被監査部門に監査サンプリングの法則性を知られてはいけない

被監査部門に監査サンプリングの法則性を知られてはいけないということは、監査の知識が無い方でもご理解いただけると思います。例えば、「今年は2020年。なので、末尾が0となる伝票番号を中心にサンプリングしよう」となると、来年度は末尾「1」、再来年度は末尾「2」…と法則性が見えてしまいます。そうなると、サンプリングにあたりそうな伝票だけはきっちりと体裁を整えておこうということになります。
これと近い話がありました。
ある会社(J-SOX評価対象の会社)に監査で訪問した際、内部監査人が予め、「毎月10日、20日、末日」の売上日報を評価するので、毎月PDF化しておくように指示していました。J-SOXで言う「日次統制」なので年間のサンプルが20件必要ということで、毎月3件×1年(12か月)=36件を入手し、そこからサンプリングしようとしていました。これは、サンプリングではありません。毎月「0の付く日」はきっちりと業務をしようという思惑が働いてしまいます。
なぜこんなことになったかというと、売上日報は物流部門で出力され、売上の実在性・網羅性等を確認したのち保管されるのですが、紙データが膨大なため、毎月月初に前月分の物流部内の「自動倉庫」に格納しているとのことでした。
なので、過去月の売上日報で任意の物を取得しようとすると、「自動倉庫に保管しているので、任意のサンプルを指定されると通常の業務が止まってしまう。監査のために業務を止めることはできない」ということで、被監査部門と内部監査人が手打ちをしたようです。
そもそも、内部監査人としては、「物流で商品・製品を取り扱っている倉庫と同じ場所に帳票を保管するべきではない。」と指導すべきでした。
この会社では本社倉庫に余裕がありそうでしたので、物流部門から本社総務に交渉してもらうこととなりました。また、スペースの問題が解決するまでの措置として、
・監査部が月末日にサンプル日時を数件ランダムに指定しPDF化の指示をする。
・PDF化後は、自動倉庫に格納してもよい。
・仮に監査でのエラーが発生した場合は、過去月のものであっても監査人の指示のあった日時のサンプルを自動倉庫から取り出すことに合意する。
としました。

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