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晩酌

毎日欠かさず晩酌をしている。
一人の夜や一人の旅先で飲むことは滅多にない。
そもそも酒に強くない。
すぐに赤くなって、人一倍呑んだような顔になるのがハシタナイ。

独身の頃の職場の飲み会で、ちょっと大きな声では人に言えない失態をやらかしたこともあった。
それで、自分にとっての適量を知ることができた。
ビールならせいぜいコップに二杯、500の缶は持て余してしまう。
弱いでしょ?

それにも関わらず晩酌を欠かさないのは、夫に付き合っているのである。
夫の一番の楽しみは、仕事が終わって帰宅して一風呂浴びてからの晩酌に違いない。
何かの会合でない限り、外で飲んで帰ったのは数えるほどしかない。
外ではさして飲まないし、食べもしない。

夫も酒が強いというほどではないと思う。
私の父は下戸で家には酒が置いてなかったから、どの程度を大酒のみと言うのかよくわからない。
自宅以外、実家での新年会や町内の運動会の直会などで、夫が正体不明になるまで飲んだのを見たことは無い。
そこまで飲むのはむしろ酒に弱いのか?

顔色ひとつ変わることなく飲み続けるのを「あの人はザルだ」と言っているのを聞いたことがある。
そんなのが酒に強いと言うことなのか。

夫はずっとビール麒麟ラガー一択だったが、肺癌の手術の後一滴も飲まなくなった。
退院後、薬を飲むなら酒は飲まないだろうと、特に打ち合わせをしたわけではなかったが、夕餉にビールを出さなかった。

だいぶ経ってから私は用があってニ、三日実家に出かけ夫は留守番をした。
ちょうど夕飯時に帰宅すると、スーパーで買ってきたらしい惣菜パックを並べたテーブルに、見慣れない缶が置いてある。

これ買ってみたんだよ。
けっこううまいぜ?
おまえも飲んでみろ。

350の缶チューハイである。
私の留守の間に買い物に出て、思いついて買ったらしい。
ようやく、酒を飲む気になったのだなあ…

以来その銘柄の缶チューハイが晩酌の定番となった。
はじめは350を二人で分け合っていたが、今は500➕αだ。
αはない時もあるし、350のときもあるが、500はない。

デュラレックスのグラスに氷をめっいっぱい入れて注ぐのが夫の好みで、アルコールはかなり薄くなっているはずだ。

私はついこの間まで三杯めまでおかわりしていたが、最近は二杯でやめている。
酔いが回って眠くなり、無理に立っていられなくなった。
この間食器を片付けられず、次男がやっておいてくれた。

次男も、長男も三男も晩酌をしない。
私の父も義父も下戸だったから隔世遺伝かもしれない。

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