夫に頼る
昨年玄米収納庫を買い、夫と二人で階段下の物入れに設置した。
夏を越して、ここは風通しが悪く適さないことがわかったので新米が来る前に場所を変えようということになった。
廊下の突き当たりの北側は日は当たらず風通しがよく、冷、暖房器具を使わないので急激な温度差による結露ができにくい。
ところがそこには、主に夫が使うDIY道具を収納したタンスが置いてある。
ガレージを買った当初から、そっちに移動して欲しいと再三要望したのに聞き入れられなかった。
その隣には、背の高いスチールのランドリー収納庫が置いてある。
かつて脱衣場にあったが今は別のものを使っている。
幅奥行きとも40cm足らずだが180cmの高さで処分するのも面倒なのだ。
大したものは入っていないし、中のものを移動する箇所はどうにでもなる。
これは捨てるわ。と私。
なんで?中のものはどうするんだ?と夫。
大したものが入ってないのよ。
この際だから、無くなればスッキリするわ。
すぐ捨てるというけど、壊れてもないのだから活用することを考えろよ。
あーまた始まった!
不要なものを保存している方が無駄なのよ!
いい、俺がやるからあっち行ってて。
私はこのところ足首の調子が悪い。
日常生活にはさほど困らないが力仕事は難しい。
結婚して以来、家具の移動や収納管理は細部に至るまで私一人が仕切ってきた。
どうしても一人で移動できない場合は私が指示して手伝わせるという感じで、夫の意見などないものであると疑ったことはない。
夫は何もしてくれない…と、見方を変えればそうなるが、要は一人で仕切りたいのだ。
お互い歳をとってきて、私一人でできることが減り、夫も遮二無二仕事一筋で無くなってきたころ、そう、夫の趣味のバイクいじりのためのガレージを建てることになったころから、二人でやることが増えた。
古い物置を解体して、収納されているものをいるもの、いらないものに分けるのを二人で話し合った。
呆れるほど出てきた不用品は業者を呼び処分した。
これまでは節約のため、何度もリサイクルステーションに通ったものだ。
二人で行うと喧嘩もするが楽しいこともある。
何より、捨てる判断を分かち合えるのが気が楽だ。
私は押し入れの夫の衣装箱にあった、夫の高校時代の野球部のユニフォームを捨てたことがある。
どうせ結婚してこの方持ち物を管理したことなどないのだから、無くなってもわからないだろうと思ったのだ。
ところがどういう加減が知られてしまった。
後ろめたさから自ら話したのか…
責められはしなかったが、その分申し訳けなく思った。
それ以来どんな小さなものでもゴミにしか見えないものでも夫の持ち物は保存している。
そして時々嫌味を言う。
お墓の中まで持っていく気なのよね〜
足が痛いのと、意見が合いそうにないので今回は夫に任せて口出しを一さいしなかった。
鼻歌まじりにミシン作業に熱中していると、階下から夫の呼ぶ声がする。
おい、見てみろよ、とにかく。
上機嫌である。
背の高いランドリー収納庫は、脚下の出っ張りをグラインダーで削り、階段下にピッタリ収めてあった。
大工道具が入ったタンスはガレージに移動された。
玄米収納庫はお目当ての位置に収まり、上に私の手作り梅酒や梅干しが並べてあった。
可愛かったのは、これも私が捨てるつもりで箱に投げ入れていたところから夫が救済したお人形が、これまた捨てるつもりのシングルレコードケースに、まるでマンションのように飾られていたことだ。
夫はケチなのでも捨てられない病なのでもなく、形あるもの、関わったものを愛おしむ人なのだと思った。
私はこれから家事を仕切らず夫に頼ろうと思っている。
そのうち、
ハサミどこ?
なんて訊くようになるかも!
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