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わかめうどん

ここ最近の僕はわかめうどんだけでエッセイを書けてしまうのである。

わかめうどんにコロッケ、そしてオクラ。もはや身体を気遣っているのかなんなのか。

それが毎週金曜の昼食と決まっている。正確には決まっていないのだけど。

開店と同時に学食に足を踏み入れるその瞬間は「今日は何を食べようか」、「あれも食べたいしこれも食べたい」なんてバイキングに来た子供のような気持ちでいる。

種類豊富でどれを食べてもおいしいので学食になにひとつ文句も要望もなかった。

それでもいざ注文口に行くとあたかも初めから決めていたかのように「わかめうどんをお願いします」と言ってしまう。

麺コーナーに行って注文するわけだけど、毎回直前まで醤油ラーメンとわかめうどんで悩んでいる。

かといってうどんが好きなわけではない。わかめを食べたいときにわかめうどんを頼むのだ。わかめ汁があるのならそれとご飯がいい。

もうひとつの選択肢である醤油ラーメンも別に好きではない。何なら塩ラーメンの方が好きだ。それも麺が好きというわけではなくてスープが好きだという理由だ。

数か月前までうどんが嫌いだった。毎年の年越しは蕎麦だったけれど祖母は子供にはうどんを茹でてくれていた。僕はそれも苦手なので、蕎麦やうどんを食べる家族と食卓を囲んで、汁と白米を食べるほどだった。

ここまで見るとこだわりが強い変わった人だけれどそういうわけでもない。そもそも嫌いというよりかは避けられる状況なら避けてきたし自分でお金を払ってまでは好んで食べなかっただけである。

付き合いでうどん屋に行った際は普通にうどんを食べた。だから単純な好き嫌いではないのだと思う。

それが今は自分でも何が起きているのか全く分からない。

最近は嫌いなものを口が欲している。成長につれて味覚が変わるというけれど、僕は刺激を求めすぎている気がする。一度も好いたことがない蕎麦もカレーも数か月前に学食で食べた。

自分でも少し恐ろしい。

全くと言っていいほど理由が見つからない。



僕は明日もきっとまたわかめうどんを食べるのだろう。

早くもわかめの口になってしまった。