遠い目
遠い目になったことがありますか?
遠い目をしている自分の姿を見ることはまずないと思います。
なぜなら、遠い目をしているので、至近距離で鏡の中の自分の目を確認することができません。
遠い目をしている自分を見ることができるのは、遠い目をしている私を誰かが撮影して、見せてくれた時以外にありません。
だから、自分が遠い目をしているのかどうか、ほんとうはわかりません。
それなのに、遠い目をしていた実感があります。
死んだ飼い犬の話を夫とすると、私は決まって遠い目になります。
なぜわかるかというと、一瞬、ほんの一瞬、空白になるのです。
直前まで、犬のことを思い出して、夫と共通の思い出話をしていたのが、ぷつりと途切れます。
何も考えが浮かばず、言葉も出ず、ぼんやりとします。
目を開いて呼吸をしているのに、何も見ていないし何も考えていない。
我にかえると、もう犬について話しをしないので、犬の話はいつも尻切れとんぼに終わります。