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【伝統医療でGO!#11】 #東南アジアの風土の記録ってあるの? #地域の気候にマッチした食文化。

◾️ 東南アジアの気候と風土について

カンボジアの伝統文化については、ポルポト時代の文化革命で書物などが一掃されていることもあって、なかなか深くを知ることが出来ません。

フランス統治時代の1907年には極東学院(École française d'Extrême-Orient)という研究機関の分院がカンボジアにも設置されていて、おそらく地域の伝統医学に関する研究内容も含まれているとは思うのですが、フランス語の論文はハードルが高すぎて手が届かず。過去の鍼灸学習の少ない知識を掘り起こしてみることにしました。

”南方の地域は、自然界の万物が成長しやすく、養う気候に富んでおり、陽気が最も旺盛なところ。地形は低くて水土が薄く、霧や露が常に発生する。この地域の人々は、酸味を好み、発酵させたものを多く食べる”

<原文> 南方者 天地所長養 陽之所盛處也 其地下 水土弱 
霧露之所聚也 其民嗜酸而食胕

黄帝内経素問『異法方宜論篇』

こちらは、2000年前に編纂(へんさん)された中国最古の医学書『黄帝内経(こうていないけい)/素問・異法方宜論篇』の一節です。当時の中国大陸各地で発祥した様々な医学についての経緯が述べられているのですが、大陸南方に位置する地域の風土や食習慣、病症についての記述も見られます。

参照:18世紀古地図「日本・中国・東南アジア」 / Antique Map "Japan,China,Southeast Asia"

この時代、カンボジアを含むインドシナ半島は中国の勢力地図に含まれていませんが、すでにメコン川下流域の「扶南国」(西暦68〜550年)がインドと中国を結ぶ南蛮貿易の中継地として栄えていますので、記載内容は当時のカンボジアの状況にも当てはまると推測され興味深いです。

◾️ どんなものを食べてた?

風土や食生活についての記載に目を向けると、メコン川の豊富な魚を原料とした強烈な香りを醸し出すプロホック*や魚醤、大豆を原料とした発酵食品は、現在もカンボジア料理に欠かせない調味料です。古代の人々も同じものを食べていたのかもしれません。

*プロホック
メコン川のコイ科の淡水小魚を発酵させて日本でいう味噌のような調味料

ソムロー・マチュー・ジュオン

◾️ 地域の気候にマッチした食文化

また、熱帯特有の高温多湿の状況では、食が細くなりがちです。発酵食品や甘酢を使った酸味の多い調理法は、食欲を増進させるとともに、筋肉の疲労を解消します。酢酸やクエン酸は疲労物質(乳酸)を水と炭酸ガスに分解して体外に追い出す働きがあるからです。当時の人々が生み出した生活の知恵なのでしょう。

なっとく!

日本でも、夏バテ対策として、さっぱりした甘酸っぱい料理が好まれますよね。

次回は、カンボジアを含むインドシナ地域が鍼(ハリ)治療のルーツであったことを述べた文献をご紹介します。

◾️ 黄帝内経とは?

黄帝内経(こうていだいけい)
 前漢代(BC206−AC8年)に編纂された現存する中国最古の医学書。黄帝という伝説上の皇帝と数人の学者との問答形式で記述されている。陰陽五行説などの東洋哲学をベースとした基礎医学理論を説明した『素問9巻』と、別名「鍼経」と呼ばれる実践編『霊枢9巻』の2部で構成。
中国、韓国、日本をはじめとする東アジアの伝統医療に多大な影響を与えた。各国で現代語に翻訳され、今もなお治療を行う実践者の「バイブル」となっている。中国大陸には原本はおろか、写本の大部分が散逸し残っていなかったが、昭和中期に正倉院で写本が発見され話題となった。

◾️ この記事について

フリー情報誌[Phnom] 伝統医療でGO! (2014年11月号)

◾️ 筆者とカンボジアの伝統医療(ここ見て↓)


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