経営学の知見:トップの仕事が大変だとイノベーション生まれない
経営者は、仕事が大変だと、目先のことに追われ、イノベーションが生まれなくなります。
そうはいっても、経営者の仕事をきつくしないで、というのは難しいですよね。
ではどうすればいいでしょうか。
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アリゾナ州立大学の朱らは、R&Dの集積地として知られる中国の蘇州市の企業412社を調べた。
(社員数は平均481人、売上は平均100億円)
#発見1 経営者の仕事の負担が大きいと、会社のイノベーションが低下していた。
ところが、次のことがあると、この低下を抑えることができていた。
・経営陣のジェンダー、年齢、在職期間のダイバーシティが高い
・規律のある企業文化がある
・社員の教育レベルが高い
#発見2 イノベーションを「小粒のイノベーション」と「大きなイノベーション」に分けると、経営陣の仕事の負担が大きいと、「大きなイノベーション」の割合が減った。
ところが、次のことがあると、この減少をおさえることができていた。
・経営陣のジェンダー、年齢、在職期間のダイバーシティが高い
逆に、次のことがあると、「大きなイノベーション」はさらに減少していた。
・規律のある企業文化がある
・社員の教育レベルが高い
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ダイバーシティが、歯止め効果になるという見方は新鮮ですね。
経営者の仕事がきついのはどうしようもないかもしれないけど、ダイバーシティは変えることができます。
もうひとつ、見過ごせないのが、「経営陣の仕事が大変で、かつ、社員の教育レベルが高いと、「大きなイノベーション」がさらに減る」という発見です。
教育レベルが高い社員は、手堅い「小粒のイノベーション」を狙いにいってしまうようです。
Zhu, D. H., Jia, L., & Li, F. (2021). Too Much on the Plate? How Executive Job Demands Harm Firm Innovation and Reduce Share of Exploratory Innovations. Academy of Management Journal, 65(2), 606–633.