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カリスマリーダーは本当に地域活性化に必要か★ 自治体の方々と、これからの地域事業者の支援を考えたい(6)

株式会社ただいまの佐藤と申します。これまで10年以上、地域の事業者さんの支援を手がけてきました。支援にあたっては、日本各地の自治体や、地域の金融機関さんや支援機関の方々とご一緒させていただく機会が多く、千葉、長野、京都、広島、福岡、長崎などで主に活動しています。

これまでの5回で「自治体の方々と共有させていただきたきたい、これからの地域事業者の支援の視点」について発信してきました。

今回のテーマは「リーダーシップと組織」です。

地域支援に関わる自治体の担当者の方から支援先への期待として、「支援後は自律的に活動してほしい」、「補助金などの支援が終わった後も、事業を長く継続して欲しい」といったお声をよく聞きます。

それを実現するためには、「対象となる顧客は誰か?」を定め、「その方たちに喜んで買っていただく商品やサービスを日々磨きながら提供し、その商品・サービスだけでなく、企業やメンバーのことも好きになってもらう」ことが大切です。そして、それと同じぐらい大切なのが、提供側の企業やメンバーの「組織づくり」です。

その際、なぜか「誰かこの組織を引っ張ってくれるリーダー、いないかな?」と、組織を率いる人材を組織の「外に」探そうとするケースが多いように感じます。ですが、やはりそう簡単には見つかりません。なぜか。外部からのそうした期待を背負えるだけの力量がある方は、すでに違う領域で活躍されていて忙しく、それ以上、何かを頼める状況ではなかったりするからです。それは、そうですよね。

でも、本当に、その組織にカリスマ・リーダーは必要でしょうか?昨年ワールドカップで盛り上がった「ラグビー」の世界を参考に「組織づくり」について考えてみたいと思います。今回の書籍は下記です。

『リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』です。

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「リーダーらしくないリーダー」といわれ続けた、中竹竜二さんの書籍です。

中竹さんは、日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターとして、日本のラグビーのコーチングをサポートされていますが、ご自身もおっしゃっている通り、いわゆる「カリスマリーダー」というタイプの方ではありません。ご本人も、何度か偶然街中で見かけたことがありますが、すぐには気がつきませんでした(申し訳ありません)

カリスマ的なリーダーに外部から来てもらって、他の人をグイグイ引っ張る。一見、即効性のありそうな方法ですが、「自律的かつ継続的な活動」という、望む結果から逆算した時、それは本当に効果的と言えるでしょうか。最良の方法でしょうか。

もしかしたら、その地域に必要なのは、「一人のリーダーに来てもらう」ではなく、集まった皆で意見を出し合い、共有し、議論して、よりよい事業や商品、サービスになるよう磨き続けることができる、そんな「組織をつくる」ことなのではないでしょうか。そう考えると「カリスマ的なリーダーを据える」ことが、イコール「組織をつくる」ではないことがわかります。

キーワードは、「リーダーシップ」を支える「フォロワーシップ」への意識

世界最高峰のチームと評価されるNASAにおいて、宇宙飛行士に求められる重要な素質の一つに「フォロワーシップ」があります。

人手不足が叫ばれるなか、NASAに限らずあらゆる組織において、構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供する運営が必要な時代です。ただリーダーの指示を待つのではなく、全てのメンバーが、組織における自分の役割を考え、自走するフォロワーとしての意識も持つこと。それが地域の組織にも必要だと思います。

もちろん、すべてのメンバーが自主的に行動し、その結果が組織に貢献する、というようにきれいにはなかなかいきません。私もそうした場面に何度も直面しています。でもこうした形がうまくいかないケースは、ほぼ「目的がはっきりしていないとき」「進む方向がブレまくるとき」でした。これは、はじめの目的の設定・共有がメンバー全員でしっかりできていないということで、リーダー一人の力量とはまた違う話だと思います。

また、リーダーは常にリーダーではなく、その立場は得意分野や場面によって、スイッチすることもあるでしょう。ラグビーでも、各ポジションの役割と並行して、ボールを持って前進する人、それをフォローする人、タックルして相手を止める人、それをサポートする人、というように、場面によってリーダーとフォロワーが入れ替わります。組織においても、場面や得意なことに応じて、メンバー一人一人が、リーダーとフォロワーどちらの機能も担える意識を持っていることが大切だと思います。

弊社も、地域の事業支援において、これまで10年以上取り組んできた、新商品・サービス開発から販路開拓、観光活性化などの新規事業から、「組織づくり」についての相談を受ける機会が増えてきました。そんななかで、私が地域の支援において、参考になると感じたポイントは、下記の点です。

あなたが組織のリーダー的な立場の時は・・・

1.最悪のリーダー像を描き、それを極力避ける
組織を考えるときには、優れたリーダーの条件を定義しがちです。が、逆に最悪なリーダー像を描き、「そうならないようにする」ために必要なことを考え、行動していくと、具体的な危機意識に基づく納得感があります。

ちなみに本書では、全国の公務員や会社員の男女への「働きにくかったり、愛想を尽かした上司や先輩」についてのアンケート結果が紹介されていますが、全体として「コロコロ意見が変わる」「考えがブレる」ことに大きな不満があるようです。であれば「少なくともこういうことはしない」という軸がブレずに定まることで、フォロワーは多少なりとも動きやすくなるのではないでしょうか。

2.リーダーとしてのスタイル(カリスマ性ではない)を確立し、難しい場面にはそのスタイルに立ち返り、必要な時はスタイルを進化させる
著者の中竹さんの場合は、P73でも紹介されている『VSSマネジメント(Visionを設定し、そのビジョンに向かうまでのStoryを描き、その裏側にあるScenario=台本を用意する)がご自分のスタイルだったようです。

いわゆる「リーダーの行動規範」に自分をべったりとあわせていくだけでなく、自分自身がブレずに取り組み確立できそうなスタイルを探し、小さくトライアルしていくことも重要だと感じます。

3.KNOW-HOW(ノウハウ)ではなくKNOW-WHY(ノウホワイ)を追求する
どうしても組織をまとめることが優先され「こうやる=HOW」「こうあるべき」といったことをメンバーからリーダーは求められますが、「なぜやるのか=WHY」をきちんとブレずにメンバーに確認し共有することが大切だと思います。

あなたが組織のフォロワー的な立場になったら・・・

1.リーダーは全てのメンバーの要求には応えられないことを理解し、過剰に期待しない

2.リーダーを追い込まない

「リーダーに過剰に期待すれば、一つ一つの発言が重くなってしまう」ことも役立つヒントでした。どれも普段、自分がフォロワーになった時に思わずやってしまい、結果、組織がうまくいかなくなってしまう要因になっているようにも感じます。

また、本書の内容とは少し外れますが、結局「誰をリーダーに選ぶのか」を迷ったとき、私は「素直に教えを請える人」「素直に謝れる人」「自分を過剰に大きく見せない人」を選ぶように助言する機会が多いです。

リーダー、といっても一人でなんでもやれるわけがありません。メンバーはもちろん、周りの方達から教えてもらうことがたくさんあります。そのリーダーが、周りの方達が「教えたくなる」人なのかどうか、とても重要な要素だと思います。「教えたくなる人」とは、やはり素直で自分自身に正直で、ブレていない人でないでしょうか。

地域の事業者の一人ひとりに目をこらし、行動を観察し、話を聞いてみると、実はいろんなことを考えている、見えないところで行動もしている、ことが多いと感じます。それらを「応援する」スタンスをしっかり取ることが必要に思います。

「組織論」「リーダーシップ論」をテーマにした書籍も多数発刊されていますし、人材活用や人事制度のプロフェッショナルもたくさんいらっしゃいますので、積極的にいろんなケースを収集し、ご自分の地域にあった方法を編み出されたら良いと思うのですが、もう一方で「強い組織をつくるリーダーには、誰でもなれる」という視点でも検討をしてみることをお勧めします。

今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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