彼女たちのコズミック・イラ Phase38:責任ある大人達
キラマリュの二次創作を書いていた作者による、原液といえる状態で濃厚なムウマリュの描写シーンです。
アークエンジェル級3番艦を出したのは、ある意味この2人のためといっても過言ではありません。キラとラクスはミレニアムに移乗しちゃってますからね。
次回からは再びメンデルへと舞台が移ります。
C.E.75:月面都市コペルニクス
ミレニアムとセラフィムによって拿捕された核攻撃部隊は、コンパスから援軍要請を受けたオーブ軍艦隊によって制圧、乗組員の身柄は拘束された。
「連合に直接引き渡すのは……得策じゃないでしょうね。」
「メンデル周辺でミレニアムを襲った連中のことを考えれば、手放しに移送するわけには出来ないだろうな。」
セラフィム艦内で一時の休息を得ている艦長マリュー・ラミアス大佐と、パイロットのムゥ・ラ・フラガ大佐。形式上は地球連合軍の軍人ではあったものの、つい先日まではオーブ軍に所属していた上、現在はコンパスに出向している関係上、連合内部におけるブルーコスモス復権の兆しには辟易としていた。
「とはいっても、あの核の出処は大西洋連邦じゃなくて、ほとんどがユーラシアだったんだろ?あそこはもう中央政府もファウンデーションに潰されて、地上と宇宙の連携だって全く出来てない状態だったからな。」
「ええ。そうはいっても、通常戦力をブルーコスモスへと手引きしたという点では、大西洋連邦も同じようもの。これから軍内部では、再びブルーコスモスか否かの各個人への審査会が開かれるのでしょうね。まるで、中世の魔女狩りみたいに。」
西暦期よりも科学技術が遥かに進歩していたにも関わらず、人間の所業に関しては数百年単位で進歩が見られないことに、ラミアス艦長は呆れた表情となり、セラフィムの休息デッキから見える地球を眺めていた。
「まぁでも、ユーラシアはともかく俺らのほうは核の管理状況をコンパスに提供するって言ってんだし、大分進歩したんじゃないの?」
「核を武器として持っていること自体、人があまり賢くなっているとは言えないんじゃないかしら。結局西暦からコズミック・イラに移行をしても、核兵器を捨てた国はほとんどなかったのだから、それがあの兵器の有用性を示したことになっちゃったでしょ。」
アークエンジェルの艦長として、常に戦いの第一線に立ち続けたラミアス艦長は、争いを続ける人間の愚かさを誰よりも肌身で感じている者の一人であった。かつての想い人を戦争で失い、そしていま目の前にいる恋人もまた、一度は自らの目の前から姿を消してしまっていた。
「ホント……キラくんやラクスさんたちが投げ出したりしたら、私も全部放り出しちゃうと思うわ。」
「え?それじゃあ俺のことも放り出しちゃったりするの?それはちょっとあんまりじゃないの。」
決してそうならないことを理解しながら、ラミアス艦長は恋人を前にそんな愚痴を零す。そして彼女は些か不満そうな顔となり、フラガ大佐に向けて口を開く。
「そこは“俺も付き合うぜ”って言ってくれると思ったんですけど。私よりも世界の平和を守るヒーローを選びたいのでしたら、どうぞご自由になさってください。」
「冗談だよ。お前のいない場所に俺がとどまるわけないだろ、マリュー。」
そう言いながらフラガ大佐はラミアス艦長の身体を軽く抱き寄せる。そして顔を見つめてくる彼に向かって不満そうに口を開く。
「私より強気で年下の女性が好みでしたら、ミレニアムへの転属願いでも出せばいいんじゃないかしら。」
「それもいいかもしれないけどな。でも、やっぱりオッサン扱いされるのは勘弁だから、ここがいいんだ。」
ラミアス艦長の唇を奪うフラガ少佐。それに対して彼女もまた、自ら彼の身体を抱き締めながら唇を重ね合わせていく。互いに戦いの興奮が冷めない中でも、抱き合う2人の身体は火照りを帯びていくのであった。