彼女たちのコズミック・イラ Phase24:レズビアンの母性本能

シンとヒルダがヘンな雰囲気となるだけです。あと冒頭にステラのお小言。地味に劇場版でも一人二役をやっていた桑島法子さん。

一応はルナマリアから摂取出来ない、姐さん成分をヒルダさんを通して得ている感じです。シンヒルの嚆矢を放つ第一人者となります。え?人柱?

次回もシンヒルの続きです。


「シン……シン……」

少女の声と共に、シンは意識を取り戻す。しかし、彼が目を開いた先にいたのは、かつて自身が救えずに命を落とした金髪の少女。この意識の覚醒もまた、現実のものではないだと理解をすることが出来ていた。

「ステ……ラ?」

微かに言葉を発することが出来るシン。しかし、自らがステラと呼んだ少女にその声が届いているか定かではなかった。

「なんだか……久しぶりだな。最近あまり……会ってなかった気がする。」

彼の発した言葉が聞こえたかのように、彼女は柔らかな笑みを浮かべる。そして、そう微笑みながら声を上げる。

「シン……すごくやさしい。ステラ、やさしいシンがすき。」
「うん……ありがとう、ステラ。」
「でも……シン、やっぱりやさしくない。」
「えっ……?」

珍しく少女に否定をされ、シンは思わず言葉を失う。しかし彼女はそれに構うことなく、彼に向かって声を上げ続ける。

「シン、もっとやさしくしないとダメ。ステラにもっと……やさしくしてた。」
「優しいけど優しくないって……どういうことだよ?ステラ……!?」
「わたしのすきなシン……もっと、やさしいから……」
「分かんないってステラ!いつもはなんとなく分かるけど、今のは本当に分かんないから!ステラっ、ステラっ!?ステラぁぁぁぁぁぁ!!!!」

相変わらず言いたい事だけを言い終えると、少女は光に包まれ姿を消していく。それと同時に、シンの意識は現実へと戻され始め、自らの声が聴覚へと伝わり始めるのであった。

「うぅぅぅ……す、ステラ……ステラっ……!んんんぅぅ……!」
「おい坊主っ!本当に大丈夫か!?意識はあるんだろ?なぁっ!?」
「んっ……んぅっ?あれ?」

シンは瞼を開き、目先に映るものを確認しようとする。焦点が合わずにぼやけていた視界は瞬く間に晴れ始め、彼は自らを心配そうな顔で見つめる女性の顔を視認する。

「ヒルダ……さん?あれ?どうして俺、寝てたりしてるんですか?」
「はぁ……どうやら本当に、気絶をしただけだったみたいね。」

シンがその名を呼ぶと、傍にいたヒルダはようやく安堵した様子を見せる。

「気絶……?気絶なんて……んぅっ!?あいたたたた……!!!」

そして、意識の覚醒と共に鮮明となる顔へと広がる痛み。彼が自らの鼻に手を当てると、そこには止血のために詰められたティッシュの手触りを感じるのであった。

「そういえば俺、ルナの悲鳴を聞いて……そのあと声がしたほうに向かって……」

意識を失う前の記憶を懸命に辿っていくシン。しかし、その全てを思い出されても不都合があったヒルダは、意識を失った原因だけを端的に答えるのであった。

「ルナマリアに殴られて、あんたは意識を失ったんだ。そのあとは彼女と私で、倒れたあんたをこの部屋まで運んできたのさ。」

僅かに頬赤らめながら、ヒルダは彼が運び込まれ意識を取り戻した現在までの経緯を語る。そしてシンは周囲を見回して、現在自らのいる場所が自室であることを確認していた。

「あぁぁ……そういえば俺、ルナがシャワー浴びてるところに入っちゃって……っ!?ルナは!?ヒルダさん、ルナは今どこにいるんですか!?」

思い出したかのように恋人のことを思い出し、ヒルダに向かって声を上げるシン。そうした惚気にしか映らない彼の様子に呆れつつも、彼女はその問いに答える。

「ルナマリアならついさっき、外出許可をもらって外に行ったよ。ついでにアグネスも営倉から引っ張り出してね。」
「アグネスと……!?あぁぁ……そ、そう……ですか。だったら、たぶん大丈夫ですよ……ね。」

アグネスが自分たちに敵意を抱いていないことはシンも十分に理解していた。そして、腐れ縁のような関係であるルナマリアと彼女が一緒であることは、特に問題だと感じることもないのであった。

「恋人が心配なのは分かるけど、もう少し信じてやったらどうなんだい?」
「ルナを……信じる、ですか。そう……ですね。」

ヒルダの言葉に、シンはかつて友人から掛けられた何気ない言葉を思い出す。

『もう少し彼女を信じてやったらどうだ。』

それが友人としての本心だったのか、あるいは別の意図があったのか。今となってはシンがその意図を確かめることは出来ないのであった。

「どうしても……不安になっちゃうんです。いつも一緒にいると気に入らないところとか、嫌な部分が目立つんですけど。いざ離れ離れになったりすると……なんだか、無性に気になるっていうか……会いたいって気持ちが強くなって。」
「はぁ……ふふっ、ふふふっ!!!」
「な、何がおかしいんですか!?俺、なんかヘンなこと言いましたか!?」

シンが胸の内に秘めていたであろう言葉を聞き、ヒルダは愉快そうな笑い声を上げる。その反応に彼は些か憤った様子で声を上げていた。

「あっはははっ……!いや、あんたもルナマリアもおんなじようなことを考えているんだなって……ふふっ!」
「同じことって……どういうことですか?」
「いつも一緒だとどうでもいいって思うのに、ちょっと離れると心配なるってさ。あんたたち……本当に仲が良いじゃないか。」
「うぐぅっ……る、ルナがそんなことを……!?」

嬉しさが込み上げる一方で、シンは自ずとルナマリアと思いが通じ合っていたことをヒルダに知られ、顔を俯かせて赤面させてしまう。その様子にヒルダはさらに愉快な笑みを浮かべるのであった。

「帰ってきたら、しっかり謝っておくんだよ。まぁ、たぶん向こうも向こうでやり過ぎたって思ってんだろうけどさ。」
「謝るって言われても、具体的に何かをしたってわけじゃ……ん?あれ?なんか俺、ヒルダさんにも悪いことをしたような気がするような……」
「うぅぅぅっ!?き、気のせいじゃないかな。あんたはただルナマリアにぶっ飛ばされただけなんだからさ……」

ヒルダの言葉を聞き、何かを思い出そうとしているシン。その記憶から欠落した光景の中には、彼は眼前にいるヒルダの存在が気掛かりになるのであった。

「そういえば……俺がルナに殴られた時、その傍にヒルダさんがいて……」
「そ、そういうは思い出さなくていいんだよ!なんで思い出したりするんだいっ!?」
「うわぁぁぁぁぁっ!!!すみませんっ!俺本当に大変なことをヒルダさんに……!」

ルナマリアの一糸纏わぬ姿に気を取られていたシンが、とうとうヒルダも裸であった光景を蘇らせてしまう。

歴戦の軍人として引き締まった肉体。ルナマリアと同等の豊満な乳房。ヒルダ自身はすぐに悲鳴を上げて蹲ったものの、その均整の取れた裸体はシンの瞳に焼き付いてしまっていた。

「べ、別に見られただけで……さっきは何もされているわけでもないし……」
「へ……?さ、さっき?」
「坊主……あんた、自分でも気付かないうちに私の身体に結構くっ付いているんだよ。まぁ……私も割と気付かないうちになんだけど。」

シンの女性に対する無頓着さ。それは時として女性からの反感を買う一方で、ヒルダのように女としての意識に欠けた人間の性意識を呼び起こすことにも繋がっていた。

「そんなことしてましたか!?いや……俺、全然気付かなかったんですけど……」
「まぁ……私も何も言わなかったし、あんたに悪気がないことは分かっていたからね。でも、なんだか気持ち悪さよりも……なんというか、ヘン感じがして……」

男勝りな性格でありながらも、ヒルダはシンを前に保護欲や母性本能を引き出されようとしていた。

「ひ、ヒルダさん……?」

シンはルナマリアと同様、ヒルダがラクスに対して敬愛以上の感情、あるいはそれ以外の情を抱いていることを知っていた。故に彼は目の前にヒルダの様子が尋常ではないことに気が付いており、自らの身に危機が迫っていることを実感しているのであった。

「分かっているよ。あんたにはルナマリアがいるってことくらい。それに、私みたいな女に意識をすることだって……することだって……」
「そ、そんなことありませんって!ヒルダさんはすっげぇ美人だし、ルナにだって負けないくらい……うぅぅっ!?」
「バカっ……そういうことを……平気で言うもんじゃないよ……!」

仏頂面となりながらも、シンと同様に頬を真っ赤に染めていたヒルダ。最早互いに意識を抑え込むことは出来なかった。そして2人はしばし口を閉ざしたまま、顔を見つめ合わせているのであった。

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