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大宮ステーションビル〜まぼろしの味

いつも読ませていただいているあさのしずくさんの最新記事から思い出したことを。
あさのしずくさん、ありがとうございます♪

学校のふもとのインド風スパゲティ…
いったいどんな料理だったのか気になります。
現地入りしてご近所を当たるなどすれば覚えていらっしゃる方が見つかるかもしれません。

実は私にも「あそこのあの店にアレ、あったよね?」と誰かと確認し合いたい幻のメニューがあります。
今日はそんな話を…


高校を卒業して一年後の春に、19年間暮らした、というか幼少期から学齢期を過ごした大宮(さいたま市)を離れ父の実家のある千葉県に引っ越した。

生まれ故郷ではないけれど、子ども時代を過ごした大宮は私のふるさとの町だ。
とは言え住んだのは十代までのことで、自分で稼いで自分の足で赴くまま町を歩く大人になるころには離れてしまったから、狭い領域の浅い記憶しか残っていない。

親に連れられて買い物した店や、せいぜい学校帰りの寄り道先を覚えているだけだ。

高校は大宮駅始発の京浜東北線に乗って二駅三駅のところだった。
仲の良い友だちが高崎線の鴻巣まで帰るのに、一緒に大宮で下車して遊ぶこともあったが、休みの日に遊びに行くのは(学校をサボって行くのも!)新宿や原宿方面で大宮じゃなかった。

こうして考えると、最も大宮の町をうろついたのは中学時代なのかもしれない。
同じ校区の友だちと南銀座通りに映画を観に行ったり、今は跡地がカプセルホテルになっている中央デパートでノートなど文房具を買った。

五十年前の大宮駅東口(西口は何もなかった)を出て大栄橋の方に向かう通りには『やすな』という洋品店や楽器店、書店など連なっていた。
『やすな』にはMCシスターのカラースリムパンツが各色揃っていて、原宿の古着屋にあるみたいなサーキュラースカートが置いてあった。

すでに撤退して久しいらしいが、私が中学の頃に東口に高島屋が出店した。
高島屋の隣の路地にたしか『ポム』という小さなセレクトショップがあった。
量販店にはないようなデザインものが置いてあったが値段が安かったから、どこかのショップの型落ちや売れ残りだったのかもしれない。

さて本題の思い出の味である。
大宮駅ビル(大宮ステーションビル、今はルミネかな?)の地下の食料品売り場の片隅に、カウンターだけの焼きそばの店があった。
そこに、家族でも友だちでも誰かと一緒に行った記憶がない。
一人で町をぶらついてお腹が空いて、帰りがけ私鉄に乗る前、腹ごしらえに少ない小遣いで立ち寄る手頃な店だった。

カウンターの上に直径二十センチメートルくらいの、表面に横に凹凸のついた缶が置いてある。
その中に、とうもろこしだけが判別できる具材の、少し濃いクリーム色のソースが入っていた。

そのソースを、希望する人は焼きそばにかけて食べることができた。
ややこしい書き方をしてしまったが、つまり無料のソースだった。
私はいつもそのソースをかけて食べて、それがほんとうに美味しかったのだ。

その店を利用していた頃は特に何とも思わなかった。
高校生になって大宮の町から遠ざかり、千葉に引っ越してずいぶん経ってから思い出した。
けれども、母や妹たちや中学の同級生の誰に聞いてもその店の存在を知らないと答えた。
確かめてみようと、機会を作って大宮に立ち降りたときには、すでに駅ビルは改装されて跡形もなかった。

あの店はほんとうにあったのかしら?
そんな焼きそばのソースは、他のどこかの店にもあるのか?

ホワイトソースのレシピで再現してみたこともあったが、全く違う味がした。

今となっては記憶の中だけの幻の味なのだ。

※ヘッダーは2019年11月の大宮氷川神社

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