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「ちょっと聞いて」が生む変化

赤羽雄二さん『自己満足でない徹底的に聞く技術』で書かれている
アクティブリスニングを実践中の畑中です。

7月28日(金)に「夏会」というイベントが開催され、赤羽雄二さんのオンラインサロンメンバーの方たちが約80名集まりました。北海道や北陸、関西、九州など全国各地の方たちとリアルでお会いし、普段は、SNS上でつながっている方と直接お話できる機会にもなり、とても楽しい時間でした。

その「夏会」の開始早々、ロールプレイがありました。
「カンパーイ!」で始まらないのが、赤羽さん流??


3分ロールプレイ、2分フィードバック 3セット(話し手・聞き手・オブザーバーを順次交代)の世界最速のロールプレイです。

私は、近くにいらしたアクティブリスニングエバンジェリストを含めた3人グループでロールプレイをすることになりました。

アクティブリスニングのエバンジェリストが、「聞き手」のときに、私は、「オブザーバー(観察者)」をしました。

「話し手」が、
・仕事の大変さ、忙しさ
・正社員ではなく、パートの方が多いことの大変さ
・リーダーなので余裕がないといけないが、仕事を抱えこみがち

といった実生活での仕事の話を事実ベースでしていました。

とそのとき、

「聞き手」が、
「リーダーは、つらいね!」と一言、相槌を打ったんです。


「話し手」は、「つらい」とは一言も、言っていなかったのですが、話を聞いて、言葉にはならない、でも確実にそこに潜む感情を、さっと言葉にして伝えると、

「話し手」は、顔に手をあてて、一瞬だまったかと思ったら、ぱっと顔から手を放して、「もー!!ほんと!そうなんです」と、さらに話をし続けていました。

事実と感情をセットで聞くのは、よくスキルとして紹介されます。
「話し手」が口にしていない気持ちを言葉にして、相手に伝えるのは難しいものですが、このあたりは、想像力と経験値なのでしょう。すばらしい実演を見せてもらえました。

そして、「夏会の2次会」で、赤羽さんとテーブルが一緒になったときに、
「アクティブリスニングの素晴らしいブログを書き続けていますが、5歳の娘さんに、『お母さん、ため込まないでひとつひとつ伝えるんだよ』と言われているようだから、娘さんに電話して『お母さん、我慢して聞いてない?』と確認しようかな」と、ツッコまれました。

このブログをお読みくださってのコメントですね。

「夏会」でお会いできたサロンメンバーとのお話や、「夏会の2次会」で赤羽さんからのツッコみをうけ、アクティブリスニングをさらに精進していこう心を新たにしている今日このごろです。

大体は聞けている

「聞く」のヒントを求めて、『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)を読んでいるとこんなメッセージがありました。

 「聞く」は、日常ではほどよく上手くいっています。僕らはそれなりに人の話を聞けている。
 だから、普段は聞いていることを感謝されることもないし、自分でもちゃんと聞けていることに気づきません。こういうとき、「環境としての聞く(※)」が機能している。
 誰かに「本当に聞けていますか?」といわれてもビビッてはいけません。大体は聞けているんです。
 自分に厳しくなりすぎても、ロクなことがありません。神経質になってしまって、余計に聞けなくなってしまう。
 だから、自信を持ってください。
 ただし、ときどき「聞く」が失敗するのも事実
です。
 自分のことに必死で、相手のことにまで考えが及ばないこともあるし、相手の好意に甘えすぎるときがあります。
 そういうとき、「全然聞いていない」と声が上がります。「まったくわかっていない」と怒られるかもしれません。
 気合を入れないといけません。日常は崩れて、緊急事態がやってきています。関係がこじれ始めている。
 僕らは改めて「聞く」に取り組まないといけなくなります。

『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)P.65

(※)環境としての聞く
ウィニコットという精神分析家のアイデア。

「対象としての母親」…あなたが今、心に思い浮かべる母親の姿。
たとえば、母親はこういう人とか、こんな思いであるなど。

「環境としての母親」…あなたに気づかれず、意識されない母親。
たとえば、タンスをあけると洋服が綺麗にしまっているなど。

「環境としての母親」は、普段は気づかれない。
けれど、失敗したときだけ、気づかれる。

たとえば、タンスに洋服がしまってなかったら、「あれ、お母さん、洋服ないよ~」と母親を思い出す。
ちゃんとできているときは、存在を忘れられ、ちゃんとできていないときだけ存在を思い出される。つまり、感謝もされないくらい自然にできているときは、お世話は上手くいっている。

「環境として聞く」ができているから、感謝もされない。つまり、感謝されないほど、当たり前にやっているけど、当たり前じゃなくなると、「聞いていない」という声が出る。

確かに、「大体は聞けている」と言われれば、聞けているときの情況もいろいろ思い出すことができます。

「アクティブリスニングが、できるようになりたい」と常々思っているので、できなかったときに「失敗したなぁ!」と強く印象に残りますが、できていることにも、着目して、自分にポジティブフィードバックしながら、リラックスしてみると、好循環がまわりそうです。

失敗について、こんなことが書かれています。

 ですから、「ほどよい母親」とか「ほどよい電力会社」とか「ほどよい政治」が機能しているときには、「聞く」はそれほど問題になりません。
 失敗したことを詫び、すぐさま原状にも復すれば、それで話は済みます。失敗したことは忘却されていきます。

『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)P.67

「聞けないときは、聞いてもらう」

孤立しているときには、話は聞けないけど、孤独になれるならば話を聞くちからが戻って来る。

『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)P.90

安定した仕事がある、心を許せる友人がいる、しばらくは住んでいられる家がある。こういった現実的なサポートがあって、心が脅かされていないときに、心の個室を手に入れて、安心して「孤独」になれるそうです。

逆に、お金がない、仕事がない、たとえそれらがあっても、生活が不安定なとき、まわりにたくさんつながりがあったとしても、心の中では悪い他者がはびこっていると、人は「孤立」に追い込まれやすくなるそうなのです。

ホームレス支援の世界で広がっている「ハウジングファースト」という考え方では、最初にハウジング=家を提供し、それから働く。ただ、働かなくてもいい。家を持つのは、人権と考えて、雨風をしのげる場所ではなく、自分だけの個室を提供するのが大事なのだそう。

最初から個室が手に入るハウジングファーストモデルの方が、ちゃんと働けるようになったら個室が手に入るというステップよりも、結果的に、働くことの障壁が下がるそうなのです。

 僕らが話を聞けなくなってしまうのも孤立しているときです。
 部下の文句を受け止めるには、上司自身がほかの善きつながりを持っている必要があるし、お母さんがお子どもの話を聞こうと思ったら、お母さんの話を誰かが聞いていないといけない

『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)P.119

わたしは、言ってもしょうがないことを他人に話すことを躊躇しがちな傾向があるので、言ってもしょうがないことでも、思っていることや考えていることを話してみるのは、聞けなくなってしまったときの脱出方法としては、ありなのかも知れません。

でも、そんな話を聞かされる方も面倒だし、迷惑では?なんて思いが出てしまうのは、回避型の愛着傾向があるからなのでしょうか。このあたりも、より整理できれば、我慢せずに聞くから抜け出せるかも知れません。

「ねぇ、ちょっと聞いて」のチャンスを作るための方法が書籍では紹介されていました。

聞いてもらう技術 小手先偏
日常偏
 1.隣の席に座ろう
 2.トイレは一緒に
 3.一緒に帰ろう
 4.ZOOMで最後まで残ろう
 5.たき火を囲もう
 6.単純作業を一緒にしよう
 7.悪口を言ってみよう

緊急事態偏
 8.早めにまわりに言っておこう
 9.ワケありげな顔をしよう
 10.トイレに頻繁に行こう
 11.薬を飲み、健康診断の話をしよう
 12.黒いマスクをしてみよう
 13.遅刻して、締め切りを破ろう

『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)P.125-126


これらは、「聞いてもらう技術」です。つまり、こういった様子の方は、聞いてもらう必要がある人なわけです。

あなたの半径5メートル以内を見渡して、あなたに余裕があるなら「なにかあった?」と尋ねてみる。あなたに余裕がなければ、「ねぇ、ちょっと聞いて」と話を聞いてもらう。

「聞く」「聞いてもらう」の循環で、人は、孤立から抜けだし、生きづらさが解消され、社会を動かす営みにつながります。

あなたから初めてもらえないでしょうか。
第三者として、あなたが誰かの話を聞いてみてほしい。それが、「聞く」がグルグルと循環するための最初の一方になると思うのです。

『聞く技術 聞いてもらう技術』(著:東畑開人)P.232

大切な人の「ねぇ、ちょっと聞いて」に、耳と気持ちをすっと寄せられるように、ニュートラルを意識して過ごしてみます。

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