川口市のとある土地区画整理(道路整備)の裏で起きた話
昨今X(旧Twitter(この表記嫌い))で大人気な地域の話ですが、政治的な要素はほとんどありません。それでも割とホラー、ダーク、ブラックな内容となっております。
めちゃくちゃローカルの話ですので、雰囲気を掴むことは難しいかもしれませんが、区画整理という要素を中心に捉えていただければ分かりやすい話になるかもしれません。
土地区画整理。筆者の地元では長年に渉って再開発が盛んであり、市内のあちらこちらで道路整備を中心に区画整理が行われている。
鬱蒼と生い茂った人気のない雑木林にも住宅が立ち並び、あぜ道や田んぼであった場所が大通りとなったのがここ数十年のことである。
そんな再開発が盛んな川口市において、比較的小規模ながら大幅な利便性の改善が行われ、2024年の3月末にその道路は開通する。そのニュースはローカルニュースながらも、ネットでも掲載取り扱われる程であった。
この記事にある通り、僅か150m程度の距離ではあるものの、一方通行の道路が片側一車線の双方方向道路へと拡幅され、国道122号線から第二産業道路、産業道路、そして蕨駅まで一直線での往来が可能となった。
従来は122号線側からは他の交差点を迂回し、第二産業道路を経由してイオンや産業道路、蕨方面へと行く必要があったのが、この工事によって迂回の必要がなくなったということだ。
我々のような地元の住民はもちろん、運送業の車両、緊急車両にとっては非常に有難い話である。だが、この道路の開通前にとある事件があったという話が、今回の本題となる。
本題へと入る前にこぼれ話を一つ拾っておく。本記事のタイトルでも、また上述のニュース記事のタイトルでも、拡幅工事が行われたのは川口市と書かれているが、この区画は旧鳩ヶ谷市が川口市と(吸収)合併した地域でもある。
この拡幅工事が合併前からあったものなのか、あるいは合併後に川口市の予算収入よって推し進められたものかは定かではないが、元々は鳩ヶ谷市であったことを記載しておく。
そしてここからが本題となる。元は一方通行であった道路を双方向通行にするということは、それに伴う土地区画整理が行われたということである。
無論、この蕨桜町線と呼ばれる道路も例外ではなく、拡幅工事に伴う区画整理が行われた。つまりは住居の移転、立ち退きが避けられないことであった。
実際にこの周辺の住居や店舗は移転をしており、真新しい住宅も多く立ち並ぶ現代的な雰囲気の通りへと様変わりした。だがしかし、それを望まない人間も少なからずいた。
実はこの拡幅工事が行われる前、つまり一方通行であった時、一軒の住宅だけが区画整理の範囲内に残っていたのである。
些か記憶が曖昧であるものの、その住居には老夫婦が住んでおり、建物は古かったものの土地は割と広く、工場のような跡が印象的な建屋であった。
おそらくではあるが、きっと行政からの交渉も跳ね除け、頑として立ち退くことを拒んでいたのだろう。周辺の住宅家屋が取り壊されて移転する中、その住居だけが拡幅工事を阻んでいるのであった。
そうしたある日、市内で一件の火事が発生した。60万人前後の人間が住む川口市だが、火災はそこまで頻繁にあるものではない。それが住宅火災であれば、なおさら目立つ話でもあった。
その住宅火災の現場は、上述の老夫婦の住宅であった。建屋は崩れはしなかったものの酷く燃えており、住んでいた老夫婦は亡くなったとのことであった。
偶然なのだろうか。
拡幅工事の妨げとなっていた
たった一軒の住宅の老夫婦が
火事によって死亡した。
もちろん明確な証拠などは一切ない。単なる失火でなのだろう。だが筆者は思ってしまった。その焼け落ちて廃墟となった火災現場を目の当たりにして
『これで拡幅工事が出来るな』と。
その住宅火災の後、焼け跡となった老夫婦が住んでいた家屋は取り壊され、大した時間を置かずに区画整理と拡幅工事は一気に進んだ。そして、全て整備は滞りなく行われ、2024年の3月末に地域の利便性が大幅に向上する道路整備は完了する。
既に火事が起きた現場はコンクリートで補装されており、住居があった痕跡などは一切存在しない。そして、開通した道路の周囲には未だ空き地が広がっており、いずれは新たな住居が立ち並び、住宅火災が起きたことなど忘れ去られるのであろう。
この話が起きた前後に、筆者は一つの漫画作品を読んでいた。作品の名前は『私刑囚』。内容は全体的にグロテスクなので割愛するが、その作品のエピソードの一つに印象的なものがあった。
とある一人の公務員の男が、区画整理のため範囲内の住民たちと交渉する。しかし、一度は承諾したにも関わらず多くの金銭を得るために約束を反故にして、公務員の男を困らせるという話である。
堪忍袋の緒が切れた男は住民たちを惨殺。それによって空き家となった住居は取り壊され、区画整理が円滑に進んだことで公務員の男は上司から評価されるのであった。
読んだ時期が時期だけに冗談とは思えない内容であり、この文章を書く要因の一つにもなってしまった。ちなみに上記の公務員の男に関しては、相応の報いを主人公である女、白城澪によって与えられ無惨な死を遂げている。
事実は小説より奇なりとはよく言うが、このような奇怪な話に今後は出会いたくないものだ。
そしてこの記事は、区画整理をされた場所、そこで住宅火災が起きて犠牲があったこと、それが忘却されぬことを願って書いたものでもある。邪推や推察は覚えなくて結構、だが事実だけは残ってほしいと願っている。