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中華転売ヤーを不正競争防止法違反で訴えて○万円の解決金を得た話
私の会社はクライミングやボルダリングで使用するクライミングホールドを長年製造・販売しています。
それらは自社サイトの他、楽天市場、アマゾン、Yahooショッピング等の大手ECショッピングモールでも販売しているのですが、その市場において競合となる中華転売ヤーが、ホールドの素材を偽装してクライミングホールドを販売していたので、民事で訴え、2年を超える裁判の後、解決金を支払わせました。
この記事が、日本で頑張ってものづくりをしている企業の方の参考になりましたら幸いです。
モラルの低い転売ヤーに不法行為をされ利益を削られているのに泣き寝入りをする必要はありません。
また購入者としても、転売ヤーが楽天市場などで表記する情報は不正確である可能性を考えた方が良いと思います。彼らは専門性の高い商品を扱うのに、その知識が全く無いのです(そして多く、高く販売するために嘘を書く)
それだけでなく、販売ページには実際には販売していないホールドの画像を大量に使用していたり、商品画像の彩度調整を大きく行うなど、消費者に誤解をさせる様な詐欺まがいの表現が多く行われています。
また、こうやって明らかに不正な事をしている業者に対して、行政は全く動かない事についても付言しておきたい。何のために存在しているのだろうかこの国の役人達は。こんなの日本だけだろ。例えばアメリカでやったら損害賠償で人生終わるんじゃないの。
転売ヤーがしていた事
材質の虚偽表示です。
一般の方はご存じないかと思いますが、クライミングホールドの素材としてはポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の2種類があります。
(その他金型で大量生産されている玩具的なものも販売されていますが、ここでは論じません)
私が訴えた転売ヤーは、不飽和ポリエステル樹脂製のクライミングホールドを、ポリウレタン樹脂製と偽って販売していました。
何が問題なのか
不飽和ポリエステル樹脂製のホールドは、その安さにもかかわらず現在ほとんど使われなくなってきています。これには、機械的強度が低いという事が根本原因としてあり、割れやすい、欠けやすいので形の自由度が低い、ただでさえ重いのに中空にできないのでさらに重くなっている等、ポリウレタン樹脂製とのホールドと比較して劣る特徴がたくさんあります。加えて、VOCの放出量が多く健康被害の可能性がある、発色が悪い、水分に弱く経年劣化が早い等の特徴もあります。
このように、不飽和ポリエステル樹脂製のホールドはポリウレタン樹脂製のホールドに比べて大きく特性が劣ります。そして安価です。この不飽和ポリエステル樹脂製のホールドを、ポリウレタン樹脂製と偽って販売していた業者を、ポリウレタン樹脂製ホールドを製造販売する当社が訴えた、という事です。
民事訴訟においては主に損害賠償額の請求をしましたが、加えて、商品販売ページ画像の使用禁止、不正表示時期に得た売れ筋ランキング情報の表示の禁止などを求めました。
転売ヤーの主張
これがしょうもないものばかりだったので、その一部を書いておきたい。
まず誤記表示をした理由については、製造会社との連絡ミスという主張でしたが、メールのやり取りなどそれを裏付ける証拠は全く提出されませんでした。ただ、言っているだけ。
それに不正競争防止法違反の要件としては、意図的か過失かは関わりがありません。知らなかった、誤解していた、は通用しないという事です。
それ以前に、この業者はホールドを手に取った時に素材が判断できないレベルで無知という事でもあります。私は一瞬で分かります。
また、ポリウレタン樹脂は加水分解しやすい、というお客様からの意見がある、という主張もありました。
残念ながらそういった認識が一部あるようですが、実はポリウレタン樹脂にはエーテル系、エステル系、その他の系統があります。通常クライミングホールドで使用されるポリウレタン樹脂はエーテル系であり、加水分解しにくいのです。
むしろエステル結合が加水分解するのであり、それが含まれている不飽和ポリエステル樹脂製のホールドの方が加水分解しやすいと言えます。
ちょっと調べれば分かる事を裁判の場で述べ、墓穴を掘ってくるあたりに浅はかさを感じざるを得ませんが、当社の反駁に対してはスルーされ反論はありませんでした。
間抜けな転売ヤー
転売ヤーの商品販売ページですが、素材サイトから購入したと思われる画像(営業ジムで登っている様子の画像)がたくさん使われていました。
前述の通り、営業ジムではほとんどポリウレタン樹脂製のホールドが使われています。サイト閲覧者にそれらを見せて実際には不飽和ポリエステル樹脂製のホールドを売る、という行為自体も問題と思いますが、その中の一つに、なんと当社のホールドがど真ん中に映っている画像が使われていたのです。
どこまで無知なのやら…呆れてものが言えませんでした。
原告の商品を陳列し、実際には低品質な違うものを販売する被告なんて、前代未聞なんじゃないでしょうか…。
当然、当該の画像の使用を停止させました。
損害賠償請求金額と解決金金額に関して
損害賠償の請求額はそれなりの金額だったのですが、解決金に関しては期待したほどではありませんでした。
理由としては、クライミングホールドに関してはコロナ渦の需要の変動が大きく、被害額の算定が困難だったことが挙げられます。
ただそれを踏まえても、解決金や賠償額が不法行為に見合わないほど少ないというのは、日本の裁判の悪しき点だと思います。少なくとも、不法行為が確定している時点で懲罰的な算定額にするべきだと思います。
それでも、解決金は得られましたし、良い裁判例を作ることができたと思っています。
また、被告は解決金以上に弁護士費用を支払ったでしょう。
おそらく1000セット分くらいの利益は飛んだのではないでしょうか。当然の報いです。いや感情的には全然足りないんだけどね。
表現がセコい転売ヤー
ついでになりますが、これからクライミングホールドを購入する方が騙されない様、以下に転売ヤーのやり口を書いておきたいと思います。
商品販売ページの画像
画像の調整(特に彩度調整)を誤解を生むレベルでやるという事や、販売商品でないものを商品ページに掲載するというやり口は前述のとおりです。
その他にも合成なんかもへっちゃらにやっています。被告が販売するホールドは屋外での使用には向かないのに、屋外で使用している様な画像を合成で作って掲載していたりします。
根拠のない比較表現
不届きな転売ヤーは、自社が販売するホールドが不飽和ポリエステル樹脂製にも関わらず、”割れにくい、長持ちする” 等と記載していたりします。
根拠を尋ねると回答が無く記載を止めるので、まぁそういう事だと思います。
素材の表記をあいまいにする
ポリウレタン樹脂に対して不飽和ポリエステル樹脂の特性が大きく劣るという事は当社の販売ページに書いているので、そのページを見た方は不飽和ポリエステル樹脂製を避けるようになるでしょう。
その対策だと思うのですが、転売ヤーは素材名について不飽和ポリエステル樹脂製と書かずに、プラスチック樹脂製と書いたりします(不飽和ポリエステル樹脂はプラスチックの一種ですから間違いではないが)。また、そもそも素材名の表記を一切書かない様にしたりしています。
こういうのはまず選考から外した方が良いと思います。
未だにポリウレタン樹脂製と嘘を書いて販売している業者がいる
これはその通りで、こちらが素材の誤記に気付くよう質問状を送っているにもかかわらず、「仕入れ元がポリウレタンと言っている」と言い張り、今でも不法行為をしている業者が居ます。
当社はこの業者にも法的に対応していく予定ですが、ご注意いただきたいと思います。