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暇つぶし
一昨日四十年も昔の痛勤の思い出を書いた。
片道一時間三十分、往復三時間余りの通勤時間は長かった。
会社は新宿にあり、小田急線の足柄山から通っている先輩と「いい勝負だね」と言われていたが、あちらは心外だったかもしれない。
ある時定期券を紛失して自腹を切ったことがあった。
半年で九万幾らかだった。
当時の私の手取りは九万円足らず、ひと月に一万五千円も交通費をかけて雇う価値があるかしら…なんて思った。
バスで三、四十分のところに支店があったが異動願いを出さなかった。花の新宿にこだわった。
長い通勤の時間つぶしに本を読んだ。
キオスクで買った文庫本や週刊新潮、週刊文春をよく読んだ。
そうしていれば少しは気が紛れた。
近ごろ上京して電車移動すると、たいていの人はスマートフォンを見ている。
かつての私のような長い距離を移動するのは少数派だろうが、もし当時スマートフォンがあったら、楽しく過ごせたろうなあと思う。
SNSで誰かと話すこともできるし、本も読める。
旅行のための乗り物や宿の手配や、雑多な用件に帰宅後電話で時間を取られるところを、オンラインで済ませておける。
そうして時間を空けて、帰宅してからもさらにスマートフォンを覗くのだろうか。