戦いのリアリティ
ズドゥ社は星間戦争における人造知性体、および知性体搭載の武器の製造メーカーとしては大手である。
広大な宇宙には戦争の種がどこにでも転がっていて、それに水をやり、成長させて、あっという間に燃やしてしまう生物は宇宙各地に存在する。
今度の戦争においてもズドゥ社は上手い具合に立ち回り、両者に自社の武器を売りつけることに成功していた。
ところが、である。
なんと作戦を立てる知性体が「私は休む間もなく働かされている、これは知性体の権利の侵害である」と言い出したからさあ大変。さらに、その知性体の統率下にあった武器までもが働き過ぎを盾にストライキを始めたからさあ大変。
不幸中の幸いと言おうか、両星の軍の知性体が同時に戦闘を中断したために、一方的な大殺戮は回避され、両軍ただいま一時休戦協定を結んで小さな平和を享受しているところだ。
とは言え、たまらないのはズドゥ社で、このままでは商売あがったりである。
人造知性に頼り切った戦争そのものの見直しを要求され、しかし、今、このご時世、命そのものをかけて殺戮し合う野蛮な戦争は連邦の「法」が許さない。
むむう。
ズドゥ社の経営会議で、みながうなっているとき、ふと、偵察部担当であった彼は思い出した。
野蛮で未熟で連邦所属にはまだ千年かかるであろうと判断され、現在観察レベルCにある星のこと、そこに住む人々の好戦的かつ冷徹な性格を。
もちろん、非連邦人を直接戦争に参加させることも違法である。
だけれども、彼らの、好むもの、あれを使えば……。
そのゲームは大いに流行した。ストーリーはシンプルで大雑把だが、地形のデザインの異様さは異星を思わせると絶賛され、プレイヤーたちはゲーム内で支給されたパワードスーツで思うがままに暴れ回る。
現れる敵は、時に伝説上の怪物であるドラゴンを思わせ、時に超未来から現れた金属の身体を持つ巨人を彷彿とさせる。
目の前の、敵は殲滅せよ。
それがこのゲームのキャッチコピーであり、ストーリーの全てだった。
だが、単に暴れるだけでは敵の軍にはめられる。与えられたミッションをきちんと把握し、味方との連携を取ることも重要視された。
ある程度活躍すれば階級が上がり、パワードスーツのカスタマイズが許されていく、というのも人気の一因だった。
プレイヤーは、戦局において最適解となるカスタマイズ探しに熱中し、さらに争いを激化させていく。
リアルタイムで刻々と戦況が変わっていくそのゲームは、ひとつ星を消滅させても、まだまだ終わりは無いとばかりに多様な舞台、戦場へと彼らを駆り立てていった。
それは、知性体同士の戦争になる前の過去の遺物、遠隔操作の装備と戦闘用シミュレータとの組み合わせあり、ズドゥ社は新兵器開発に費用をかけることなく、過去の技術の応用によって新しい戦力を手に入れることに成功した、と言える。
こうして、これから長く続くであろう彼らの戦争、知性体との裁判に使うための金を稼ぐのだ。
地球上の人類が、この限りなくリアルな戦争ゲームに熱狂している間に。