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いじわるヘッケさん①
我が町には、ヘッケさんと言う変わったあだ名で呼ばれるシェフがいます。
その呼び名の由来は見知らぬおじさんから突然そう呼ばれたと言う本人の話から。
我が町でその名を知る人はそう多くはありません。
そのあだ名で呼ぶ人がそうそういないからです。
ヘッケさんの作るイタリアン料理は絶品です。
他のお店では味わえないような独特な料理もあれば、オーソドックスな料理も無類の美味しさです。
しかし、彼は皮肉もまた絶品なのです。
お店の予約をしようと連絡をしてみれば、
「わかりました、大丈夫です」
追伸のようにすぐさま、
「どうせ暇ですから」
この最後の一言にこもるウィット。
醸し出される、アイロニカル。
感じるよ、ダンディズム。
まだ30代だぞ、どうして老成感。
最高に素敵な人です、ヘッケさん。
そんなヘッケさんのお店で体験することになる
巻物のような物語を書いていけたらうれしいのです。
ちなみに今日で、お店は閉店。
終わり