駅内ぶつかり男
少し前に、駅の中で男の人がわざと女性にぶつかりに行くという騒ぎが記事になり、X上でも私も、私もという声があがっていた。
かくいう田中も、その被害に遭ったことがある。
今日はそんな話からしよう。
ある日の田中は、そこそこ人込みの多いとある駅にいた。
何分の電車に乗ってこの駅で乗り換えて~なんて乗り継ぎをチェックするためにスマホを見つつ改札に向かっていたわけだ。
すると左腕にどでかい衝撃が走った。
田中が驚いて顔を上げると、少し体格の良い中年の男が通り過ぎていくのが見えた。
フン、と鼻を鳴らしていた音だけ、こんな雑踏の中なのに良く聞こえたことを覚えている。
腕はじんじんと痛くて、私は何が起こったのか分からなくて暫く立ち尽くした。
田中は考えた。
確かにスマホを見ていたわけだから「ながらスマホは駄目に決まってんだろ」と言われるのも分かる。
これは田中が悪いだろう。
そりゃまぁ、乗換案内調べながら駅構内歩くなんてすごい沢山の人がしてるじゃん……と思わなくはないが、悪いものは悪いわけだ。
そうして田中は、ぶつかり男のことを考えた。
あの人は、何を思って私にぶつかりに来たのだろう?
そもそもあの人にとって田中はただの背景で、人混みのいちに過ぎない。
通り過ぎるだけの存在であるにも関わらず、自ら「ぶつかりに」行ったのだ。
それはある意味、自ら関係値を作りに行っていることになる。
ではなんのために?ここからが問題だ。
田中が絶世の美女だったりするならまた話は別だろうが、悲しいがそんなことは全くない。
いわゆる男尊女卑問題、フェミニスト問題も例のぶつかり男の記事では話題に上がったが、そこで語りつくされているであろうから敢えて田中はあまりここには踏み込まない。
田中がここまで考えを巡らせた時に行き着いた答えは「寂しいのではないか」ということだった。
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