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長男の里帰り

昨年10月から育休中の長男が里帰り(死語?)している。
はじめは、3月末に三歳になる長子を連れてくる予定だった。

長男家族は一昨年の5月に三男の結婚式に参列するために来たきりだ。
そのときはまだ長女(孫)は生まれていなかった。

私はたびたび上京して孫たちに会っているが、夫の方は日程が取れずこの正月休みを使ってやっと長女(孫)に、一年七ヶ月ぶりに長男(孫)に会えた。

父も正月に孫たちに会えたし、ということで今回の里帰りは長男一人となったのだ。

単独里帰りになった事情はそれだけではない。
長男の妻が夫に二歳の子どもを託して旅に出すのを不安がったらしい…

長男は第二子の出産に合わせて約三ヶ月、出社の必要がない完全育児休暇を取り(取らされ?)、育児を分担しているという。

具体的には、夜は一日交代で新生児と同伴する、洗濯や炊事など家事を分担する、長子の世話や相手も分け合っているとのことだ。

いうまでもなく、私と夫が子育てをした時代とは全く事情が異なることは、同世代であれば想像がつくと思う。

私は里帰り出産をせず、義母が手伝いに来てくれたが三週間ほどで帰ったので、それからはまさに孤立奮闘の日々だった。
夜は翌日仕事の夫を起こさないように一人で授乳やおむつ替えや寝かしつけをしていた。
そしてそれを当たり前に思っていた。
そういう時代だったと思う。

しかし長男は会社から休みを当てがわれ、育児に専任することが認められている。
それでもやっぱり任せてもらえないのは、長男があまり育児が得意でない、あるいは妻から上手でないと思われているからだ。

常々思うが、育児にせよ家事にせよ、性別は関係なく得意不得意がある。
細かく分ければ、掃除は得意だが炊事は苦手、授乳は好きだが遊んでやるのは苦手、というように。

夫が何もしないという声を聞くときに、特に性別役割分担でもないものを、ことさら性で分別しているんじゃないのかなあと思うことがある。

また、友人同士にしても夫婦にしても、片方は自分のやることに絶大な自信を持っているその場合、片方はどちらかというと従う感じの方がうまくいくと思う。

ただその強度というか傾き加減というか、どちらかに強く比重がかかってしまって、亭主関白(死語?)とかカカア天下(死語?)などと称されていたんじゃないのかなあ…

いやいや、お互い率直に意見を出し合い平等に物事を進めていますよ、というカップルやペアもいらっしゃるだろうから必ずとは言わないが。

実際夫婦の"中のこと"は当人同士にしかわからない。
外見では亭主関白(死語?)でも実際は妻が主導権を握っていたり、気の強そうでも夫に依存している妻なんてこともあるのかもしれない。

長男はほんとうに子どもを連れて実家に行くことが困難なのかわからないが、不安そうな妻を押し切って連れて出るほどの熱意はない、つまりそういうことなのだ。

そして留守番の妻も、二人の子どもを一人で見ることはせず実母を要請している。
一人でも大丈夫かも知れないが、そんなに頑張ることもないのである。

私は実家も遠い核家族で今で言うならワンオペ、手助けがなかった分一人で好きなように子どもを育ててきてしまった。
そんな弊害ももしかしたらあるのかもしれない。
でも何も誰もがみんな理想的な育ち方をしなければならないってこともないと思う。
元々ひとり親の人だっているのだし。

長男は一人で里帰りしてひととき、育児から解放されたわけで、妻や妻の実母に感謝していることだろう。

思えば第二子出産以降三ヶ月間、寝ても覚めても夫婦と二人の子どもと四人とで、朝から晩まで顔を付き合わせていたのである。
こんな言い方をしたら殴られそうだが、自分なら息が詰まりそうである。
夫がいない昼間、清々と過ごしていたのを否定しない。

さりとて妻の方は子どもとは離れられていないわけで不均衡である。
しかし妻は子どもを夫に託すことができないのだ。
夫抜きで母親と、水入らずの時を過ごしているかも知れない。
親から子どもに戻る、大人になってもそんな時間が必要なのだ。

自分の感受性を他人に委ねないのが幸せの秘訣なのだと私は思う。

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