学生・研修医の学会発表
学生の時、学会シーズンになると行われる「予演会」が嫌いでした。定例カンファの後に追加で行われるから帰るのが遅くなるし、内容は専門的すぎて面白いのか分からないので。今では凄く大事だなと実感しています。
今回の集中治療学会では3名の学生・研修医が発表しましたが、一名は優秀演題セッションに採択されて良かったです。一名は事前のスライド供覧を忘れてたので注意しました。
僕は他の施設の若手のプレゼンを見るのも好きで、学生・研修医の良いプレゼンをみかけると指導医(大抵セカンドとラスト)が誰だろうと思って見ます。時に本人の能力が高い・プレゼン慣れしているだけというケースもありますが笑
多くの場合、学生・研修医が良い発表をする施設には良い指導者がいるので、そういう施設に人は集まっていますよね。少なくとも僕は、教育面ではいい施設なんだろうなという印象を抱きます。逆にひどい学生・研修医の発表を見た時には『ちゃんと指導してもらえる環境にないのかな』『共著の先生は見てないのかな』と思います。そういう時に知っている人の名前が共著にあると、うーん…。
とはいえ、時にはあまりにも適当な(雑な)スライドを出してくる人もいて(しかもギリギリに)、そういう場合はこちらも『もういいか…』ってなって諦めの境地になるのも事実。でも僕もその時の忙しさによっては全部十分に見れていない事もあるので、あまり人の事は言えない。
学会発表の資料は世の中に沢山ありますが、フリーで読める下記の後藤徹先生が書かれた医学書院さんの記事はおすすめです。3回くらい読んで欲しい。
プレゼンの要素は大きく事前準備と当日発表に分かれますが、個人的に当日発表の部分に関しては仕方ない側面があると思います。緊張しやすい、元々の性格などありますから。僕も緊張しがちなので、苦手な人の気持ちはよく分かります。発表がダメなら、せめてスライドで伝える努力はしましょう。
1. 事前準備のよくある問題点
事前準備はスライド作りとプレゼンの練習ですが、スライドにおけるよく見る問題点を少し列挙すると下記でしょうか。
内容を理解していない:学生・研修医であれば半分強制だったりなど仕方ない側面もあるのかもしれませんが、言われたことをなんとなくやってる発表は分かります。図表の理解をしていないのも結構目立ちます。
論文用の表の切り貼り:これは若手に限らず多いのですが、そもそも他人に伝える気が無いと判断されてもおかしくないと思います。論文用に書いたやたらと細かいTable 1を貼ってあるとか最悪です。赤四角などで強調してもらえるならまだしも、そうでないなら見ようとしている間に終わります。
図の説明不足:図が何の図なのか、X軸とY軸が何かすら分からない表をぺたっと貼り付けているケース。これも結構あって、『図は見ただけでわかるようにする』という原則を意識する必要があります。
説明しない図表や文章:聴衆はまず視覚で「何の話をするのか?」をスライドで認識しますが、全く説明のない文章や図、関連のないことが書かれていると流れるように聞けません。「あの図は何だったの???」となるだけです。
スライドのルール:自由なスタイルでプレゼンしたり、『今時パワポなんで時代遅れ』などと好きなように作る人もいますが、研究発表は発表者個人をアピールする場ではないので、基本的なルールに則って行う方が聴衆にストレスを与えなくてすみます。論文と同じ。
スライドは一枚一分として、過不足なし:詰め込みすぎて途中飛ばしまくってしまうことや、早口&スライドの移り変わりが早すぎて聴衆が内容を理解できないまま進んでしまうことは絶対に避けましょう。話すことを意識した構成が必要です。
デザイン:下手にデザインをするくらいなら、白地に黒文字(メイリオ・ヒラギノ等)、ハイライトだけ赤字のシンプルな方がいいです。カラフルすぎたり、読みにくいスライドは避けましょう。シンプルでも、フォントと配置を工夫するだけで大抵は十分です。フォントサイズは20以上を意識すると目に優しいです。
参考文献・引用:正しく引用をつけられていない発表は大抵ダメです。最初に出てくる背景のスライドでここを見ればどれだけ丁寧にそのプレゼンが作られているか分かります。適当につけてる発表の内容は大抵適当か、過去の研究はどうでもいいと思っている証左でしょう。
2. プレゼンの練習
プレゼンは場数をこなすしかありません。人前で話すことが苦手な人は練習するしかないです。予演会が良い理由は、当日直前にちょっとだけ練習して本番で失敗するという人がそれなりにいるからです(昔の自分)。今回は、初回の予演会で不合格だった人は翌週にもう一回予演会やり直しを行いました。特に注意をする点としては下記。
時間を守る:時間オーバーは禁忌。90%程度を目安にするのがいいと思います。5分なら4分30秒、10分なら9分程度。と当日は大抵スライド準備やマイクトラブルなどで最初の時間が少しとられますし、内容がすっぽ抜けたりすることもあるので、多少マージンを用意します。短すぎるのは内容が無いよう。。
噛み噛みにならない:緊張するので多少は仕方ないですが、練習でカバーできます。
早口・スライドとの整合性:時に非常に早口だったり、読み方が間違っていたり、スライドと合ってなかったり、説明するポイントがずれていたりということがあるため、内容の確認と修正を行います。
想定質問:若手は基本的に上に指示されていますから、この時点で対応を練っておくと安心できます。また質問の形式でコメントをもらうことで自分の理解が足りていないことや、案外うまく説明できないことが分かったりします。
3. 本番
あれこれ考えても仕方ないので、練習通りにするだけです。上記記事にもありますが、
背筋を伸ばして前を見る
一言目を明確に、自信を持ってゆっくり目に話す
だけです。一言目をゆっくり大きく話せば後はそれに続きます。
僕は自分がプレゼンをする時にはゆっくり目に話をすることを意識しますし、意図的に沈黙の時間を作って聴衆の反応を見ることもあります。初めてのうちは、ついつい何か喋らないと、と思うかもしれませんが、ずっと話してないといけないということはありません。むしろそれくらいの間が取れる方が良い発表に繋がります。
説教くさい記事が続いたので次は北海道旅行(学会)の話でも書きます。