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いい奴/『夕暮れ』THE BLUE HEARTS

夕方五時半。
出先から会社に戻る営業車や、家に帰る人の車のラッシュが始まる。
日の暮れの薄暗がりは意外に見通しが悪い。
ライトを点灯させている車に挟まれた無灯火の車や、黒っぽい服を着た歩行者や高校生の自転車は薄闇に紛れてしまう。

この時間帯の外出はなるべく避けたいけれど、のっぴきならぬ事情があるから仕方がない。

建物は交差点の角にあって、信号待ちの車が連なりなかなか駐車場から出られない。
青になって流れ出しても、私は右に出るので反対側の通行にも注意しなければならない。

右からの車が来ないので、左方向からの車の列が途絶えるのを待っていた。
それが憎らしいほど連なっているのだ。
信号が赤になれば、駐車場出口が塞がれてしまう。

諦めて、少し大回りになるが左に出ようと方向指示器を左に切り替えた。
直後、一秒もないくらい直ぐに、左から来ていた4tトラックが減速してパッシングした。

譲ってくれたのがわかったので、方向指示器をまた右に切り替えつつハンドルを切り、駐車場を出て短くホーンを鳴らした。
ありがとうの合図。
暗くて見えないだろうけれど頭も下げた、というか、自然に下がる。
条件反射みたいなもの。

帰宅してご飯を作っていると、いつもより遅く夫が戻った。
そして言う。

今日、道を譲られただろう?

え、なんで知ってるの?

だってオレだもん。

あのトラック、あなただったの⁈
私だって分かったから譲ってくれたんだ!

わかってなかった。
後からついて走って気がついた。

へえ…
あなた、いい奴なんだね。

あたりまえだ!

ギャフン(死語)


※ヘッダー画像は北海道宗谷本線和寒駅前です。
うちの近所ではありません。

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