経営学の知見:会社の歴史を知り、未来をつくる
先週の金曜日に、同僚と日本の自動車メーカーの博物館に訪れました。
創業者のエピソードとか、会社の大事な分岐点のストーリーとかに触れると、心揺さぶられるんですよね。
普段は車に乗らない僕でも、歴代のピカピカの車をみるのは壮観だし、とくに、昔の車のデザインがなぜか心惹かれるものがありまして。
会社の歴史が、インスピレーションとモチベーションを生み、そして未来の創造につながる。そんなことが言えそうです。
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UCLのラバジらの研究グループは、イタリアのメーカー4社(アルファロメオ、デゥカッティ、ピアジオ、アレッシ)がどのように会社の博物館を活用をしているかを63人にインタビューをした。
#面白い研究ですよね
インタビューから会社が歴史を生かす3つの方法が浮かび上がった。
#会社のアイデンティティに責任をもつ
「これがアルファロメオだ!」という会社のレガシーと伝統を引き継ぐことができる。
#会社のアイデンティティを広める
会社の理念を社員、取引先、顧客に伝えることができる。
#会社の遺産を掘り起こす
過去のロゴ、写真、デザインなどから今も使えるものを発見することができる。
会社の歴史を生かすメリットとして、次の5点があった。
#変化への適応 。変化は不安なものだけど、過去を知ると我々はこうなんだ!と分かり安心する。
#イノベーションを起こす 。多くの人が企業博物館で得たアイディアが、新しいアイディアの源泉になっていた。
#新しい社員を迎える 。新しい社員のオリエンテーションに博物館を見せると、効果的
#コミュニティをつくる 。社員をつなぐもののひとつは、企業の歴史。歴史を知ることでコミュニティができやすい。
#説得力のあるストーリーとなる 。会社の歴史の逸話を使ってマーケティングしたり、企業理念を根付かせることができる。
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結局、会社の歴史は、唯一のものですから、他社がまねできないアセットなんですよね。
大企業は変化しにくい。
だから、過去を忘れ、否定せよという姿勢もあるかもしれませんが、むしろ、変化するために、過去をみる、触れる、語る。
そこで得られたインスピレーションとモチベーションに未来を紡いでもらう道もあるでしょう。
Ravasi, D., Rindova, V., & Stigliani, I. (2019). The stuff of legend: History, memory, and the temporality of organizational identity construction. Academy of Management Journal, 62(5), 1523-1555.