ 多様性 信頼性
③再生を促す 参加型手法 創発を促す
④権限を分散させる 自然発生 柔軟
⑤調和を追求 大局観 長期的なビション
⑥発想を変える 社内外の叡智を集める
■本当に大切なものは、目に見えない
デビット・ボーム『ダイアローグ』
「思考が世界をつくっているが、人はそれに気づかない」
人の思考はあらゆるものを「断片化」し、理解しやすい「断片」に注目する癖を持っている
サン=テグジュペリ『星の王子さま』
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えないんだ。
「見えないもの」を深く理解できないと、人の心は動かない
■学習する組織
絶えず変化する「環境からの学習」を優先
・構造の改革:顧客視点の設計・スピード重視のシンプルな構造
・交流の変革:全社で知識を共有するプラットフォームとコミュニティ
・意識の変革:学習優先の価値観・対話の場づくりの技術
■OODAループ
航空戦術家ジョン・ボイドが考案した意思決定法
Observe 観察
Orient 仮説構築
Decide 意思決定
Act 実行
■奉仕しながら導くサーバントリーダーシップ
ロバート・グリーンリーフ博士が提唱
「リーダーはまず相手に奉仕し、その後に相手を導くものである」
■共感する組織
過剰な警戒心の罠に陥ることなく、顧客や社会との「共感や信頼」を優先する組織
・構造の改革:パーバスを核とした経営システム・現場への権限移譲
・交流の変革:顧客と対話できるコミュニティ・ソーシャルメディア
・意識の変革:率直で人間的な価値観・意味を共有する技術
■オーセンティック・リーダーシップ
ビル・ジョージが提唱
自分自身の価値観や信念に正直になり、思いと発言、行動に一貫性を持ち、自身の弱みも含めて自分らしさを大切にするリーダー
■「自走する組織」
似て異なる組織として「自由放任の組織」
社員自らが考え、メンバーと緊密にコミュニケーションをとりながら、価値を生み出す組織
自走の鍵となるのは「自律と対話」
「しなくちゃ」という気持ちを「しよう」「したい」にシフトすること、
・構造の改革:内発性を重んじた人事システム・多様な社内ネットワーク
・交流の変革:社内外の人をつなぐビデオ会議や交流プラットフォーム
・意識の変革:自律行動を重視する価値観、動機づけの技術
■「組織」が成り立つ、3つの条件
経営学者チェスター・バーナード
①相互に意思を伝達できる人々がおり
②行為で貢献しようとする意欲を持って
③共通の目的の達成を目指す
■「オルフェウス交響楽団」
「指揮者なし」
固定的なリーダーがいない
作品ごとに最適なリーダーが選ばれて「作品解釈の素案」をつくる
■オルフェウス・プロセス
「コラボレーションの方法」を共有する
1.その仕事をしている人が権限を持つ
2.演奏に自己責任を持つ
3.役割を明確にする
4.リーダーシップを固定させない
5.平等なチームワークを育てる
6.話の聞き方を学び、話し方を学ぶ
7.コンセンサスを形成する
8.職務にひたむきに献身する
■メッシュ型ネットワーク
構成員全員とつながりがある状態
自走する組織では、メッシュ型ネットワークが基本
6人チーム
メッシュ型のつながりは、5+4+3+2+1=15本
自律型チームでは、メンバーの上限を設定することも多い
■シェアド・リーダーシップ
自然発生的なリーダーを想定
専門性や個性から、その場その場に最適なメンバーがリードする
シェアド・リーダーシップを実現するためには
すべてのメンバーがリーダーシップについての知見を深める必要があり、組織に根付かせるには継続的な学習や経験が欠かせない
■理想と現実のギャップを埋めていくには
・結果を…人を評価する基準ではなく、学習する機会と捉える組織
・現実を…過剰に警戒する対象ではなく、共感する機会と捉える組織
・仕事を…義務ではなく、自己成長と価値創造の機会と捉える組織
■「結果」ではなく「関係性」からはじめよう
失敗循環モデル 結果からスタート
結果の質→ 関係の質→思考の質→行動の質→
成功循環モデル 関係性からスタート
関係の質→思考の質→行動の質→結果の質→
■3つの組織を実現するためのエッセンス
・学習する組織の核心=関係の質の向上(第3章でメソッド解説)
・共感する組織の核心=思考の質の向上(第4章でメソッド解説)
・自走する組織の核心=行動の質の向上(第5章でメソッド解説)
【第6章「変革」の話】
■世界に変化を望むなら、自らがその変化になれ
組織は変えていける
自らが起点となる
戦うのではなく、仲間を増やしていく
■成功循環モデル
①関係の質
対話からはじめる。素直に話し合う場をつくり、信頼関係をつくる
②思考の質
前向きな気持ちになり、いいアイデアが生まれる
③行動の質
一人ひとりが自律的に行動し、問題が起きたら助け合う
④結果の質
自然にパフォーマンスが高まり、成果がでる
⑤関係の質
組織への帰属意識が高まり、さらに結束が強まる
■関係の質〜心理的に安全な場をつくる
リーダーは、自分自身が持つ、完璧主義、コントロール欲求、過度の所属欲求、犯人探しの本能が、場の安全を低下させていることを認識する
その上で「強がりの仮面」をはずして「素の自分を見せる勇気」を持つ
■共感デザイン
信頼関係という土壌を創り「コンフォートゾーン」に入る
①ホールネス:人の期待に応えるのではなく、自然体の自分に戻る
②他者の尊重:他者を操作するのではなく、他者を人間として尊重する
③相互の理解:ビジネスライクな間柄ではなく、本音で話せる間柄になる
■価値デザイン:集団的知性を発揮し価値共創する「ラーニングゾーン」に入る
④パーパスの共有:人間関係の維持から、価値の創造に意識を向ける
⑤第三案の共創:思い込みで対立せずに、建設的に第三案を共創する
⑥安心感の醸成:場の雰囲気に飲まれずに、場の安心感を育む
■思考の質〜仕事の意味を共有する
人は意味で動く生き物である
リーダーは、情報と仕事を配るのでなく、意味と希望を与えること
意味をどう伝えるか、どう受け取るかによって、本人の積極性は大いに変わる
無動機づけ「したくない」
↓
外発調整「しかたない」
↓
取り入れ的調整「しかたない」
↓
同一化的調整「すべき」
↓
統合的調整「しよう」
↓
内発的動機づけ「したい」
■仕事の意味
「社会にとっての存在意義」
自分達は何を信じるのか
「個人にとっての働く意味」
自分自身が「仕事をどう意味づけするか」という問題であり、どんな仕事でも「コーリング」になる可能性がある
■行動の質〜自走しながら共創する
人間は、もとから内発的な欲求から課題に取り組む誠実を持っており、それ自体に喜びや充実感を感じて行動する生き物である
「自律性・有能性・関係性」という3つの心理的欲求が満たされると、人は動機づけられ、生産的になり、幸福を感じるようになる
①「しなくちゃ」を解き放ち、自律性を取り戻す
ゼロベース思考、ダブルルーフ学習、透明のチカラで、規律を最小化し、シンプルにする
②「しよう・したい」の環境をつくり、有能感を満たす
明確な目標、適切な難易度、環境整備、自己統制感、フィードバックでフロー体験を促す
③対話を通じて、信頼関係を育む
顧客や同僚の幸せのために高い成果を目指す「主体性を持つギバー」を志向する
■影響の輪を広げる7つのステップ
アクション①インサイド・アウトで変革する
アクション②自己認識力を高める
アクション③影響の輪を意識する
アクション④小さな成功を育てていく
アクション⑤反対者の信頼を得る努力をする
アクション⑥困難から学び、成長する
アクション⑦共感からつなぎ、影響の輪を広げる
■変革アクション①まず、あなたが一歩踏み出そう
「インサイド・アウト」とは、自らの内面(インサイド)を変えること
自分自身の根本的なパラダイム、人格、動機などを変えることからはじめる
組織変革のコアに「インサイド・アウト」を位置づけるところからはじめよう
■変革アクションその①
自分の内面を変えることからはじめる。
信念を醸成し、小さな一歩を踏み出す
■変革アクション②自分のことを正しく認識しよう
リーダーが伸ばすべき最大の能力
「自己認識力」
人は権力を持つほど自己への過信が高まり、自己認識力が低くなる傾向がある
「自己認識力」とは、自分の感情、長所、短所、欲求、衝動などを深く理解する能力
「内面的自己認識」
自分の価値観や情熱、感情、長所や短所、他者の影響力などに関する認識
「外面的自己認識」
他者が自分をどのように見ているかに関する認識
「何が自分をそうさせているのか」と問いかける
「メタ認知」のトレーニング
瞑想、セルフモニタリング、ライティングセラピー
■変革アクションその②
自己を変革する。そのために愛ある批評家の声を聴き「自己認識力」を高める
■変革アクション③影響が届くところからはじめよう
関心がある範囲を「関心の輪」
関心がある範囲の中で、自分が影響力を及ぼせる範囲を「影響の輪」
「関心の輪」に意識が集中すると
他者を非難することにエネルギーが注がれてしまい、建設的な発想ができなくなってしまう
■変革アクションその③
自分の「影響の輪」を見極める
そこに自身の心理的エネルギーを集中する
■変革アクション④小さな成功を育てていこう
自分の影響の範囲で、「成功循環モデル」をまわしていこう
「関係の質」を高めるため
第3章「心理的に安全な場づくり」がキー
共感デザインと、価値デザインと、丁寧に組織の土壌を耕していく
続いて「思考の質」を高めるため
第4章「意味の共有」がキー
目の前の仕事が自分にとって、また社会にとってどういう意味を持つのか
あせらずにメンバーの内在化を促す
さらに「行動の質」を高めるには
第5章「内発的動機づけ」がキー
自律性、有能感、関係性を大切にわメンバーのやる気を高めていくこと
関係性が変わり、思考が変わり、行動が変われば、やる気に満ちた「やさしいチーム」に育っていく
数ヶ月後には成果が結びつき、その後も持続的に繁栄が続く
よくばって関係と結果を同時に高めようとしないこと
関係は目に見えないが、結果は可視化できるために、メンバーの意識が結果に集中してしまい、失敗循環に入ってしまうから
■変革アクションその④
信念を持ちわ関係・思考・行動と変革を進める
価値を生むことに集中する
■変革アクション⑥常にチームの希望でいよう
組織の変革には、強い意志が必要
困難は次々にあらわれるだろう
心に太陽を持とう
場に不安や恐れが生まれたとき、意識的に場を安心に導く人がいる組織は非常に強い
■「クリエイティブ・テンション」(創造的緊張)
ありたい姿と理想の乖離を、輪ゴムを上下に引っ張った状態に例えて説いている
テンション(緊張)は、前を向くためのエネルギー
ギャップは伸び代であり、成長の機会である
現実とビジョンのギャップが一人ひとりの推進力になる
■エモーショナル・テンション(感情的緊張)
想定外の厳しい現実を前にすると、不安に支配されがち
自己否定、他責の思考、問題をすり替えたりしてしまう
学習を阻害する思考として警鐘
■変革アクションその⑥
困難は学習のチャンス
希望を抱き、みんなで助けあい、乗り越えて成長する
■変革アクション⑦共感をつなぎ、影響の輪を広げよう
影響の輪で成果に結びついたら、社内で成功のコツを広め、同志の輪を募ることが大切
「成果をあげたい、組織を良くしたい」という思いは共通
社外のラーニングコミュニティに属することも、大いなる励みと刺激になる
■ティッピングポイント
アイデアや社会的行動が、ある閾値をこえると、野火のように広がってゆく、劇的な瞬間
いつしか、全社に成功循環サイクルが回りはじめる
その実現を信じて、目の前で働く仲間一人ひとりと、一期一会の気持ちで対話する
大河の流れも一滴のしずくから
結果のいかんにかかわらず、チャレンジした経験はプライスレスな価値となり、あなたを大きく成長させるはず
■変革アクションその⑦
ティッピングポイントはきっと訪れる
一期一会の気持ちで対話を広げる
■「日本が失ったもの」
日本ではコミュニティという概念がしっかり根づいており、社員と会社の間の深いエンゲージメントを生み出していました
しかしその後に成果主義を導入し、役割を明確化した結果、組織全体に役割を超えた仕事を率先して行うといった慣習も薄れていました
■「不安遺伝子」
日本人
セロトニン・トランスポーター遺伝子のS型保有率が約80%と極めて多い
日本80.3中国75.2インド58.9米国44.5英国44.0ロシア43.9フランス43.2ドイツ43.0
S型遺伝子を持つ人は、実直で協調性は高いが、不公平な仕打ちに敏感で、自己犠牲をいとわず復讐行動に出やすい
不安とは
危険を察知するアンテナ
適度な不安は学習のトリガー
世界一不安を感じやすい日本人は、世界でも有数な「学習する民族」
■すべてのものにはクラック(ヒビ)があり、そこから光が差し込む
僕たちは「日本の組織に入ったクラック」に、どんな意味を見出せるのだろうか
オードリー・タンの言葉
「もしあなたが何かの不正義に焦り、怒っているのなら、それを建設的なエネルギーに変えてみてください。こんなにおかしいことが、二度と起きないためにできることはなんだろう、と自問自答を続けてください。そうすれば誰かを攻撃したり何かを非難したりせずに、前向きな新しい未来の原型をつくる道にとどまることができます。あなたが見つけたクラックに他の人たちが参加し、そこから光が差し込みます」
僕たちは、自分の組織を、そして未来の日本をどうしたいのか
ビジョンを描き、人々の英知を集約して、そこに向かおう