アマガエルの置きみやげ
まだ九月だというのに今年は秋が早いのか、早朝は長袖でも肌寒い。
10月の体育の日のくらいまでは、衣替えをスルーして半袖で良いくらいだ、と思い始めたのはいつの頃からだったか…
けれども最近は、夏があまりに暑いせいか、お盆を過ぎて虫の声が聞こえると、凌ぎやすさを感じる。
今日も暑かった、ではなく、今日は暑かった、 まだ暑いでなく、暑い日もある、と考える。
気象変動しているならしているなりに、四季は四季で巡るのだと思う。
秋の彼岸には長袖シャツが恋しくなる。
そう感じるのは、歳を取って体感温度が鈍くなったせいなのか、歳を取って目まぐるしく月日が流れるので、数年前の記憶をつい昨年のことのように感じるせいなのか、よくわからない。
いずれにしても、暑ければ脱ぐし寒ければ着るだけのことだ。
そんな肌寒さを感じた昨朝。
いつものウォーキングのシメのお参りで、神社の本殿を囲む瑞垣の固く閉じられた門の桟のところに、まだらな灰色の小さなモノを見つけた。
本殿のほぼ正面の、瑞垣の門の桟のちょうど中間あたりを狙ったように置いてある。
不遜にも誰か小石を置いたのか?
本殿に向けて小石を投げるなどということはちょっと考えづらい。
桟の巾は目算で5cm程度、格子に組んであって、空間は15cm四方くらいしかない。
少し遠くから、たまたま投げた小石が、うまい具合に瑞垣の門の桟に乗っかったのか…
夜中に狐が現れて、賽銭の小銭代わりに小石を置いたとか…
まさかね。
少し近寄ってみた。
これは…
アマガエル?
経年変化の銀灰色の桟と同じ色になっている。
石と見間違えたから、これなら誰かに食べられたりしないだろう。
それにしても無防備だ。
至近距離に迫っているのに微動だにしない。
それをいいことに、アングルを変えて撮ってみる。
びょーんと、いきなりこちらに飛びついて来たらどうしよう。
私は虫も両生類も苦手なので、できるだけそばに寄らないようにしているのだけれど、こやつはじっとしているので親近感を持った。
さては急に気温が下がったので、動きが鈍くなっているのか。
かすかに喉の辺りをピクピクと、小刻みに膨らませたり縮めたりを繰り返している。
このまま本殿を拝んだら、カエルを拝んでるみたいだぞ?
そうは思うが、動かすほどのこともない。
チャリーンという賽銭を投げ込む音にも反応しない。
なかなか人馴れしているカエルのようだ。
狛犬よろしく石の置物になって、神様を守っているつもりなのか…
今朝。
昨日の出来事はすっかり忘れて、本殿の前に立つ。
そう言えば、あのカエルはどうなったろう?と目を凝らす。
これは…
門の桟の木目模様からして、昨日のカエルが止まっていた箇所に間違いない。
黒いのはフンだとわかる。
だけどこの、あの保護色と同じ色のカケラは一体なんだ⁇
まさか干からびたわけでもないだろう。
カエルを捕食するのは誰だろう…
カエルの天敵は、
残されているものからして、鳥やネズミなどの小動物の仕業とは考えにくい。
オオキベリアオゴミムシ、というのがいる。
らしい。
ネットでいろいろ調べてみた。
あんまり怖いので、追求するのをやめた。
明朝また忘れて、本殿を拝むだろう。
再びあのカエルに会えることを期待する。