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余計なことを言う

家電いえでんにクリーニング店から電話があった。
三週間くらい前に羽毛掛け布団を二枚出したのが、できあがってきたという連絡だった。

以前この店では、受け取りに行くのをうっかり忘れて怒られたことがある。
電話で直ぐにでも取りに来るよう言われて駆けつけたカウンターで、臆面なくに睨まれ苦情を言われた。
むかっ腹が立ったのーで、

おのれ…客に対してその態度はなんだ!

と、思ったが言わなかった。
現実に口に出したらモンスターカスタマーである。
さっさと受け取りに行かない私が悪いのである。
お客様は神様じゃない。

しかしおかしいのは客に対しての口じゃない、人に対しての口だ。
そんなことを言っても仕方がない。
平謝りに謝り退散して以後店を利用するのをやめた。
もともと自宅から遠い店で不便だったが、なんとなく好きで通っていたからサービスポイントも貯まり、それなりに馴染んでいたのだ。


行かなくなって数年、再び出向いたのは、出店しているスーパーが新装開店した記念にクリーニング料金の半額セールを行っていたからである。
半額には勝てなかった!

けっこう年季の入った羽毛布団で、無駄に豪華な刺繍入りだからコインランドリーで洗えないのだ。

受け付けたのは怒ったのではない店員だった。
できあがったら電話しますと言われた。

しかしできあがりの電話をかけてきたのは怒った店員であった。
略して怒店おこてん

怒店おこてんは、

預かっていた羽毛布団がきたので、取りに来てください。

という。

そうですか、お世話様です。
早いうちにうかがいます。

と応える。
怒られたことを根に持っている感じが、「早いうちに」に込められている。


すると怒店おこてんは、

何回か電話したんだけど、出なくて。

という。

知るか!
私ゃ電話番じゃねえんだし。

と言いたかったが、

それはすみませんでしたね。

と謝る。

やはり前に怒られたことが堪えているらしく、我ながらむやみに低姿勢だ。
家電しか知らせていないからそんなことになってしまった、私が悪いのか?
私は悪くないという思いが語尾につけた「ね」に込められている。

翌日受け取りに行くと怒店おこてんはいなくて、別の店員が渡してくれた。
何回か電話したとか、また言われるかもしれぬと身構えたが(小心者)余計なことを言われずに済んだ。

稀にそういう、伝えても何の得にもならないことを言う人がいて、私のような気弱なお人好しは、自分が悪いような気がしてつい謝ってしまう。

不愉快だからと顔や言葉に出すのもそれこそ生産性がない無意味な行為に思える。
そんなふうに、気持ちの赴くままに生きるのは素晴らしい特技だ。
私ときたらせいぜい、ここで愚痴をこぼすくらいなもんでさあ。


※ヘッダー画像はポピットさんよりお借りしています。
ありがとうございます♪



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