【オーディブル】逆ソクラテス/伊坂幸太郎
主人公が小学生なので児童文学なのかと思ったが、現実の小学生があらまし理解するには一部の子を除いて難しいだろう。けれど小学生が語る文体なのだ。
大人である作家がよくぞここまで子どもの気持ちになれるものだと思った。
大人が考えた、大人が想像した子どもの気持ちや発言はたいてい、いかにも大人が好きそうに子どもらしかったり逆に大人びている。
私とてすでに古参の大人であるから、子ども時代の気持ちなんてすっかり忘れているのだけれど、違和感なくリアルな子どもを感じ取れるのが面白かった。
作家の年代からしてそう古い話ではないのに普遍的なものを感じた。
ごく最近この十年くらいの間に書かれたと知りちょっと驚いた。
子どもの頃に抱いた違和感や言葉で表せなかった本当の気持ち(大人になったからと言って表明してるわけじゃないが……)がここにちゃんと書いてある。
爽快な読後感と、してやられたというような、よくわからない敗北感の正体はこれなんだろう。
※ヘッダーのイラストは 玉三郎さんよりお借りしています。
ありがとうございます♪