
ギター
ひさびさの雨の朝、午後からはギターのコンサート。
次男が広島に遊びに行ってギターを買った。
チューニングを済ませたギターが宅配で届いたのだ。
(一階の)客間に置いておくから、母さんたちも好きに弾いていいよ。
と言う。
いや父さんも母さんもギターを弾けないんですけど。
結婚した時、夫が実家から持ち込んだ荷物の中にギターがあった。
夫は小中高坊主頭の野球一筋で楽器演奏なんて柄じゃないのである。
あれはいったいなんだったのか?
実は私も中学の時に、白いギターを買った。
半世紀前、大宮駅東口を大栄橋方面に向かう途中に楽器屋があった。
レコードもその店で買っていた。
白いギターにしたのは、チェリッシュに憧れていたわけじゃなく安かったからだ。
けれども、持ち帰ってチューニングをしている最中に弦が切れてしまった。
ギターを弾く友人もボーイフレンドも親戚もおらず、誰にも相談できないままギターは無用の長物と化した。
何故か結婚する時にも荷物に紛れ込ませていた。
そんなわけで次男が子どものころ、ウチの押し入れにはギターが2本もあったのだ。
父さんも母さんも弾けると思うのも無理はない。
次男も弾けると言うほど弾けるわけではない。
中学三年の文化祭で、将来の夢がミュージシャンであった幼馴染に、なかば強引に引っ張られる感じでベースギターを演奏することになった。
夫の甥が大学時代バンドをやっていた。
私にはよく種別のわからないギターを複数持っていて、そのうちの一本を気前よく次男に譲ってくれた。
私は体育館で最前列を陣取って演奏場面を激写した。
次男はとうとう一度も顔を上げることがないまま演奏を終えた。
次男を誘った幼馴染のSmoke on the Waterは音程を外して、叫び声ともにつかぬ歌声だった。
唯一、お寺のあと取りで自宅にスタジオを持っているドラムの子だけが、腹に響く演奏を聴かせた。
幼馴染はミュージシャンを育成する大阪の専門学校に進学したが、メジャーデビューの話は聞いていない。
次男はその後陸上一筋で、楽器に触れることはなかった。
中三の文化祭は、唯一キラキラな青春の一片である。
あの時のベースギターは押し入れに眠ったまま。
休日庭に出ていると、次男が部屋でギターをつまびく音が聴こえてくる。
メロディにはなっていない。
ギターの音色が身近にある暮らしというのもいいものだなあと思う。
※ヘッダーの素敵なイラストは A telier hanami@はなのすさんよりお借りしています。
ありがとうございます♪